“2分に1人”の意味 国連総会に向け高校生の動画

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(OVO オーヴォより)

人にとって、想像する、というのは、たぶん一番難しいことかもしれない。経験したことがないことを文字で読んだり、話を聞いたりしても、そこで生まれる痛みや喜びは“想像上”のものだからだ。頭で理解はできても、皮膚感覚を伴わない。それが遠くの出来事ならなおさらだ。中でも難しいのが、他人の痛みや哀しみを想像することだろうか。例えば、妊娠、出産を男性が想像してみること。その苦しみを、未経験の女性が想像してみること。望まない妊娠に耐え、出産で命を落とす女性の思いを、健康なすべての人が想像してみること。

実際に、今、世界では、2分間に1人の女性が妊娠・出産のために亡くなっている。1日に800人だ。伝統的な慣習や国の施策によって、子供を産む、産まないというごく基本的な決定権すら持ち得ない女性たちがいる。必要な知識や医療へのアクセスがなく、危険な中絶や、出産時の大量出血などによる死亡、産後の合併症などで健康な生活を奪われ、貧困から解放されない女性たちがいる。だが、こういう文章を読んでも、皮膚に棘は刺さらない。

ここに、高校生たちが自ら演技して、その皮膚感覚をつかもうとした動画がある。2分に1人が亡くなっていくということがどんなことなのか、静かな表現ながら、心にのしかかる、そんな説得力をもって“再現”した。

午後2時に始まった「保健体育」の授業。主題は妊娠と出産だ。先生が身近な例を挙げながら説明を始め、時計は進む。男女合計25人のクラスだが、“事”は静かに起きていく。2分に1人ずつ、女子生徒が机に一輪の花を置いて教室を出ていくのだ。授業中に席を立って行ってしまう女子たちの背中を、不思議そうに目で追う男子生徒たち。クラスの半数、13人いた女子生徒全員がいなくなるのに、たったの26分しかかからない。

今年9月、ニューヨークで開かれる国連総会は、2000年のミレニアム開発目標に続く、今後15年の世界目標を決める重要な会議になる。性と生殖に関する健康について活動する世界最大級の国際NGO「国際家族計画連盟」(IPPF)は、この会議に向けて「I decide-私の未来は私が決める」というキャンペーンを実施、すでに全世界で32万人以上の署名を集めている。このビデオは、日本でも多くの署名を集めたいとの思いを形にしたものだ。

動画は2分49秒。この動画を見ているほんの短い間に、どこかでまた1人の女性が、無念の死をとげている。

「I decide−私の未来は私が決める」WEBムービーURL:http://youtu.be/fzk2KKMpU14

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MATOME