暮らしのコト

麺は口ほどにものを言う~ご当地ヌードル探訪~

おでんとうどんのコラボ! シンプルながら力強い島根県松江市の「松江おどん」

この「記事」が気に入ったらみんなにシェアしよう!

みんなにシェアしよう!

日本各地に根付いた「麺料理」を求めて、全国を巡る「ご当地ヌードル探訪」。今回の舞台は島根県松江市です。松江藩の城下町として発展し、現在でも山陰地方の中心都市として栄えるこの街。実は人口あたりのおでん屋の数が全国トップクラスという、「おでんの街」としての顔も持っています。冬季に限らず、一年中おでんを提供しているお店が多いということからも、いかに市民におでんが愛されているのかが分かります。

そんな松江で、「おどん」なる麺料理が静かなブームを呼んでいるという噂を聞きつけ、一路現地へ。分かっているのは、「おでん」と「うどん」がミックスして「おどん」になったということだけ。冗談のような誕生秘話ですが、いったいどんな狙いが…?

松江駅。出雲大社のある出雲市にもアクセス良好です。

松江駅。出雲大社のある出雲市にもアクセス良好です。

駅から10分ほど歩けば宍道湖が。海水と淡水が入り交じるこの湖は、しじみの一大名産地。

駅から10分ほど歩けば宍道湖が。海水と淡水が入り交じるこの湖は、しじみの一大名産地。

■「おどん」は力強い大海の味!

お邪魔したのは、島根と鳥取を中心に展開する居酒屋、丸善水産の松江店。誕生最初期から「おどん」を提供している、元祖ともいえるお店です。

駅からほど近い場所なので、観光ついでに立ち寄るのにとても便利。

駅からほど近い場所なので、観光ついでに立ち寄るのにとても便利。

取材に応じてくれたのは、「松江YEG」こと松江商工会議所青年部の藤井浩太郎さん。立ち上げから現在まで、「おどん」の普及に関わり続けています。

「待ってましたよ!」と藤井さん。一度会ったら忘れられない強烈に明るいキャラクターです。

「待ってましたよ!」と藤井さん。一度会ったら忘れられない強烈に明るいキャラクターです。

さっそく聞いてみました。「おどん」はどのようにして生まれたんですか?

藤井さん「『おどん』が生まれたのは5年前。おでんが有名なこの街で、『全国おでんサミット』っていうイベントが開催されたんです。せっかくだから松江らしいものを出そうと思って、おでんにそばを入れてみたんです。『出雲そば』っていうて、島根はそばが有名でしょ? 結果は…マズかった(笑)。それで、代わりにうどんを入れてみたら、これがおでんのダシと絶妙に合う!

まさに、偶然から生まれた一品。とはいえ、最近ではコンビニのおでんコーナーにもうどんはあるし、何となく想像に難くない味ではありますが…。

藤井さん『おどん』のダシはあご(飛魚)なんですが、これが味の決め手なんですよ。ほんのり香ばしいあごの風味が、おでんの味も、うどんの味もワンランク引き立ててくれているんです。それに、あんまり知られていませんけど、島根はそばと並ぶくらい実はうどんも一流なんです。まあまあ、とりあえず食べてみてくださいよ」

失礼しました…。確かに、百聞は一見にしかずですね。いただきます!

見た目はその名の通り、シンプルなうどんを入れたおでん。これが最もオーソドックスなスタイル。

見た目はその名の通り、シンプルなうどんを入れたおでん。これが最もオーソドックスなスタイル。

思いのほか澄んだダシ…ですが、あごダシはひと口すすった瞬間から、ピーンと主張する鋭い味! しかも、鋭いことは鋭いですが、飲み干す頃にはスッキリとのどを抜けるキレのよさがあります。具には深く染みこみ、すくい上げたうどんにもきっちり絡んでいて、1杯丸ごとあごダシを味わっているかのよう。美味しいです。これぞ、大海の味。

藤井さん「そうでしょ、ウマいでしょ? でも、今食べてもらったのは、あくまで『おどん』の基本の形。『おどん』にはあごダシを使うほかに『島根の食材を必ず一品以上使う』というルールがあるんです。丸善水産さんの場合は、日本海で採れた海苔を乗っけて出しています

アクセントに少し乗せるだけかと思ったら、どっさり。島根産の春菊も入れます。

アクセントに少し乗せるだけかと思ったら、どっさり。島根産の春菊も入れます。

おお! 磯の香りが加わって、風味が一変! あごダシと海苔のダブルパンチで、荒れ狂う海になったかのようなインパクトです。個人的には、お酒の〆に食べたい味。

柚子胡椒も添えられます。加えるとツーンと爽やかな風味が広がり、また味が変わる!

柚子胡椒も添えられます。加えるとツーンと爽やかな風味が広がり、また味が変わる!

藤井さん「ほかにも、お店ごとにアプローチはさまざまですよ。しじみとあごの合わせダシを使ったり、旬の野菜や山菜を贅沢に使ったり。ルールに則ってもらいつつ、お店ごとにオリジナリティを出してもらってます」

■「おどん」を食べに、松江に「来てごしない!」

お店ごとに独自のアレンジがあって、楽しみが尽きない松江おどん。丸善水産以外にも、食べられるお店はいっぱいあるのでしょうか?

藤井さん「丸善水産さんを合わせて、今のところ5店舗というところです。『おどん』はまだまだ成長過程ですからね。協力してくれるお店を増やして、次の年度には、10店舗以上にしたいと思ってます!」

〈『おどん』が食べられるお店(2015年3月現在)〉
奥出雲大橋 シャミネ出雲店(松江市朝日町)
うまえもん(松江市東出雲町)
松江新橋倶楽部(松江市伊勢宮町) ※冬季限定
丸善水産 松江店(松江市御手船場町)
粋都(松江市東本町)

さらに、『おどん』のさらなる普及のため、イベントにも積極的に出店しているといいます。

藤井さん「だいたい、月に2〜3回はどこかしらに出店してますね。最近だと、レディースマラソンやお祭り、学園祭などに出店しました。学園祭のときは学生とコラボレーションして、屋台のテントを作ってもらったんですよ。出店するときは、毎回違うお店に協力してもらって、そのお店の味を楽しんでもらうようにしています。そうすれば、『おどん』のいろんな魅力を知ってもらえるでしょ?」

これまで出店した中には、「静岡おでん」で知られる静岡との「おでん対決」など、挑戦的なものも。地元に根付きつつある今、各地とのコラボレーションにも積極的です。島根弁の「来てごしない」(「お越しください」の意味)をテーマに、藤井さんら「松江YEG」は、日々「おどん」のPRを続けています。

「松江YEG」のコアメンバー。左から渡部さん、金坂さん、藤井さん。

「松江YEG」のコアメンバー。左から渡部さん、金坂さん、藤井さん。

「おどん」の大海のごとき広く深い味わい。日本全土を飲み込む日も、そう遠くないかもしれません。

「おどん」取扱店に掲げられるのぼり。見つけたらゴー!

「おどん」取扱店に掲げられるのぼり。見つけたらゴー!


  • 取材協力
    ■松江商工会議所青年部
    http://www.m-yeg.com/
    店舗情報
    ■丸善水産 松江店
    住所:島根県松江市御手船場町567 ホテルα-1 1F
    電話:050-5796-0381
    朝食営業:6:30~10:00(月、土日祝は7:00オープン)
    昼食営業:11:00~14:00(土、日、祝は休)
    夜の営業:17:00~0:00(LO23:30)
    日夜 17:00~0:00(LO22:30)

※記事中の情報・価格は取材当時のものです。

この「記事」が気に入ったら
みんなにシェアしよう!

MATOME