(OVO オーヴォより)

ビールが再び盛り上がりそうな気配だ。大手5社が発表した2015年のビールの販売実績は前年比0.1%増の2億1490万ケース(※)。1996年以来、実に19年ぶりに前年を上回った。
ビールの販売は低迷が続いていたが、各社の主力商品のテコ入れや新商品発売などが奏功した。キリンビールは「一番搾り」に注力して21年ぶりに前年比増。サントリービールは15年9月に発売した「ザ・モルツ」が当初販売計画の1.6倍の売れ行きで、前年比104.9%増と最も伸長した。サッポロビールは中身などを刷新した「黒ラベル」が21年ぶりに前年の販売実績を超えた。一方、市場の占有率で首位を独走するアサヒビールは、5社の中で唯一の前年比マイナスとなっている。各メーカーは今年もビールに力を入れていく方針とのことで、その動向が注目される。
株式会社共同通信社は、全国の20〜60代の男女で月1回以上ビールを飲む人1000人を対象に、ビールに関する飲用実態調査を行った。その結果から、ビールがどう楽しまれているのかまとめてみた。
まずビール類とくくられるビール、発泡酒、第三のビールのうち何が好きか尋ねたところ、「とても好き」「やや好き」と答えた人が、ビールは合わせて89.4%だったのに対し、発泡酒は同じく49.6%、第三のビールは同じく46.6%と、やっぱりビールが好きという人が大多数だった。
今後ビールを飲む量は増えると思うかと聞くと、全体では「変わらない」と答えた層が69.1%と大半を占めたが、若年層の20代では45.5%が「増えそう」「やや増えそう」と答えた。5割近い若者がビールをもっと飲みたいと言っているわけで、ビール回帰の動きは若年層から起きてくるかもしれない。
続いてビールの選び方や考え方については、「自分の好みに合ったビールを飲みたい」(77.3%)、「ビールには味わいを求める」(74.2%)、「ビールは家族や親しい友人と飲むのが好きだ」(65.0%)といった項目が上位に入った。一方で「ビールは仕事の上司や同僚と飲むのが好きだ」(19.8%)「ビールは量を飲む方だ」(23.6%)はあまり伸びていない。
飲む場面について尋ねると、最近飲んでいるのは「家族が一緒の食事」(59.9%)「ひとりでくつろいでいるとき」(37.7%)「友人・仲間と集まって」(36.7%)が多い。一方、今後飲みたいと思っているのも「家族が一緒の食事」(54.2%)「友人・仲間と集まって」(45.0%)と、似た傾向が出た。つまりは気の置けない人たちと一緒の時間に、ビールは楽しまれているようだ。
さらに、ビールを購入するときに重視する点を聞いてみると「おいしさ」(78.0%)が多数を占め「品質が良さそうであること」(40.6%)「メーカー・ブランド」(36.8%)「価格」(30.9%)が続いた。
どんな特徴のビールが好まれているのか聞くと「うまみを感じる」(55.3%)「味わいがある」(48.8%)という回答が多かった。一方で「苦味がある」(17.5%)や「キレがある」(26.5%)といった、これまで好まれてきた要素が伸び悩んでいる。時代の変化と共に、好みに合った味わいのあるビールをという嗜好への変化が見られる。
仕事帰りにとりあえずビール!という機会は減ったかもしれないけど、親しい人々と楽しく乾杯!という時間は、いまだ健在のようだ。
(※)販売実績は、通常の販売数量に自社の物流倉庫などへの出荷分を加えた「課税数量」で算出。1ケースは大瓶20本分。