暮らしのコト

麺は口ほどにものを言う~ご当地ヌードル探訪~

“ちいたんたん”まで食べて初めて完食! 盛岡三大麺「じゃじゃ麺」

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日本各地に根付いた「麺料理」を求めて、全国を巡る「ご当地ヌードル探訪」。今回は岩手県盛岡市へやってきました。県内で最も人口の多い盛岡は、南部氏が築いた盛岡城を中心に発展した街。城跡は公園として整備されています。

城跡がある岩手公園の碑。近年になって盛岡城跡公園という愛称がつけられています。

城跡がある岩手公園の碑。近年になって盛岡城跡公園という愛称がつけられています。

その公園内に鎮座する南部藩の総鎮守・桜山神社の正面に広がる、堀に囲まれたレトロな桜山商店街が今回の目的地。ここに「わんこそば」や「盛岡冷麺」と並ぶ盛岡三大麺のひとつとして知られる「じゃじゃ麺」発祥の店があるのです。

桜山神社と桜山商店街。時代が昭和で止まってしまったかのようです。

桜山神社と桜山商店街。時代が昭和で止まってしまったかのようです。

似た料理に、黄色い中華そばに甘いみそをのせた「ジャージャー麺」がありますが、あくまで別物。その一皿は盛岡独特の食文化が育んだ、ソウルフードと呼ぶべき存在です。発祥の店「白龍」で、確かめてきました!

■調味料で“自分の味”に仕上げる!

白龍は分店と本店が一軒挟んで隣り合わせに並んでいます。分店は朝から昼まで、本店は昼から夜までと時間をずらして営業し、どちらの店でも同じ味のじゃじゃ麺を楽しむことができます。

白龍 分店。本店と同じ白いのれんがかかっています。

白龍 分店。本店と同じ白いのれんがかかっています。

分店の店内にはカウンター以外に3つのテーブル席もあります。

分店の店内にはカウンター以外に3つのテーブル席もあります。

案内してくれたのは、店長の佐々木直美さん。聞くところによると、じゃじゃ麺をおいしくいただくには、食べ方の手順があるのだとか。まずは、注文してみましょう!

「じゃじゃ麺 中盛」。「小盛」と「大盛」も選べます。

「じゃじゃ麺 中盛」。「小盛」と「大盛」も選べます。

少し深さのある平皿に盛られた熱々の白い麺。その上にきゅうりねぎ、そして自家製の肉みそがたっぷりとのっています。黄と赤の薬味は、おろししょうが紅しょうが。スープやタレはかかっていませんし、一見さんだと食べ方に迷ってしまいそう。さて、どう食べるのが正解なのでしょう?

佐々木さん麺とみそをよく混ぜるんです。まずはそれで召し上がってください」

麺量は真ん中のサイズの中盛で400グラムと大ボリューム。下から上に返すように思い切りよく混ぜると、肉みそが麺の熱でやわらかくなり、ちょうどいい具合に全体に絡んでくれました。

麺をかき混ぜた状態。一本一本が適度な長さで食べやすいです。

麺をかき混ぜた状態。一本一本が適度な長さで食べやすいです。

麺はうどんに似ていますが、平打ちで独特の食感があります。肉みその香ばしさを感じながら一口食べると、甘みコクがじわりと舌の上に広がります!

佐々木さん「肉みそには仙台みそを使っています。作り方は企業秘密ですが、創業時からの味をずっと守り続けています。季節によって異なる湿度や具材の水分量を見極めて、火加減を変えながら作るのが大変ですね」

しかし、じゃじゃ麺はここからが本番。使用するのは各テーブルやカウンターに備え付けてある調味料です。

佐々木さんラー油にんにくしょうがを加えてかき混ぜてください。量はお好みで結構ですよ」

テーブルに備え付けの調味料。丼ぶりいっぱいの生卵も後で活躍します!

テーブルに備え付けの調味料。丼ぶりいっぱいの生卵も後で活躍します!

調味料を入れたことで味は劇的に変化。ピリッとしたラー油が、肉みそとマッチして甘辛に。にんにくとしょうがを入れたことでスタミナ感が出て、酢が全体をさっぱりと引き締めてくれます。周りでじゃじゃ麺を食べる常連客を見やると、全員が思い思いの調味料を入れていました。

佐々木さん「常連さんはみんな自分の味を持っているんですよ。二回か、三回くらい食べると、ちょうどいい調味料の分量がわかってくるんですね」

調味料で味に深みが出たじゃじゃ麺。このまま一気に平らげてしまいそうになりますが、少しだけ麺を残しておくことをおすすめします。実は、じゃじゃ麺にはまだ続きがあるのです。各席に備え付けの生卵を平皿に割り入れて溶きほぐしたら、カウンターに平皿を出して「ちいたんたん」を注文してみましょう。

ちいたんたんは一杯50円という安さでいただけます。

ちいたんたんは一杯50円という安さでいただけます。

このちいたんたんこそ、じゃじゃ麺のシメとなる卵スープ麺のゆで汁溶き卵にかけ、薬味のねぎ肉みそを入れたもので、残しておいた麺は具の役割をしてくれます。肉みその甘みと卵のとろみが一体となった、温かくてやさしい味わいです。

佐々木さん「じゃじゃ麺は、ちいたんたんも食べて初めて完食したことになると思います。食べたことのない方は小盛(麺量300グラム)で様子を見ながら、ぜひちいたんたんまで味わってみてください」

ちいたんたんも塩やこしょう、ラー油、一味とうがらしなどの調味料を好みで加えてもおいしいそうですよ。自分好みの味を探してみましょう!

■中華料理が盛岡で独自の進化

じゃじゃ麺の考案者は、白龍の創業者である初代・高階貴勝さん。そのルーツは中国の家庭料理「炸醤麺」にあるそうです。

佐々木さん「初代は戦争中に満州に移住していました。そこで食べた炸醤麺の味が忘れられなかったのか、戦争から引き上げた後に屋台として創業した白龍で盛岡の人の口に合うようにアレンジして作ってみたらしいんです。それが1953年ごろの出来事ですね」

白龍 本店。歴史を感じさせる店構えです。

白龍 本店。歴史を感じさせる店構えです。

炸醤麺はジャージャー麺の元にもなった料理。ルーツは同じですが、独特の麺の作り方などからじゃじゃ麺はオリジナルの炸醤麺により近い料理といわれています。一方で、シメのちいたんたんは、中国にはない料理だそう。

佐々木さん「ちいたんたんは初代が体調の悪いときなどに、自分だけで飲んでいたものみたいなんです。温かいので、おなかが落ち着いたんでしょうね。それを見た常連さんに飲ませてくれとお願いされて、メニューに入れたらしいです。今ではじゃじゃ麺を食べるほとんどの方が飲んでいきます

こうして誕生したじゃじゃ麺は半世紀以上も地元で愛され、いつしか盛岡三大麺と呼ばれるようになったのです。

佐々木さん「盛岡三大麺のなかで、地元でよく食べられるのは盛岡冷麺かじゃじゃ麺だと思います。特にじゃじゃ麺は地元に密着している気がしますね。近くの県庁や消防署の職員さん、学校帰りの学生さんをはじめ、さまざまな方が食べにきてくれます」

カウンターの上には特に常連客が使用するしょうがのしぼり汁、からしみそ、一升漬、追加の肉みそも。

カウンターの上には特に常連客が使用するしょうがのしぼり汁、からしみそ、一升漬、追加の肉みそも。

自分の味を持っているという常連客は、今日もさまざまな調味料で好みの一杯を作り上げていきます。では、初めての人はどうすれば?

佐々木さん「似たような料理がないので、初めてのお客さんにはできるだけ食べ方を教えて差し上げています。メニューにも書いてあるので心配はいりません。最初は未体験の味に驚くかもしれませんが、食べるうちに魅力がわかってくると思いますよ」

盛岡市内には、専門店から大衆食堂までじゃじゃ麺を提供する店が何十店舗もあります。各店舗が特にこだわるのは、味の要である肉みそ。複数のみそをブレンドしたり、肉をあらびきにしたり、それぞれの店が自慢の味を提供しています。盛岡を観光する機会があれば、白龍をはじめいろいろな店を食べ歩くのも楽しいですよ!

  • 店舗情報
    ● 白龍 分店
    住所:岩手県盛岡市内丸5-14
    電話:非公開(問い合わせは本店へ)
    営業時間: 9:00〜15:00(LO14:30、日曜休)
    ● 白龍 本店
    住所:岩手県盛岡市内丸5-15
    電話:019-624-2247
    営業時間: 月〜土11:30〜21:00(LO20:40)、日11:30〜19:00(LO18:40)

※記事中の情報・価格は取材当時のものです。

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