日本各地の「麺料理」を求めて、全国を巡る「ご当地ヌードル探訪」。今回は、400年以上前の戦国時代の味を今に伝える大分県大分市戸次の郷土料理「鮑腸」です!
アワビの腸と書いて鮑腸(ほうちょう)。
高級食材アワビを使った料理なのかと思いきや、小麦粉のだんごを長ーーーーーく伸ばした料理なんだとか。
鮑腸は手間がかかることから飲食店での取り扱いはなく、最近では家庭で作られることもほぼないようなので、だんご伸ばしの伝統技術を受け継ぐ地元の主婦の方に作っていただきました!
現在はほぼ作られていない幻の郷土料理
この料理が「鮑腸」と呼ばれるようになったのには、時代を遡ること450年前……。
釘宮さん「戦国時代、大分県のあたりを治めていた大友宗麟の好物がアワビでした。ある年、アワビが不漁になり、好物が食べられないことを嘆いていた宗麟を見かねて、家臣が考えだしたのが『小麦粉を練ってアワビの腸のようにした料理』。それを喜んだ宗麟が『鮑腸』と名付けたという説が有力です」
その後、小麦の産地だった戸次に郷土料理として根付いたと考えられています。
手延べで2メートルまで伸ばす伝統技術
鮑腸は小麦粉を塩と水だけで練って、麺つゆで食べるすごくシンプルな料理ですが、最大の特長は麺の長さ。
大分県には「だんご汁」や「やせうま」など、小麦粉を練って伸ばした郷土料理がありますが、それらのだんごが30センチメートル程度なのに対して、鮑腸は2メートル以上!
手ごね手延べなので、長く伸ばすには熟練の技術が必要です。
練り上がっただんごの塊を適当なサイズにちぎって1時間程度休ませると、程よくグルテンが形成されて長ーーーーーく伸ばすことができるんだそうです。
釘宮さん「作る人によって好みの太さや硬さが違うので、家庭ごとに麺の違いが出るところがこの料理の面白いところです。手間はかかりますが、自分で作ると愛情がわきますね」
伸ばした麺を茹でれば完成です!
水で締めているのでツルンとしていますが、もちもちしてしっかりとした弾力で噛みごたえもあり、うどんというよりは山梨の「ほうとう」に近い食感。
長いのですすらずに噛み切りながら食べます。
麺によって太さや硬さが違うので、いろんな食感が楽しめるところも◎!
つゆは、昆布といりことかつお節にたっぷりしいたけが入った豪華な出汁に、大分県産しょう油とみりんを入れたコクのあるしょう油味。しいたけに並々ならぬこだわりを持つ大分県民食らしく、しいたけの香りが強めです。
甘みのある味なのでショウガとネギの辛み、かぼすの酸っぱさが良いバランスになります。
釘宮さん「大分県の特産品であるかぼすは、全国的に出回っているものは緑色ですが、大分県内では秋には黄色い完熟かぼすが購入できます。完熟は苦味が少なく、甘みがあるので、鮑腸にぴったりですよ」
今ではほとんど食べることができない幻の郷土料理「鮑腸」。
うどんのようでうどんではない、すいとんのようですいとんでもない、とても不思議な麺料理でした。
素朴でとてもおいしいのに、飲食店では食べられないのが残念なところ。
だんご汁のような30センチメートル程度の麺ならば、比較的簡単に伸ばせるようになるそうなので、自分で作るしかないのかも!?