日本生まれの中華料理！　熊本名物「太平燕（タイピーエン）」

at home VOXが日本各地の「麺料理」を求めて全国を巡る「ご当地ヌードル探訪」。今回は、熊本城を有する熊本県熊本市！　熊本県にしか存在しない中華料理「太平燕（タイピーエン）」を紹介します。

紅蘭亭下通店。紅蘭亭は熊本市内に3店舗展開しています。

そもそも「太平燕」は、中国・福建省のアヒルの玉子が入ったスープワンタンのような料理のことで、熊本の「太平燕」とは似ても似つかない料理。熊本の「太平燕」が生まれた経緯を、紅蘭亭の井上さんにお聞きしました。

井上さん「現在の太平燕が生まれたのはずいぶん昔（1910年頃）のことなのではっきりとしたことはわかりませんが、当初は九州各地にあったようです。このころ、福建省から九州に渡ってきた華僑の方々が中華料理店などを営んで、そのまかない料理として生まれたと言われています」

麺料理のルーツとしては、長崎ちゃんぽんや皿うどんなど、九州土着の中華料理と同じなのだとか。ところが、福建省料理「太平燕」と異なる春雨麺の料理が、なぜ「太平燕」となったのかはわからないのだそう。

井上さん「太平、つまり平和に通じるところと、春雨が高級食材のツバメの巣に似ていることを合わせた料理名で、お祝い事で集まったときに食べる『ハレの料理』だったようです」

時代の流れとともに九州各地にあった太平燕は廃れてしまい、熊本だけに残ったのだそうです。

井上さん「紅蘭亭が創業したのは1934年なのですが、そのころ熊本県内に中華料理店はほとんどなく、その数少ない中華料理店がどのお店も太平燕を出していたので、『太平燕は中華料理に欠かせない』という刷り込みが熊本県民にあるのではないでしょうか。それで、今も残っているのだと思います」

太平燕は古くから熊本県民に親しまれ、今では“郷土料理”として名を馳せた料理というわけですね。

創業当時から変わらない味を守る

熊本県内、「太平燕」が食べられるお店は数あれど、その中でも紅蘭亭が人気の理由は、創業以来「伝統の味」を守り続けているから!!

太平燕760円。ボリューミーかつ、庶民的なお値段！

スープは鶏ガラととんこつのダブルだしで、クセのないさっぱりとした味わい。具材はキャベツとエビ、イカなどの海鮮類を塩だけで味付けした野菜炒めと、フーヒータン！

フーヒータンは虎皮蛋と書き、高温で揚げて衣が虎柄になっている固茹で玉子のこと。

とんこつスープが多いと脂っぽくなったり、とんこつ特有の臭みが出てきてしまいますが、鶏ガラスープとのバランスが絶妙で、脂っぽさや臭みはまったくありません。
そこへ具材の野菜と魚介の旨みがスープの中に溶けて出して、深いコクが感じられます。
お腹に余裕があったらこのスープにご飯を入れて食べたいぐらい！

さらに、紅蘭亭の春雨麺は、緑豆はるさめ100％麺！　インスタント太平燕はでん粉が添加されているものが多く、水分を吸うと伸びてしまうのに対し、緑豆はるさめ100％麺はほとんど水分を吸わないので、最後までしっかりとした歯ごたえとプチップチッとした春雨独特の歯切れ感が残るのがGood！　小麦粉を使っていないので、低カロリーでヘルシーなところもうれしいですね！