暮らしのコト

麺は口ほどにものを言う~ご当地ヌードル探訪~

“三位一体”が織りなす富山の歴史 富山県富山市「富山ブラック」

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日本各地に根付いた「麺料理」を求めて、全国を巡る「ご当地ヌードル探訪」。今回は、北陸新幹線開業で大注目の富山県富山市へ。ラーメン通なら知らない者はいない「富山ブラック」発祥の店を訪ねます。
開業前日の富山駅新幹線駅舎。全国で初めて駅構内に路面電車が乗り入れます。

開業前日の富山駅新幹線駅舎。全国で初めて駅構内に路面電車が乗り入れます。

訪れたのは3月13日。開業を翌日に控えた北陸新幹線や、それに伴い役目を終える富山と越後湯沢を結ぶ在来線特急「はくたか」のラストランを目撃するため、観光客や鉄道ファンがカメラ片手に続々と集結! 静かな富山駅が少しずつ熱気を帯びてきていました。

■これが「富山ブラック」の元祖!

やってきた富山市は人口40万人を超える北陸の中核市。そこで市民の足として長年愛され続けているのが路面電車です。目指す「西町大喜 西町本店」は富山駅から少し距離があるので、路面電車に乗って向かいます。

富山軌道線本線「西町」停留所に到着する路面電車。

富山軌道線本線「西町」停留所に到着する路面電車。

10分ほどで最寄りの「西町」停留所に到着。大通りを渡ればすぐに「西町大喜 西町本店」が並ぶ細い道が見えてきます。

コンクリートの建物に挟まれた瓦屋根の店。そこだけ時代が停止しているかのよう。

コンクリートの建物に挟まれた瓦屋根の店。そこだけ時代が停止しているかのよう。

のれんをくぐると、しょうゆの匂いが店中に充満していました。その香ばしい匂いに期待感が高まります!

細長い店内には、浮世絵の「東海道五十三次」や古い置物が並べられています。

細長い店内には、浮世絵の「東海道五十三次」や古い置物が並べられています。

カウンターに座ってメニューを拝見。早速、スタンダードな「中華そば 小(並)」を注文します。

「中華そば 小(並)」麺量が1.5玉の「大」と2玉の「特大」も。

「中華そば 小(並)」。麺量が1.5玉の「大」と2玉の「特大」も。

真っ黒なスープは、ほかのラーメンにない独特の雰囲気! 立ち上る湯気とともに、濃厚なしょうゆ粗挽き黒こしょうのスパイシーな香りが漂ってきます。

そんな一杯を運んできてくれたのは、店長を務める金山樹一郎さん

金山さん「『西町大喜』の中華そばは“三位一体”。まずは“麺”“チャーシュー”“メンマ”スープの中で混ぜてから食べてください」

すべての具をなじませることで、初めて「西町大喜」の味は完成するそう。てんこ盛りになった具材の山を崩すと、メンマの下から大量のチャーシューが現れました!

金山さん「チャーシューはしっかりした歯ごたえが生まれるように、すべて手切りにこだわっています量は昔から変わらず100gですね

100gというと、一般的なラーメンに入っているチャーシューの2倍〜5倍ほどにもなるでしょうか。驚きの量です!

一口サイズのチャーシューがいっぱい!

一口サイズのチャーシューがいっぱい!

よく混ぜてから口に運ぶと、チャーシューとメンマのうま味がスープに染み出て絶妙な風味に! 具をスープにしっかりと浸さなければ、気づけなかった味わいですね。

金山さんストレートの太麺も、スープとの相性を考えて作られている特注麺です。これ以外の麺で、同じ味わいは出ませんよ」

歯ごたえを感じながら、どんどん食べ進めていきます。太めに刻まれたネギのさわやかな甘味も、濃い口のスープによく合ってうれしい。箸が止まることなく、あっという間に完食しました!

■富山の歴史が詰まった一杯

元祖「富山ブラック」と呼ばれる「西町大喜」の中華そば。その生みの親は、創業者の高橋青幹(せいかん)さん。昭和22年、戦後のことでした。

金山さん「かつて西町は繁華街だったんです。青幹さんは、戦後の街を復興するために働く労働者たちに向けて、濃い味付けでチャーシューがたくさん入ったご飯のおかずとしての『よく噛んで』食べる中華そばを考え出しました」

富山市民ならば知らない者はいないという一杯。実際に富山で育った金山さんも、子どものころに親と一緒に食べにきたことがあるそうですが、その味は「変わらない」と語ります。

金山さん「スープの作り方からネギの切り方まで、当時と同じように作り上げています。大切なのは青幹さんが築いた伝統の味を守ること。そして、後世に受け継いでいくことですね」

食文化は時代とともに移ろうものですが、流行に左右されない「西町大喜」の一杯には、富山の歴史が凝縮されていると言えますね!

北陸新幹線の開業で、富山を訪れる機会は増えるはず。全国に名高い富山湾の白えびや寒ブリは夕飯に取っておいて、お昼は元祖「富山ブラック」を食べに、路面電車に揺られてみてはいかが?

  • 店舗情報
    店舗情報
    ●西町大喜 西町本店
    住所:富山市太田口通り1-1-7
    電話:076-423-3001
    営業時間:11:00〜20:00(水曜休、祝日の場合は翌日休)
    http://www.nisicho-taiki.com/

※記事中の情報・価格は取材当時のものです。

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