(ライター:村上 健)
路地や横丁を散歩する面白さの一つに、表通りから消えたまちの歴史がうかがえることがあります。
溢れんばかりの人が行き交う銀座4丁目交差点に近い「三原橋横丁」。路地入口のアーチは7軒分の看板のうち4軒の店名が消され、何だかうら寂しい雰囲気です。それでも、路地奥の明かりについ吸い寄せられて入って行くと、銀座の真ん中と思えない昭和ムードの2階建てが現れます。できたのは昭和25年という棟割長屋風の建物を見上げると、麻雀、焼肉、中華などの看板に混じって、「関西調理師大京会」という看板が下がっています。なぜ銀座に関西の調理師が? 不思議に思って調べると、関東大震災で大打撃を受けた銀座の再建に関西の割烹が一役買い、上京した板前たちが昭和2年に結成した就職紹介所でした。
隣り合う「三原小路」も、元は闇市。入口近くにある小さな稲荷神社は、戦後、小路で頻発した火災よけだとか。

三原橋横丁のそばには趣の異なる三原小路も
「爆買い」と海外ブランドの店に席巻された感のある銀座ですが、表通りを一本入れば、昭和の銀座も頑張っています。
村上 健 Ken Murakami
編集者の仕事の傍ら、各地の風景を描く。著書に『昭和に出合える鉄道スケッチ散歩』『怪しい駅 懐かしい駅』がある。

月刊不動産流通2016年1月号掲載