暮らしのコト

麺は口ほどにものを言う~ご当地ヌードル探訪~

真っ白なラーメンの秘密とは? 千葉県袖ケ浦市の「ホワイトガウラーメン」

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日本各地に根付いた「麺料理」を求めて、全国を巡る「ご当地ヌードル探訪」。今回は、千葉県袖ケ浦市に、常識を覆す真っ白なラーメンがあると聞いて長浦駅へやってきました。その名も「ホワイトガウラーメン」です。

長浦駅前。駅舎からは東京湾が見えます。

長浦駅前。駅舎からは東京湾が見えます。

温暖な袖ケ浦市は海側が工業地域、内陸部は農業や畜産業が盛んです。

温暖な袖ケ浦市は海側が工業地域、内陸部は農業や畜産業が盛んです。

ホワイトガウラーメンは、2011年に誕生したご当地グルメ。同年に開催された「袖ケ浦ご当地グルメ王座決定戦『袖-1グランプリ』」で優勝し、市のお墨付きをもらった一品です。今では市内8店舗で提供され、県外から食べにやってくるお客さんも多いとか。その人気と白さの秘密を確かめるべく、ホワイトガウラーメンを生み出した「大衆中華ホサナ」を訪ねました。

■乳白色のスープは意外なほどあっさり!

長浦駅から歩くこと15分。大衆中華ホサナがあるのは、居酒屋などの飲食店がまばらに並ぶ商店街。1993年の創業時から、地元のお客さんに手頃な値段で中華料理を振る舞ってきました。

ペロリと舌を出したロバがトレードマークの「大衆中華ホサナ」。

ペロリと舌を出したロバがトレードマークの「大衆中華ホサナ」。

お店に入ると、迎えてくれたのはホワイトガウラーメンの生みの親・岩崎 潔さん。ホワイトガウラーメンがどのようなものかを聞いてみると「牛乳ベースのラーメンなんですよ」と教えてくれました。牛乳にラーメン…どんな味がするのか、想像のつかない組み合わせですね。早速注文してみましょう!

元祖「ホワイトガウラーメン」。インパクト抜群のスープにシンプルな具材が対照的。

元祖「ホワイトガウラーメン」。インパクト抜群のスープにシンプルな具材が対照的。

うわさに違わぬ白さ。これが牛乳の生み出す色合いなんですね! まずはスープからいただきます。いかにも濃厚そうですが、飲んでみて驚きました。牛乳らしいまろやかなコクがありながらも、想像以上にあっさりとした味わい。くどさをまったく感じません。

岩崎さん「スープには牛乳に加えて、しょうがクリームチーズを使っています。しょうがはちょっと多めに入れることで牛乳の独特の匂いを抑えてくれるんです。クリームチーズは、チーズケーキなどにも使用するものですね。それを溶かし込んで、牛乳だけでは作れないコクを生み出しています

牛乳の香りを、スープの絡まった麺が運んでくれる。

麺はしっかりとしたかみごたえのある中太の縮れ麺。牛乳のほのかな香りとやや強めに効いたしょうがの風味を楽しめるスープに、よく絡んでくれます。

箸で持ち上げると崩れてしまいそうになる特製の豚バラ肉。

箸で持ち上げると崩れてしまいそうになる特製の豚バラ肉。

そしてひときわ目を引くのが、チャーシューとは違う大きな肉のかたまり。

岩崎さん「この肉は豚バラですが、普通のチャーシューや角煮とも違う、ホワイトガウラーメン用の特製の肉なんです。作り方は秘密ですよ」

甘味と塩味のバランスが絶妙な豚バラ肉。中までしっかりと味がしみ込んでいます。何より驚きなのは、そのやわらかさ。分厚い肉なのに、噛む必要がないくらいにトロトロなんです!

食べ進めると、スープのなかに隠れていたキャベツが顔を出しました。これがまた甘くておいしい!! 塩味のあるラーメンに味の幅を持たせてくれ、飽きることなく平らげました。

岩崎さん「スープまで完食してくれる人は結構多いんです。牛乳を苦手な人が『これなら食べられる!』と言ってくれたこともあるんですよ

確かに、牛乳独特の匂いはほとんど気になりませんね。牛乳とラーメンの調和が見事な一杯です!

■牛乳とのコラボで生まれた「袖-1王者」

2011年2月に市内のテーマパーク「東京ドイツ村」で開催された「袖-1グランプリ」。ホワイトガウラーメン誕生のきっかけとなった大会ですが、そもそもどうしてラーメンに牛乳を使うという発想に至ったのでしょうか。

岩崎さん「『袖-1グランプリ』にはテーマがありました。それは、袖ケ浦市の特産品を一つ使うこと。実は、私の家内の実家が酪農家なんです。自然に『うちでやるなら牛乳でしょ』ということになり、牛乳とラーメンのコラボに挑戦してみました」

千葉県は酪農発祥の県。なかでも袖ケ浦市の牛乳の生産量は県内トップクラスを誇り、ご当地グルメの素材にうってつけだったのです。そうしてテーマが決まった一方で、開発には苦労があったと語ります。

店長の岩崎 潔さん。

店長の岩崎 潔さん。

岩崎さん「ちょうどそのとき、期間限定でちゃんぽんを出していました。スープも白いし、あんな感じで作ればいいかなと試作してみたところ、酷評をもらっちゃって。具が多すぎるし、牛乳の匂いが強すぎるし、バランスがめちゃくちゃ。そこからはシンプル・イズ・ベストを目指しました」

試行錯誤を経て完成したのが、具はシンプルにネギ、豚バラ肉、キャベツの3種、そして牛乳独特の匂いが抑えられたホワイトガウラーメンでした。予選を勝ち抜き、一般客を審査員に迎えた大会当日。会場は大盛況で、チケットも早々に完売。どこの店も大行列ができる激戦を制し、ホサナは優勝を果たしたのです。

ちなみに、ホワイトガウラーメンというユニークな名前も岩崎さんが考えたのですか?

岩崎さん「そうです。よく『ガウ』って何? と聞かれますが、袖ケ浦の『ガウラ』とラーメンをかけているわけです。英語で牛は『カウ』と言うので、それが訛った『ガウ』を名前に使ったのではないか、と聞かれることもありますが違います(笑)。ちなみに袖ケ浦のマスコットキャラクターも『ガウラ』くんという名前なんですよ」

恐竜をモチーフにした袖ケ浦市のマスコットキャラクター「ガウラ」。

恐竜をモチーフにした袖ケ浦市のマスコットキャラクター「ガウラ」。

ご当地グルメとして浸透してくるにつれ、大衆中華ホサナに訪れるお客さんも変わっていったそう。

岩崎さん「市外県外からたくさんのお客さんが来てくれるようになりました。あと、地元でも女子高生のグループやOLがホワイトガウラーメンを食べに来るようになったのには驚きました。この田舎で女の子だけでラーメンを食べにくるなんて、ほとんどなかったものですから」

「本当に女性客が多くなった」と言う岩崎さん。人気の秘密は何でしょうか。

岩崎さん洋風っぽくてオシャレなイメージがあるのかもしれませんね。夏場は期間限定で貝殻ごとアサリの入った『アサリガウラーメン』も出しています。これはやはり女性に人気。クラムチャウダーのような見た目で、スープパスタ感覚で楽しんでもらえるのではないでしょうか」

スープはキャベツと一緒に煮立てる。中華鍋と丼ぶりでなければ、まさに洋食。

スープはキャベツと一緒に煮立てる。中華鍋と丼ぶりでなければ、まさに洋食。

ほかにもチーズ入りの「チーズガウラ」や、キムチ入りの「キムチガウラ」などアレンジメニューも用意されています。さらに、市内にある8軒の店はそれぞれ具やスープの味に違いがあるそうです。

岩崎さん「はじめは講習会なんかを開いて、ホワイトガウラーメンのレシピを教えたりもしました。でも、スープのベースに牛乳を使うという決まりを守ればアレンジ自由なので、誕生から時間の経った今では店ごとの味を楽しめますよ。元祖を作った者としては、取り扱う店が増えてくれるとうれしいです。もっといっぱい袖ケ浦に観光に来てほしいので」

昨年10月開催された「ちばアクアラインマラソン」など、県内のイベントにも積極的に出展する岩崎さん。「そこまで行けるかわからないけど」と前置きをしながらも、ホワイトガウラーメンにかける思いを一言。

岩崎さん「しょうゆ、みそ、塩、豚骨に次ぐ、第五のジャンルとして『牛乳』をぜひ楽しんでもらいたいですね」

牛乳がラーメン界の勢力図を塗り替える日はくるのか? それはご自身の舌で確かめに行ってみてください!

  • 店舗情報

    ●大衆中華ホサナ
    住所:千葉県袖ケ浦市蔵波台2-23-23
    電話:0438-63-4378
    営業時間:11:30〜14:30、17:00〜22:00(日曜休)
    http://www.geocities.jp/hosanashop/

※記事中の情報・価格は取材当時のものです。

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