暮らしのコト

麺は口ほどにものを言う~ご当地ヌードル探訪~

全石川県民が知っている!? 50年愛されるソウルフード「8番らーめん」

この「記事」が気に入ったらみんなにシェアしよう!

みんなにシェアしよう!

日本各地に根付いた「麺料理」を求めて、全国を巡る「ご当地ヌードル探訪」。今回は石川県加賀市へやってきました。金沢駅から特急列車にゆられ、下車したのは加賀温泉駅。北陸屈指の人気温泉地、加賀温泉郷の入り口です。

加賀温泉駅。市内に点在する温泉へ向かうバスが発着しています。

加賀温泉駅。市内に点在する温泉へ向かうバスが発着しています。

加賀温泉郷は小松市にある粟津温泉と加賀市にある山代温泉、山中温泉、片山津温泉の4湯の総称。九谷焼や山中塗など伝統工芸品の生産も盛んで、一年を通じて多くの観光客が訪れます。

山代温泉には総湯と源泉のある広場を取り囲むように形成された「湯の曲輪」という独特の街区が残っています。

山代温泉には総湯と源泉のある広場を取り囲むように形成された「湯の曲輪」という独特の街区が残っています。

そんな温泉地の近くにあるラーメンチェーン店が今回の目的地。北陸三県でバツグンの知名度を誇る「8番らーめん」の1号店です。発祥の地・石川県のソウルフードと言われている、8番らーめんの魅力を味わってきました!

■野菜のうまみがたっぷりのスープ

今年で創業50周年を迎えた8番らーめん。“8番”という名前の由来にもなった国道8号沿いにオープンした1号店は、「8番らーめん本店」として50年前と変わらない場所で忙しく行き交う車を見送ってきました。

8番らーめん本店。オープン当初、バラックのようだったという店舗は3度の建て替えを経ています。 

8番らーめん本店。オープン当初、バラックのようだったという店舗は3度の建て替えを経ています。

店内にはカウンターとテーブル席合わせて63席用意されています。

店内にはカウンターとテーブル席合わせて63席用意されています。

案内してくれたのは、店長の山元勝貴さん。席に備え付けのメニューを開いてみると、野菜らーめん、担々麺、唐麺と数多くのメニューが並び、目移りしてしまいそうですが……。

山元さん「一番人気は野菜らーめんですね。お客さんの7割くらいが注文しますよ」

野菜らーめんは、創業当時から受け継がれる代表的なメニュー。味は味噌醤油とんこつバター風味の5種類から選べます。今回は、バター風味を注文してみました!

「野菜らーめん バター風味」。固形のバターとあらかじめ溶かしたバターが入っています。

「野菜らーめん バター風味」。固形のバターとあらかじめ溶かしたバターが入っています。

目に飛び込んできたのは、丼ぶりの中心に据えられた赤い8の文字。「ハチカマ」と呼ばれるカマボコで、創業翌年に誕生した8番らーめんのシンボルです。真下にはキャベツもやしにんじんたまねぎひき肉の野菜炒め。わきにメンマバターが添えられています。

うっすらと白く濁るスープをひと口飲むと、あっさりとしたほど良い塩味が舌の上に広がります。バター風味とは、塩らーめんにバターを入れたもののようですね。そうして何口かじっくりと味わううちに、スープの奥に潜むほのかな甘み動物系のコクに気が付きました。

山元さん「うちのスープのベースはパイタンスープなんです。豚骨や鶏ガラなど数種類の素材を使って作ります」

寸胴鍋のなかで静かに沸く、見事に白濁したスープ。

寸胴鍋のなかで静かに沸く、見事に白濁したスープ。

このスープをタレと合わせて、スープを仕上げる過程がユニーク。一般的なラーメン店ならば、寸胴鍋からすくったスープをタレの入った丼ぶりに直接注げばスープは完成です。一方で8番らーめんでは、まずスープを中華鍋で炒めた野菜を煮込むのに活用。その煮汁であるスープをタレと合わせて、スープを作り上げます。

スープで煮込まれる野菜。このスープを中華鍋から直接丼ぶりへ注ぎ、残った野菜はさらに炒めて麺にのせます。

スープで煮込まれる野菜。このスープを中華鍋から直接丼ぶりへ注ぎ、残った野菜はさらに炒めて麺にのせます。

山元さん「野菜を煮込んだスープをベースとして使うと、野菜炒めとスープに一体感が生まれるんですよ。スープに、野菜のうまみが染み出ていますから

一杯のスープに、一杯分の野菜のうまみが余すところなく詰まっているということですね!

てんこ盛りの野菜の下から太麺を探し当てました!

てんこ盛りの野菜の下から太麺を探し当てました!

麺は縮れのある独特の太麺。もっちりとした食感のなかにしっかりとしたコシがあって、粘度の低いスープも十分に絡めとってくれます。

山元さん「この太麺は創業当時からのものなんです。一般的に極太と呼ばれる12番手(2.5ミリ)を使っています」

塩のストレートな味を一通り楽しんだら、バターを溶かして全体に行き渡らせてみます。すると、あっさりとしたスープにトロリとした舌触りとまろやかさがプラス! やさしい香りと濃厚な味わいが楽しめます!

山元さん「やはり野菜のうまみが染み出たスープが、野菜らーめんの魅力です。たっぷり入った野菜のシャキシャキ感も楽しみながら、味わっていただきたいですね」

ちなみに野菜の量はなかなか多く、1人前180グラムほど。1日に必要な野菜の摂取量は350グラムとされているので、一杯で半分も摂ることができるんですね!

■愛されし食べ慣れた味

8番らーめん初代社長の後藤長司さんは、加賀温泉郷・山代温泉の出身でした。車社会の到来を予測した後藤さんは市内を横切る国道8号に目をつけ、1967年ロードサイドに1号店をオープン。同年に早くもフランチャイズシステムを導入し、石川県を起点に展開していきます。時代は変わり平成の世になってからはタイへの進出も果たし、国内122店舗、海外115店舗を構えるラーメンチェーンに成長を遂げました。

新潟市と京都市を結ぶ国道8号。ロードサイドには本店以外にも多くの店舗があります。

新潟市と京都市を結ぶ国道8号。ロードサイドには本店以外にも多くの店舗があります。

今や8番らーめんは、石川県民の誰もが知ると言っていいほど。50年間地元で支持され続ける理由とは、ずばりなんでしょう?

山元さん「みんなが食べ慣れた味なんだと思いますね。もちろん時代とともに少しずつ変わってはいますが、量の多い野菜や縮れた太麺などは昔のままです」

一方で、日本に122店舗もあるのに見かけたことがないという人も多いはず。それは、国内の店舗の大半が北陸三県に集中しているからです。富山県に32店、福井県に30店、そして創業の地・石川県には50店と数多くの店舗がひしめいています。地元の人にとっては、身近にあって当然のラーメン屋なんですね。

山元さん「そうですね。店に来るお客さんは、昔から通っている地元の人が多いです。おばあちゃんが息子を連れてきて、息子が孫を連れてきて……そんな流れがずっと続いています。小さかった子どもがいつの間にかハタチになっていて、驚くことはありますけれど(笑)」

店長の山元勝貴さん。

店長の山元勝貴さん。

そう語った山元さん自身も、幼いころから8番らーめんを食べてきたそう。石川県で育った人々のくらしに、8番らーめんはすっかり溶け込んでいるようですね!

北陸三県以外では、なかなかお目にかかれない8番らーめん。最近は石川県のソウルフードとして県外からも注目を集め、土日の本店には加賀温泉郷の観光客もたくさん食べに来るそうですよ。金沢駅や富山駅といった主要な駅にも支店があるので、北陸を訪ねたらぜひ味わってみてください!

  • 店舗情報
    ● 8番らーめん本店
    住所:石川県加賀市桑原町ト117
    電話:0761-74-0500
    営業時間: 11:00〜26:00(LO25:45)
    http://www.hachiban.jp/

※記事中の情報・価格は取材当時のものです。

この「記事」が気に入ったら
みんなにシェアしよう!

MATOME