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東京カリ〜番長直伝! 春夏秋冬カレー

【番外編】東京カリ〜番長インタビュー 「基本のスパイス4種類で本格カレーが作れる」

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シャンカール・ノグチさん愛用のスパイスボックス

人気の出張カレーユニット「東京カリ〜番長」メンバーが、スパイシーなカレーライフを提案する連載「東京カリ〜番長直伝! 春夏秋冬カレー」 の第12回。

前回「たらの芽とウドとイカのココナッツカレー」を紹介してくれたシャンカール・ノグチさんは、東京カリ〜番長の貿易主任を務めています。なぜ「貿易」主任かというと、スパイスなどインド食品の開発・輸入・販売を手がける「インドアメリカン貿易商会」の3代目だから。

24時間365日、スパイスに囲まれた日々を過ごしているシャンカールさんに、日常の食生活や仕事のこと、カレーの魅力を発信する活動などについて、興味深い話を聞かせてもらいました!

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調理中の鍋にパウダースパイスが投入されたところ

■貿易主任の食生活はインド式? 日本式?

日常の食生活でも、やはりスパイスをたくさん使っているのですか?

シャンカールさん「毎日、朝はスパイスの入ったマサラチャイを飲んでいます。アッサムティーにシナモン、カルダモン、クローブ、ジンジャーをオリジナル調合した商品があって。鍋にお湯を沸かしてチャイを入れ、あとは牛乳と砂糖を入れて煮立たせるだけなので、とても簡単です。チャイは小さい頃からずっと飲んでいますね

日本人がお茶を飲むような感覚ですね。

シャンカールさん「そうです。うちは来客に緑茶じゃなくてチャイをお出しします。また、いつも同じ飲み方ではなく、夏はレモングラスを入れてさわやかな風味にしたり、風邪をひいたら殺菌作用のあるブラックペッパーとジンジャーを多めにしたりと、気候や体調に合わせたチャイを楽しんでいます」

スパイスで医食同源を実践しているんですね。

シャンカールさんスパイスにはそれぞれ薬効がありますから、それも踏まえて使います。インドカレーの場合、辛みをつけるカイエンペッパー、肝臓など内臓を守るターメリック、香りをつけるクミン、スパイス同士をつなぐコリアンダーといったように、役割分担があるんです。この4つの基本スパイスがあれば、十分に本格インドカレーは作れますよ

食生活は完全にインドスタイルですか?

シャンカールさん「いえ、日本食も食べますよ。でも僕が子どもの頃は、普通に日本食のごはんを食べてお腹がいっぱいなのに、さらにダル(豆カレー)とチャパティ(インドの家庭で食されるパン)が出てきて『もっと食べて大きくなりなさい』と言われていました(笑)。しかも、断らない限りどんどん出てくるんです。祖父がインド北部のパンジャブ地方出身のため、北インドのスタイルですね。平日は豆や野菜のカレーが中心で、週末はちょっと豪華に肉のカレーを作ったりします」

そこで食べるのはお祖父様直伝のインドカレーですか?

シャンカールさん山形出身の祖母が、祖父のためにチャパティ、サブジ、ダル、チキンカレーなど、インド料理を覚えて作っていました。インド人会で交流のある方から、作り方を教わっていたようです。僕も祖母の料理をよく食べていましたし、親族みんなが祖母のインド料理を好んでいましたね。祖父は1930年代後半に日本へ渡ってきた新聞記者で、フリーダムファイター(独立運動家)として活動していました。新宿中村屋にインドカレーを伝えたラス・ビハリ・ボースさん、銀座にナイルレストランを開いたA.M.ナイルさんらとは同志だったそうです」

インドアメリカン貿易商会は、最初からスパイスの輸入を手がけていたのですか?

シャンカールさん「当初は日本の食器などをイギリスへ輸出する事業を展開していたようですが、のちにスパイスやインド食材の輸入がメインになりました。1970年代〜80年代のインド料理レストランの成長期とともに、うちで輸入したスパイスが使われるようになっていったみたいです」

http://spinfoods.net/

インドアメリカン貿易紹介のオンラインショップ「スピンフーズ」 http://spinfoods.net/

■みなさんにスパイスを使ってほしい!

シャンカール・ノグチさんは東京カリ〜番長に、どのような経緯で参加することになったのですか?

シャンカールさん「東京カリ〜番長のメンバーとは、結成後間もない頃からつき合いがありました。僕が調合したガラムマサラを試してもらうなど、“裏番長”活動はしていたんですね。その後、だんだん『そろそろオマエも表に出て活動しろ』とメンバーからのプレッシャーがキツくなってきたので、決心して正式メンバーになりました(笑)。また、東京スパイス番長としても活動しています」

最近、家庭でスパイスを使う人が増えて、以前よりもスパイスが身近なものになってきた印象があります。シャンカールさんたちの活動の成果でしょうか。

シャンカールさん「だとすれば嬉しいですね。『みなさんにスパイスを使ってほしい』『料理に取り入れれば健康にもいいんですよ』という想いで、活動していますので。確かに最近、特にカレーの基本4スパイス(ターメリック、カイエンペッパー、クミン、コリアンダー)は、小売用製品が伸びています。『自分で作ってみよう』『やってみたら難しくなかった!』という人が増えているのではないでしょうか」

特に大阪では、スパイスカレーが熱いブームになっていますね。

シャンカールさん「突然きましたよね、大阪のスパイスカレーブーム。そのスタイルの店が東京にも進出するなど、スパイスカレーの店が増えています。東京カリ〜番長でも『世界一やさしいスパイスカレー教室』という本を作って、6月に発売されます。番長メンバーの中でスパイスカレーのルールがわからないメンバーのために、調理主任の水野(仁輔さん)がスパイスカレーの作り方をレクチャーするという内容の本です。基礎からホントにわかりやすくレクチャーしているんですよ」

4つのスパイスだけでカレーは作れるし、やさしいスパイスカレーの本も発売される。かなりハードルは下がってきましたが、それでもまだスパイスに手を出しにくいカレー作り初心者は、どうしたらいいですか?

シャンカールさん「ズバリ、ここで連載している『春夏秋冬カレー』を見てチャレンジしてください! それでもダメなら、“毎月レシピ付きのスパイスセットが自宅に届く”というのはどうでしょう。これに肉や野菜を買い足すだけでOK。そんな『AIR SPICE』というサービスを、水野と一緒に始めました。産地から空輸した新鮮なスパイスを使った、僕がプロデュースしたスパイスセットで、簡単なレシピで4人分の本格スパイスカレーが作れます」

http://www.airspice.jp/

毎月レシピ付きのスパイスセットが自宅に届く「AIR SPICE」 http://www.airspice.jp/

■スパイスは使いやすい場所に置くことが大切

インドアメリカン貿易紹介の仕事、カリ〜&スパイス番長としての活動のほか、シャンカールさん自身のソロ活動もありますよね?

シャンカールさん「スパイスを集めるのが好きなので、インドや東南アジアを巡って珍しいスパイスを手に入れ、実際に料理に使ってみた知識と経験をまとめた『ハーブ&スパイス事典』という本を出しています。伊藤進吾さんとの共著で僕はスパイス担当ですが、ハーブとスパイスを合わせて全256種類を紹介しています。スパイスとして使われる部位だけでなく、花も掲載していて、眺めているだけも楽しいですよ」

よいスパイスの見分け方があれば教えてください。

シャンカールさん見た目がきれいで色に深みのあるものが、新鮮でよいスパイスです。色があせたものは香りも飛んでしまっています。長期保存するときは、直射日光や照明が当たらない場所で、湿度や温度にも気をつけてください。特にカルダモンやサフランは、25℃以上になる夏は冷蔵庫に入れたほうがいいですね。ほかのスパイスは常温でOKです」

目につかない場所にしまうと、スパイスを使わなくなってしまいそうです。

シャンカールさん普段よく使う分は別の容器に入れて、使いやすい場所に置いておきましょう。炒め物にちょっとクミンを加えるとか、野菜をゆでるときにターメリックやコリアンダーを加えるとか。僕もよくそんな感じで使っています。失敗を恐れないでポジティブに、気軽にスパイスを使ってほしいですね!」

『ハーブ&スパイス事典: 世界で使われる256種』伊藤進吾、シャンカール・ノグチ(誠文堂新光社/2013年)

『ハーブ&スパイス事典: 世界で使われる256種』伊藤進吾、シャンカール・ノグチ(誠文堂新光社/2013年)

■取材協力
東京カリ〜番長
1999年に結成された出張料理集団。全国各地のイベントでカレーのライブクッキングを行うほか、雑誌・書籍でのレシピ紹介、飲食店のメニュー開発を手掛ける。
https://www.facebook.com/tokyocurrybancho

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