(ライター:村上 健)
「珍しい参道だなあ」。普通、門前とくれば土産物店ですが、櫻山神社の参道周辺は大半が飲み屋さん。軒を連ねる木造2階建てに40軒ほどがひしめき、これはもう立派な飲み屋街です。
始まりは戦後のバラック建ての闇市。時を経て商店街となり、いつしか地元で人気の飲み屋街となりました。
周辺を歩くと、ぐるりと堀に囲まれているのに気付きます。堀の中の飲み屋街は珍しいと思いつつ、スケッチ場所を思案していると、「内丸の意味わかりますか?」と、電柱の住居表示を指して通りすがりのオジサン。こんな人に出会うのが地方の面白さです。かつて参道は盛岡城へ向かうメインストリートで、重臣屋敷があった堀に囲まれた区域を内丸と呼んだとか。ナルホド。初代盛岡藩主の南部信直公をはじめ、歴代藩主を祀る神社の参道には数百年の歴史が積み重なっています。
親切なうんちくオジサンは、ついでに盛岡名物「じゃじゃ麺」の店も教えてくれます。ウーム。絵が先か、麺が先か……。やっぱ麺でしょ。
村上 健 Ken Murakami
編集者の仕事の傍ら、各地の風景を描く。著書に『昭和に出合える鉄道スケッチ散歩』『怪しい駅 懐かしい駅』がある。

月刊不動産流通2016年11月号掲載