暮らしのコト

麺は口ほどにものを言う~ご当地ヌードル探訪~

三層構造で2倍の満足感! 愛知県豊橋市の「豊橋カレーうどん」

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日本各地に根付いた「麺料理」を求めて、全国を巡る「ご当地ヌードル探訪」。今回は愛知県の豊橋市を訪れました。実は豊橋市、うどん屋の自家製麺率がほぼ100%という、全国でも稀なうどん処だということをご存じでしたか? そんな豊橋市で2010年からブレイクしているのが、「豊橋カレーうどん」です。豊橋観光コンベンション協会の鈴木惠子さんに、詳しい話を聞きました。

鈴木さん「『お昼どこに行こうか?』という話になると、『うどんかそれ以外か』ってなるくらい、豊橋の人はうどんが好き。けれど、県外の人は豊橋がうどん処ということを知らないんですよね。そこで、なんとか豊橋のうどんをPRしたいと思って、2009年からご当地グルメの開発に乗り出したんです」

自慢のご当地グルメを知ってもらいたいというのは、全国どこも同じですよね。でも、なぜカレーうどんなのでしょうか?

鈴木さん「カレーうどんって万人受けする食べ物でしょう? みんなが好きなカレーうどんで意表をついたものができれば、絶対にウケると思ったんです。そこで、我々観光コンベンション協会と市内のうどん屋さんたちが協力して生まれたのが、三層構造のカレーうどんです」

ごはんもうどんも入るよう、どの店も器は大きめ。

見た目は普通のカレーうどん。どの店も器は大きめです。

なんと、器の中にごはん・とろろ・うどんが層のように重なっていて、上の写真ではごはんととろろは見えませんが、しっかり底に沈んでいます。一杯で2度楽しめるこの味、知らずに食べたらたしかに意表をつかれそう!

カレーうどん断面図

■「豊橋カレーうどん」完成への道のり

完成に至るまでには大変な紆余曲折があったのだとか。

鈴木さん「もともと、市内のあるうどん屋さんがまかないでカレーうどんにとろろをかけて食べていたというところから発想を得たんです。〆には余ったカレールーにごはんをかけて。一度モニターを交えて試してみたら、美味しいことは美味しいんですけど、残ったうどんの器にごはんを入れるというのが、女性には『見た目が汚い』と不評でした。そこで、一つの器にごはんとうどんを入れ、ダシの上からとろろをかけるという方法にしたのですが、それでもインパクトに欠けて」

市内のうどん屋さんの店主たちを交えて試作を繰り返したものの納得のいくものができず、ついには『一度リセットしよう』という話にまでなり……。そんな時、鈴木さんの頭に神が舞い降り、「ごはん・とろろ・うどんの順にすればいいんだ!」とひらいめいたんだそう。

そうして生まれたのが、現在の「豊橋カレーうどん」。トッピングには豊橋が生産量日本一を誇るウズラを乗せるというルールを決めたそうですが、これもお店ごとの個性を出すのにひと役買ったのだそうです。オーソドックスなスタイルは茹でたウズラであるものの、生だったり、焼いたり、フライだったりと、創意工夫のポイントに。「豊橋カレーうどん」の「みんな同じでみんな違う味」というキャッチコピーが、魅力を物語っています。

ちなみに、「豊橋カレーうどん」の5つのルールとは……。

●うどん麺は自家製麺とする。
●器の底から、ご飯、とろろ、カレーうどんの順に盛る。
●日本一位の生産量を誇る「豊橋産のうずら卵」を具に使用する
●福神漬または壺漬け・紅しょうがを添える。
●愛情を持って作る。

「豊橋カレーうどん」を出すお店は、44軒(2015年1月現在)。これは実際に味わってみなければと、鈴木さんに代表的なお店「勢川本店」を紹介してもらいました。

■老舗の技が光る「勢川本店」へ

豊橋駅からほど近い「勢川本店」は、1914年創業、昨年で100周年を迎えた老舗中の老舗です。代表の新美晴久さんはこの店の伝統を守る一方、地元のうどん店と協力して、「豊橋カレーうどん」の普及に務めています。

左から、次男の順一さん、新美さん、長男の和之さん。

お店を切り盛りする、新美さんと息子さんたち。左から、次男の順一さん、新美さん、長男の和之さん。

新美さん「最初は『こんなの売れるのか?』と疑問だったけど、いざ出してみたらとてもウケがよくて。土日ならだいたい100杯は超えるし、遠方から来られる方も多いですね。うちのは比較的シンプルな形ですが、作っているところを見てみますか?」

茶碗小分のごはんを盛りつけ、とろろをかけます。

茶碗小分のごはんを盛りつけ、とろろをかけます。

茹であがったうどんを入れます。

茹であがったうどんを入れます。ご飯ととろろは完全に隠れました!

上からカレールーをかけます。

上からカレールーをかけます。

おお、お見事!あとは、うずらの卵などのトッピングをのせて出来あがり!
顔を近づけると、カレーのスパイシーな香りはもちろん、ふんわりと香る合わせダシのにおいに、なんとも心地良くお腹が空いてきました。

新美さん「うちは元々割烹旅館だったんです。毎日削るソウダガツオのかつお節とムロ節の合わせダシは、その時代から受け継がれているんですよ」

味以上にびっくりしたのが、麺とごはんにうまく絡むよう、もったりとしたカレールーになっていることです。なんというか、飲むルーというよりは食べるルーのよう。

そして麺を持ち上げてみると、案の定、カレールーがたっぷりと絡みます。麺はふっくら柔らかめ。もちもちと歯ごたえよくかみ切れ、次々に箸が進みます。しかも、たっぷりルーを吸った油揚げがアクセントになっていて、これがクセになる!

麺を食べ終えたら、いよいよごはんととろろが顔を出しました。

脇に添えられる福神漬けをトッピングしてもよし。

脇に添えられる福神漬けをトッピングしてもよし。

辛くはないですが濃厚なダシだから、ごはんとは合うのかな?と思っていましたが、とろとが混ざることでほどよくマイルドに。〆にちょうどいい量ですし、おじややリゾットのような感覚で食べられます。最後に出てきたサプライズに、胃も心も思わずホッとします。

シンプルながら完成度の高い「勢川本店」の味は、「豊橋カレーうどん」を知る入口にはぴったり。とはいえ、いろいろなお店の味を食べ比べてみるのもよしです。三層構造が織りなす魅惑の世界に、ハマってみませんか?

■取材協力
豊橋観光コンベンション協会
http://www.honokuni.or.jp/toyohashi/

  • 店舗情報
    ●勢川本店
    住所:愛知県豊橋市松葉町3-88
    電話:0532-54-0614
    営業時間:11:00〜19:30LO(月・第三火休)
    http://www.segawaudon.com/

※記事中の情報・価格は取材当時のものです。

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