暮らしのコト

麺は口ほどにものを言う~ご当地ヌードル探訪~

独自のアイデアで“パスタの街”の王に! 群馬県高崎市の「高崎パスタ」

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日本各地に根付いた「麺料理」を求めて、全国を巡る「ご当地ヌードル探訪」。今回は、群馬県高崎市を訪れました。

市街

市役所21階の展望ロビーから望む高崎市街。後方には日本百名山の一つ、赤城山がそびえています。

高崎公園

明治9年に造園された高崎公園は市役所に隣接しており、人々の憩いの場となっています。

達磨寺

高崎の名刹・少林山達磨寺。本堂には高崎名物のだるまがずらり。

群馬県は、知る人ぞ知る全国屈指のパスタ県。小麦の生産量は毎年5位以内に入っており、人口あたりのパスタ店は全国でも1、2位を争うほどの多さなんです。中でも高崎は小麦の生産量で県内3位を誇り、近年は“パスタの街”として知名度が上昇中。高崎を通るバスツアーには、パスタ屋さんを組み込むのが定番になっているほどなんです。

そこで今回は市内の老舗イタリアン「シャンゴ」の問屋町本店に伺いました!

外観

高崎駅から一駅隣の問屋町駅より歩くこと約10分、大通り沿いの瀟洒な洋館が問屋町本店です。

内装

おしゃれな店内は緑と赤のイタリアンカラーで統一されています。

岩井さん

今回案内してくれたのはシェフの岩井敬介さん。社長が太鼓判を押す若手ホープです!

岩井さん「高崎のパスタは総称として高崎パスタと呼ばれています。定義があるわけではありませんが、うちではできるだけ群馬県産や高崎産の食材を使うように心がけていますね。一番人気のメニューは、創業当時からある“シャンゴ風スパゲッティ”です」

ということで、オススメの一品を注文してみました。

シャンゴ風

こちらが一番人気のシャンゴ風スパゲッティ。なんともボリューミー!

出てきたのは、重量感のあるカツとたっぷりのミートソースが乗ったスパゲッティでした。

カツ

ずっしりとしたカツは、フォークを突き立てると軽やかな音を立てます。

パスタ

麺はフォークに巻きつけるのも苦労するほどつるつるです。

麺にミートソースを絡め、カツとともに食べると…ソースの甘さとカツの旨みが、これでもかと口に広がります! 市販されている一般的なものよりも濃度のあるミートソースは、野菜の濃厚な甘みの後にひき肉のワイルドさを感じる、ほかにはない味わい。ソースがよく絡む麺は歯触りがよくもちもちで、小麦本来の素朴な甘みを感じられます。

一方カツは、外はサクサクで中は柔らかく、ジューシーな仕上がり。驚くほど口当たりが軽くて脂っぽさがないので、量はありますが胃にもたれません。カツ自体への味付けは控えめなので、味の濃いミートソースと一緒に口に入れることでバランスよくいただけます。パスタの本場・イタリア産のチーズを混ぜて食べるとコクが増してさらに豊かな味わいに。

岩井さん「イタリア産の乾麺を使うメニューもあるのですが、シャンゴ風スパゲッティに使うのは高崎産の小麦を使ったオリジナルの“ゆで置き麺”。一度麺をゆでておき、注文が入ったらゆで直して使うんです。秘伝のミートソースは野菜の甘みを限界まで引き出し、ふんだんに使った県内産のひき肉をじっくりと煮込んで仕上げています」

味もさることながら、シャンゴの人気の一因としてボリュームも挙げられます。今回は麺200gにあたるMサイズを注文しましたが、他に150g のSサイズ、裏メニューとして250g のLサイズと300g のLLサイズ(!)もあるんだとか。

岩井さん量の多さも創業以来のこだわりです。これは食べるもののない戦争中に初代社長が考えた、“将来料理人になって、人々においしいものをたらふく食べさせたい”という思いを受け継いだもの。初代社長のチャレンジ精神がなかったら、高崎は“パスタの街”になっていなかったかもしれませんね」

実は、シャンゴは高崎パスタの発祥のお店だったんです! シャンゴ風スパゲッティが誕生するまでを、岩井さんが教えてくれました。

■看板メニューの誕生秘話、そして“パスタの王”へ

シャンゴの創業は1968年にさかのぼります。高崎は今でこそパスタの街と言われていますが、当時パスタを出しているお店はなく、シャンゴをきっかけにこの土地にパスタ文化が根付いたんだとか。

岩井さん「うどんやそば、群馬名物の焼きまんじゅうなど、粉もん文化はもともと確立していました。そんな高崎ならばパスタも受け入れられるだろうと初代社長は考えたんです。とはいえ当時はパスタやピザといったイタリアンのほかに、カレーも提供していたんですよ」

シャンゴ風スパゲッティは、そんなカレーがきっかけになって生まれたメニューだそう。

岩井さん「あるとき初代社長はカツカレーを見て、もともとお店のウリにしていたミートソーススパゲッティにカツを乗せるというアイデアを思いつき、結果見事に大当たり。それがシャンゴ風スパゲッティの始まりなんです」

揚げカツ

“カツを使う”というアイデアはそのままに、素材をブラッシュアップ。現在は上州麦豚の肩ロースを使っています。

ソース差し替え

惜しみなく使われるミートソースは、お店一番のこだわりだと岩井さんは言います。

シャンゴ風スパゲッティは、現在も昔からのレシビに忠実に従って作られています。

岩井さん「ソースに入れるブイヨン一つとっても焼き方や炒め方にこだわりがあり、肉や野菜は一週間かけて煮込みます。時が経って便利なものが増え、加熱済みの野菜などを使おうと考えたこともありましたが、やはりどれだけ手間がかかっても初代からのレシピ通りに作った方がおいしいと思い直して今に至ります」

高崎パスタの発展に貢献した初代社長のアイデアは、他のメニューにも生かされています。今では一般的なスープたっぷりのボンゴレも、実はシャンゴが発祥だそう!

ボンゴレ

海をそのまま閉じ込めたような、強烈なアサリのだしが後を引くボンゴレスープスパゲッティ。

岩井さん「昔はスープの入っていないボンゴレでしたが、風味が詰まったアサリのゆで汁をどうにか活用できないかと、ラーメンを参考にして作ったのがボンゴレスープスパゲッティなんです。また、野菜たっぷりのペイザーナというパスタは、焼きそばがヒントになった一皿。“まずアイデアを出せ”が口癖の、初代社長らしいメニューです」

独創的なシャンゴのパスタは、いつしか“群馬でしか食べられない味”として地元民に愛されるようになりました。

さらにお店に注目が集まったきっかけが、2009年から高崎市で開催されている「キングオブパスタ」。その名の通り、出場店舗が自慢のパスタをふるまい、来場者の投票によって一番を決めるイベントです。

シャンゴはこれまでの全大会に参加しており、赤城鶏と群馬の野菜をアピールする「赤城鶏と群馬県野菜のミネストラ仕立て」、グリーンカレーをスープパスタに仕立てた「きのこと帆立のグリーンカレースープスパゲッティ」など、自由な発想で毎回話題に。2012年と2014年にはキングの座に輝いています。ちなみに二度優勝した唯一の店舗なんだとか。

表彰状

入り口に飾られた表彰状の数々。キングオブパスタ2012のトロフィーは、高崎らしくだるまです。

現在は県内に9店舗を構えるまでに大きくなったシャンゴ。しかし、まだまだ高崎パスタの発展には貪欲なようで、今年11月開催のキングオブパスタにも参戦を予定しています。

岩井さん高崎発の、高崎名物を使った新しい高崎パスタを披露するキングオブパスタは、群馬への“想い”をパスタで発信しようとしているわれわれにとってピッタリのイベントです。きっとお客さんも、 “今年もシャンゴは何をしでかすのか”とわくわくしているんじゃないでしょうか(笑)。今回は群馬のある特産品を使った高崎パスタをお届けしますので、楽しみにしていてくださいね」

独自の発想で高崎にカツ、もとい喝を入れ、高崎パスタの礎を築いたシャンゴ。さらなる新しいアイデアに期待です!

  • 店舗情報
    ● シャンゴ 問屋町本店
    住所:群馬県高崎市問屋町1丁目10-24
    電話:027-361-5269
    営業時間:11:00~21:00LO(月休)
    https://shango.co.jp

※記事中の情報・価格は取材当時のものです。

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