(ライター:村上 健)
「この紋所が目に入らぬか」。そう警告されるまでもなく、水戸の中心街では三つ葉葵のご紋があちこち目に入ります。おまけに黄門様をはじめ、藩主徳川斉昭や水戸学の学者藤田東湖ら、郷土の偉人の像もちらほら。地元の人たち「水戸っぽ」は、まちの歴史が何より誇りのようです。

ならばと、オジサンも家康を祭った東照宮へ参上。JR「水戸」駅からメインストリートの銀杏坂を少し歩くと、真っ赤な大鳥居が唐突に現れ、神社へ続く急坂の参道とアーケード街に変貌した参道とが同時に目に飛び込んできます。

家康三十三回忌(1651年)に奉納された銅製の灯籠
まずは参拝を済ませてから、レトロなアーケード街を歩いてみます。昭和の頃には八百屋さんから映画館まで、雑多な店が並んでいたという通りはすっかり飲食店街に様変わりですが、夕闇が迫れば勤め帰りのサラリーマンで賑わうのだとか。シャッター商店街が多い当節、家康の威光いまだ健在、なのかな……。

村上 健 Ken Murakami
編集者の仕事の傍ら、各地の風景を描く。著書に『昭和に出合える鉄道スケッチ散歩』『怪しい駅 懐かしい駅』がある。

月刊不動産流通2017年9月号掲載