暮らしのコト

麺は口ほどにものを言う~ご当地ヌードル探訪~

あの水戸黄門も食べた! 茨城県水戸市の「水戸藩らーめん」

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日本各地に根付いた「麺料理」を求めて、全国を巡る「ご当地ヌードル探訪」。今回は茨城県水戸市へやってきました。ここは言わずと知れた水戸黄門(水戸藩第2代藩主・徳川光圀)のお膝元! 市内には水戸徳川家ゆかりのスポットが点在しています。

JR水戸駅北口に建つ水戸黄門御一行の像。時代劇でおなじみの姿です。

JR水戸駅北口に建つ水戸黄門御一行の像。時代劇でおなじみの姿です。

日本三名園のひとつ偕楽園は水戸徳川家の庭園。シーズンには3000本余りの梅が咲き誇ります。

日本三名園のひとつ偕楽園は水戸徳川家の庭園。シーズンには3000本余りの梅が咲き誇ります。

お茶の間のヒーローとしておなじみの水戸黄門ですが、実は1665年に、中国から伝わったラーメンを日本人で初めて食べた人物と言われています。その当時のラーメンを現代人の味覚に合わせて再現した「水戸藩らーめん」というご当地ラーメンがあると聞き、「中国料理 金龍菜館」に行ってきました!

■中華料理のエッセンスがちりばめられている!

中国料理 金龍菜館は1972年創業の中華料理店。五目チャーハンや八宝菜などの定番からアワビ・フカヒレといった高級食材を使う料理まで、豊富な種類の本格中華を楽しめます。

水戸駅の近くから移転し、現在は駅から少し離れた茨城県庁近くの県道沿いにあります。。

水戸駅の近くから移転し、現在は駅から少し離れた茨城県庁近くの県道沿いにあります。

子どもと一緒でも入りやすい雰囲気の店内。テーブル席と座敷があります。

子どもと一緒でも入りやすい雰囲気の店内。テーブル席と座敷があります。

店を案内してくれたのは、二代目店主の遠藤晋さん。いまから300年以上前のラーメンとは、いったいどんなものなのでしょうか? 早速注文してみました!

「水戸藩ラーメン」は薬味とセットでひとつのメニュー。

「水戸藩ラーメン」は薬味とセットでひとつのメニュー。

これが水戸黄門が食べたと言われる麺料理! 澄んだスープの上には、おなじみのチャーシューメンマに加えて、しいたけちんげんさい松の実クコの実といった中華料理のエッセンスを感じさせる具材がのっています。一緒に添えられている薬味は何でしょう?

遠藤さん『五辛』(ごしん)と呼ばれる薬味です。にんにくにららっきょうねぎしょうがの五種類で、体を温める効能があるとされるものです」

ラーメンは中国から伝わったもの。同じく中国発祥の薬膳的な側面もあるということですね!

五辛は全部入れて食べるのが遠藤さんのおすすめ。

五辛は全部入れて食べるのが遠藤さんのおすすめ。

早速「五辛」を投入し、スープをひと口。塩味の効いたあっさり上品な味わいのなかに、動物系のだしの風味や油分をしっかりと感じます。おや、塩味かと思っていたスープですが、しょうゆの味もするようですね。

遠藤さん「スープはしょうゆと塩の間を取ったような味だと思います。実はタレに『火腿』(ほうとい)を使っているんですよ。日本でいう金華ハムですね」

金華ハムといえば、豚の骨付きもも肉を塩漬けにし、乾燥・熟成させた生ハム。世界三大ハムのひとつにも数えられる、中国伝統の高級食材ですね。これをしょうゆダレに漬け込むことで、塩味のあるコク深いタレができあがるそう。なんともぜいたくですね!

一見スタンダードな麺に見えますが……。

一見スタンダードな麺に見えますが……。

麺はやや縮れた中麺で、よく見ると少し茶色がかっています。ほどよく縮れているためかスープによく絡んでくれますね。噛むと弾力があり、もっちりとした食感が楽しめます!

遠藤さん「麺は特注です。『藕粉』(おうふん)、つまりれんこんの粉が混ざっているんですよ」

なるほど、れんこんの粉が麺の弾力を生み出しているのかもしれませんね。もともとあっさりして飽きのこない味ですが、先ほど入れた「五辛」が軽いアクセントになって箸が進みます。程なくしてスープまで完食。水戸黄門が食べたといういにしえの麺料理、すばらしい完成度です!

■文献を頼りにラーメンのオリジナルを再現

時代劇では、諸国漫遊の世直し人として活躍する水戸黄門。史実ではというと、歴史書『大日本史』の編さんをはじめ文化史上で大きな功績を残した名君だったそうです。そんな水戸黄門に思想的な影響を与えた人物のなかに、朱舜水という中国の儒学者がいました。実は、彼こそが水戸黄門にラーメンをふるまった人物とされているのです。

遠藤さん「水戸の大塚屋が所蔵していた『舜水朱氏談綺』などの古い文献に、水戸黄門がラーメンのようなものを食べたという記録が残っていたそうなんですよ」

梅が入った「水戸藩餃子」。文献には水戸黄門が「福包」(現在のギョーザ)を食べたとも記録されていたそう。

梅が入った「水戸藩餃子」。文献には水戸黄門が「福包」(現在のギョーザ)を食べたとも記録されていたそう。

かつて水戸市内に、大塚屋という水戸黄門の食事を文献をひも解いて再現した「黄門料理」の専門店がありました。その店の店主が、あるときラーメンのような食べ物に関する記述を見つけたそうです。

遠藤さん「文献にはラーメンにどのようなものが入っていたのか、つまりレシピもある程度記録されていました。それを元に川崎製麺所(藕粉を混ぜた特注麺の製造元)とおやじ(初代店主・遠藤馨輝さん)が、当時のラーメンを再現する取り組みを始めたんです

そして1994年、ついに水戸藩らーめんが完成。現在は川崎製麺所に事務局がある「水戸藩らーめん会」に加入している市内の数店舗と東京三鷹市の中華料理店、京都の太秦映画村の店舗で提供されています。こうして歴史上にしか存在しなかったラーメンを、誰でも堪能できるようになったのです。

20年以上の月日を経て、水戸黄門が最初にラーメンを食べた日本人であることは徐々に世間に広まっていきました。最近では水戸黄門が晩年を過ごした常陸太田市の西山荘や、日本三名瀑とも称される袋田の滝など茨城の観光スポットを巡る旅で、目玉のひとつとして食べに来るお客さんも多いそう。茨城を訪れたら、ぜひ食べておきたい一杯です!

店頭でおみやげ用も手に入ります。

店頭でおみやげ用も手に入ります。

  • 店舗情報

    ● 中国料理 金龍菜館
    住所:茨城県水戸市米沢町237-15
    電話:029-248-2500
    営業時間:11:00~21:30(LO21:00、水曜休、祝日の場合は翌日休)

※記事中の情報・価格は取材当時のものです。

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