(ライター:村上 健)
幕末以来、海外からの玄関口となってきた港町神戸。大正〜昭和初期に造られたビル群が風格あるまち並みを形成する元町の旧居留地界隈は、オシャレでエキゾチックな雰囲気が漂っています。
しかし、路地裏散歩を好むオジサンは、同じ元町でも高級ブランドが並ぶ旧居留地でなく、JRの高架下へ向かいます。目当ては「元 町」駅と「神戸」駅間に延々と約1kmも続く昭和の商店街「モトコー」です。
幅2mほどの通路を挟んでひしめくのは、開運宝石店から、バッタ屋さん、船専門の模型店、格闘技道場、メリヤス肌着の店まで、もう何でもありです。「神戸」駅に近づくに連れて、通路はトンネルのように薄暗く怪しい雰囲気に。そんな中で見つけたのは、何とワープロ専門店! 東芝Rupoや富士通Oasysが勢ぞろいです。「売れるんですか?」「パソコン教室で挫折した人が買うんですわ」。ホンマかいな。
闇市から始まった「モトコー」。空襲も21年前の震災も乗り越え、周回遅れでたくましく生きています。
村上 健 Ken Murakami
編集者の仕事の傍ら、各地の風景を描く。著書に『昭和に出合える鉄道スケッチ散歩』『怪しい駅 懐かしい駅』がある。
月刊不動産流通2016年5月号掲載