暮らしのコト

麺は口ほどにものを言う~ご当地ヌードル探訪~

自分流の味付けで楽しむ! 長野県伊那市の「ローメン」

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日本各地に根付いた「麺料理」を求めて、全国を巡る「ご当地ヌードル探訪」。今回は、東西を南アルプスと中央アルプスに抱かれた長野県伊那市にやってきました!

JR飯田線伊那市駅 改札は自動改札ではない、懐かしい有人の改札。

JR飯田線伊那市駅 改札は自動改札ではない、懐かしい有人の改札。

伊那市発祥の伊那節をモチーフにした鮮やかなマンホール。

伊那市発祥の伊那節をモチーフにした鮮やかなマンホール。

飯野線伊那市駅をでると、日差しが暖かい日とはいえ、さすが長野県。東京とは一味違った冷たい風が身体を打ちます。こんな日はやっぱり温かい麺! ということで、早速お店に向かいましょう。

駅前から左右に延びる商店街を抜け、歩くこと約5分、目的のお店に到着しました。ここ伊那には60年前に誕生し、いまやご当地グルメとして全国的に有名になった麺料理があります。それが「ローメン」です。

ラーメン?と聞き返されそうですが、食べればその違いに納得のご当地麺だとか。そして今回やってきたのが、そのローメン発祥の店と言われる「萬里 本店」さんなのです。

インパクトのある外観の萬里本店さん。

インパクトのある外観の萬里本店さん。

店内には飲むのに少し勇気がいるお酒も…!

店内には飲むのに少し勇気がいるお酒も…!

馬場さん「ローメンは先代が昭和30年に開発して今年で誕生60年。今や伊那を代表するご当地グルメになりました」

そう、お話ししてくれたのは二代目の馬場さん。続けて、ローメン誕生秘話について教えていただきました。

馬場さん「昭和30年というと、戦後で物も十分になく、もちろん冷蔵庫なんて便利なものはありません。そのため仕込んだ麺がすぐダメになってしまい、どうにかしたいと先代は考えていたそうです。そこで試行錯誤の末、麺を一回蒸す方法を考えついたんです。蒸すことによって日持ちするようになっただけではなく、独特の風味と食感が生まれ、これもローメンの特徴となりました

麺だけではなく具材にもこだわりがあるのでしょうか?

馬場さん「はい。うちの具材は60年前から変わってません。変えたら意味ないですからね。羊肉、キャベツ、キクラゲだけです

シンプルな具材ですが、「羊肉」は気になりますね!いったい、なぜ羊肉を選んだのでしょうか?

馬場さん伊那は当時、羊毛の生産が盛んで、羊がたくさん飼われていたんです。しかし羊毛用なのでもともとは羊を食べる習慣がなかった。そのため肉の価値は低く、安く仕入れることができたんです。そして、長野は高原キャベツの生産地ですから、どこの家庭にもあったし、すぐ手に入った。このような感じで身近にあったものうまく組み合わせて生み出されたのが『ローメン』なんです」

先代の努力とアイディアがローメンを産み出したんですね! というわけで、早速作っていただきました。

これがローメン専用の蒸し麺。

これがローメン専用の蒸し麺。

一杯ずつ中華鍋で作っていきます。

一杯ずつ中華鍋で作っていきます。

これが伊那名物「ローメン」(並700円)!

これが伊那名物「ローメン」(並700円)!

まずはスープを一口。キャベツの甘さが全体に行き渡り、とっても優しい味です。羊肉ということで、獣臭がするかもと少し心配していたのですが、まったく臭くはなく、逆に他の肉にはない風味が旨味となっています。

スープ、麺、具材の三つからでた風味が丼の中でしっかり一つに!

スープ、麺、具材の三つからでた風味が丼の中でしっかり一つに!

馬場さん「羊臭くはないのですが、それでも気になる方は豚肉でお作りすることも可能です。でも豚肉だとこの味は出ないので、できればこの味そのままを味わってほしいですね」

そして麺をいただきましょう。中太の麺はモチっとしていて、コシというよりハリがあるような独特な食感です。ラーメンの麺だと、すぐ伸びてきてしまうけど、ローメンは全然大丈夫、なんなら次の日食べても美味しいと馬場さんが教えてくれました。

独特な麺の食感はクセになる人も多いとか。

独特な麺の食感はクセになる人も多いとか。

そのままでも大変美味しいローメンですが、この独特の味わいはこれで終わりではありません。むしろここからが本領発揮です。

馬場さん「少し食べたら、卓上の調味料を入れてみてください。ウスターソース、お酢、ごま油は丼を一周ずつ、そしてお好みで、おろしニンニク、七味、ラー油も入れてみてください。そして全体をよく混ぜ、食べてください」

え!? ソースですか!

お酢とごま油はなんとなく分かりますが、麺にソースを入れるのは珍しい食べ方(船橋ソースラーメンくらい?)。でもご主人がいうのなら間違いはないと信じ、思い切って入れてみます。そして全体を混ぜ、恐るおそる食べてみると……。

恐るおそる入れてみる、でもこれが大正解!

恐るおそる入れてみる、でもこれが大正解!

いままで甘さが前面に出ていた味がソースの味で引き締まり、お酢の酸味と、ごま油の香りが合わさって全然違う味に変化しました! 続けてここにニンニクも入れてみると、今度はパンチのある味に! これは、面白い!! ローメンって食べる人によって個性が出るんですね。

馬場さん「10人いれば10人違った味になりますので、ローメンってどういう味って聞かれると困るんですよね(笑)。ベースの味は確かにあるけど、そこから自分の好みの味付けにするのがローメンだから。だから、まず食べてもらうのが一番早いです」

確かにこれは正確に味を伝えるのは難しいかもしれません。食べるたびに味を変えてもいいし、自分流の味付けを突き詰めてもいい。これは奥が深い麺料理です。

テーブルには、初めてのお客さんでも美味しく食べられるように食べ方を書いた紙が。

テーブルには、初めてのお客さんでも美味しく食べられるように食べ方を書いた紙が。

いまや、市内にはローメンを出すお店が90店舗ほどあるそうですが、こんなに広まったきっかけは何なのでしょうか?

馬場さん「平成6年に『村おこし補助金事業』というものがあり、伊那市の名物に認定されたんです。その村おこし事業が『ローメンズクラブ』と名前が変わり、そこから多くの飲食店が参加し、様々な活動を行っています。イベントの屋台でも大人気ですし、最近では小中学校の給食でも出されるようになりました。今後も、より多くの方に知ってもらい、味わってもらうため活動していきたいと思います」

ローメンの様々なことに関して優しく教えてくれたご主人の馬場さん。

ローメンの様々なことに関して優しく教えてくれたご主人の馬場さん。

お店の脇に平成16年に建てられたローメン発祥の地の石碑。ローメン誕生の物語が彫られています。

お店の脇に平成16年に建てられたローメン発祥の地の石碑。ローメン誕生の物語が彫られています。

子どもから大人、はたまたご老人まで、地元の方に愛され、親しまれてきたローメンは、今や伊那のソウルフードのようです。これからも、十人、いや百人百色のローメンが生まれることでしょう。長野に訪れた際は、ぜひ“あなた”のローメンを味わってみてください!

  • 店舗情報
    ●萬里 本店
    住所:長野県伊那市坂下3308
    電話:0265-72-3347
    営業時間:昼11:00〜14:00 夜17:00〜22:00(月曜休)

※記事中の情報・価格は取材当時のものです。

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