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麺は口ほどにものを言う~ご当地ヌードル探訪~

なんとも“めでタイ”お祝い料理! 愛媛県宇和島市の「鯛そうめん」

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日本各地に根付いた「麺料理」を求めて、全国を巡る「ご当地ヌードル探訪」。今回at home VOXがご紹介するのは、愛媛県南部の南予地方の中心地、宇和島市の郷土料理「鯛そうめん」です!

高台から眺める宇和島市街と宇和海。

高台から眺める宇和島市街と宇和海。

鯛そうめんは、鯛の姿煮とそうめんに加えて、色とりどりの具材が1つの皿に盛られた豪勢な麺料理。瀬戸内海を中心に広く伝わる料理で、中国・四国から九州にかけてさまざまな地域で親しまれています。中でも宇和島の鯛そうめんは、見た目に美しく味もおいしいと評判。地元郷土料理を扱う宇和島の人気店「かどや」で確かめてみましょう!

かどやは創業1955年の老舗。道の角に建っているから「かどや」です。

かどやは創業1955年の老舗。道の角に建っているから「かどや」です。

■大物が丸ごと1匹と、インパクト大!!

案内してくれたのは「駅前本店」の料理長・宇都宮実樹さん。事前に予約をしていたので、すぐに運んできてくれました。

鯛そうめんは、一般的なそうめんのように冷やされておらず、常温で出されます。

鯛そうめんは、一般的なそうめんのように冷やされておらず、常温で出されます。

大皿に敷き詰められたそうめんとカラフルな具材の上に、大きな鯛がどーん! 鯛のサイズは重さ1.2kg〜1.5kg、全長40㎝オーバー。いざ目の前にすると、とんでもない迫力です……!

宇都宮さん「お祝いの席の料理ですから、1皿で10人前ほどの量です。鯛は宇和海で水揚げされたもの。そうめんを宇和海の波に見立て、海原を泳ぐ鯛を表現しているのです。そこに干ししいたけ、錦糸卵、ねぎ、しょうがなどの薬味をのせて、鮮やかに仕上げます」

早速いただこうと箸を取りましたが、正直大きすぎてどこから手をつけていいのかわかりません。美しく盛られているので、崩すのがもったいないという気持ちも湧いてきます。すると、宇都宮さんがきれいな食べ方を教えてくれました。

まず、そうめんを小皿に取ります。

くるくるっと丸められたそうめんは、とても取りやすい!

くるくるっと丸められたそうめんは、とても取りやすい!

続いて魚をほぐし、小皿に盛ります。

かどやの鯛には、斜めの切れ込みが入れてあります。ほぐしやすくする職人の工夫です。

かどやの鯛には、斜めの切れ込みが入れてあり、ほぐしやすくする職人の工夫もうれしい。

各種具材を小皿に盛り込んで、冷やしためんつゆをかけたら準備はバッチリ。

小皿に盛りつけてもこの美しさ。めんつゆから甘い匂いが漂ってきます。

小皿に盛りつけてもこの美しさ。めんつゆから甘い匂いが漂ってきます。

口に含むと、甘辛いめんつゆが舌を刺激。濃い口で箸が進むタイプの味つけです。そして驚いたのが、口のなかいっぱいにふくらむ濃厚な魚介の風味! 麺と一緒に食べた鯛の味わい、だけではなさそうですが……

宇都宮さん鯛をはじめとした数種類の魚のアラと、干ししいたけを出汁に使っています。一般的なめんつゆの出汁には、かつお節や昆布しか使いませんから、珍しい味かもしれません」

このめんつゆ、確かに知っているようで知らない味。添えられた干ししいたけも甘辛く煮込まれていて、かみしめるたびに味が染み出します。そうめんと言えば、氷水に入れためんを冷たいつゆにつけて食べるシンプルな料理ですが、これは似て非なるもの。「そうめん観」が覆される味わいです!

■「宇和島」の鯛そうめん

瀬戸内海沿岸の郷土料理である鯛そうめん。同じ愛媛県では、五色そうめんで有名な松山市でも鯛そうめんが名物とされています。宇和島では、いつ頃から食べられているのでしょうか。

宇都宮さん「定かではありませんが、江戸時代の末期には既に食べられていたようです。宇和島藩主の伊達家が外から持ち込んできた食文化が、宇和島に根づいたという説があると聞いています」

鯛そうめんは、「鉢盛り料理」と言われる大皿や大鉢にさまざまな食材を盛りつけた、南予地方の郷土料理の一種。その「鉢盛り料理」は、高知県の伝統料理である「皿鉢料理」が波及したものとする説があるそうです。そうして流入した食文化が定着して、宇和島でも鯛そうめんを食べるようになったのでないかということでした。

駅前本店の料理長・宇都宮実樹さん。

駅前本店の料理長・宇都宮実樹さん。

宇都宮さん「私も南予地方出身ですが、子どもの頃からお祝いごとのたびに鯛そうめんを食べました。その習慣は、もちろん今でも変わりません。『さしみ』、『ふくめん』(※1)、『ふかのゆざらし』(※2)、『盛り込み』(※3)などと一緒に、結婚式などで振る舞われることが多いですね」

※1 丸い皿にのせた味つけこんにゃくを、紅白のそぼろ、ねぎ、みかんの皮で飾り付けた宇和島の郷土料理。
※2 湯通ししたふか(サメ)を、酢みそで食べる宇和島の郷土料理。
※3 魚や肉などを大皿いっぱいに盛りつけた、盛り合わせのようなもの。

基本的にはハレの日の料理。ほかにも、外からやってきたお客さんを歓迎する席や、宇和島に親類が帰省したときに、鯛そうめんをみんなで取り分けて食べるそうです。

宇都宮さん外から来た人にどーんと出すと、やっぱり驚かれますね。普通のそうめんとはまた違う味なので、喜んで食べてくれます。私みたいな地元の人間にとっては、昔から集まりの場所にあって、『今日も食べられるんだなあ』っていう安心感をくれる料理ですかね」

実は、宇和島は鯛の産地として知られています。天然モノはもちろん、養殖鯛の生産量は何と日本一! 全国に鯛そうめんは数あれど、地元の魅力を生かした「宇和島」の鯛そうめんは、宇和島の個性が詰まったここにしかない味。愛媛を訪れたなら、ぜひおすすめしたい料理です!

  • 店舗情報
    店舗情報
    ●かどや 駅前本店
    住所:愛媛県宇和島市錦町8-1
    電話:0895-22-1543
    営業時間:11:00〜14:30、17:00〜21:00(木曜日のみ午前休)
    ※鯛そうめんは要事前予約。
    http://www.kadoya-taimeshi.com/

※記事中の情報・価格は取材当時のものです。

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