(ライター:村上 健)
全国の路地や横丁を巡礼さながらに歩いて33カ所。さて今号は、まだ訪ねていない県へと思い、JR中央本線で山梨へ出掛けました。無論、電車は「8時ちょうどのあずさ」。なんせ昭和を探すまち歩きですから。
JR「甲府」駅近くで、お約束の郷土料理「ほうとう」を味わい、中心市街地を南へ歩くと、あるある、ディープな歓楽街に極細の路地がいく筋も走っています。「仲見世」「南銀座」「開発通り」「新さくら街」……。さすが一人当たりの飲み屋さんの数がかつて日本一のまちだっただけのことはあります。

中でもオジサンの目が釘付けになったのは「オリンピック通り」。東京五輪開催年の1964年にできたこと以外、何のゆかりもありませんが、古びたアーケードの下には昭和の気配が色濃く残っています。

1964年から英語の綴りは間違ったまま。このおおらかさが昭和?
当初からある居酒屋さんに親子三代で通う客もいて、聖火ならぬ赤ちょうちんの明かりは、飲んべえたちの手で半世紀以上経つ今も、途切れることなくひっそりとリレーされ続けています。

村上 健 Ken Murakami
編集者の仕事の傍ら、各地の風景を描く。著書に『昭和に出合える鉄道スケッチ散歩』『怪しい駅 懐かしい駅』がある。

月刊不動産流通2017年10月号掲載