(ライター:村上 健)
住みたい沿線ランキングでいつも上位に入る東急田園都市線。オシャレで高級なイメージが人気の理由ですが、沿線のターミナル駅「溝の口」駅西口には、およそかけ離れた風情の一画もあります。

JRと連絡する南口の方は、ペデストリアンデッキが広がり、バスロータリーの屋根に太陽光パネル、道路の一部は遮熱性舗装が施されるという最先端のエコ仕様。一方、西口目の前の「溝の口駅西口商店街」。焼き鳥の匂いが立ち込める薄暗い通りを覆う屋根も、並行する南武線との境も、さびたトタンの戦後仕様。今どき珍しい木製電柱まで残っています。やがて平成も30年を迎え、AIが社会を一変させようという時代に、こんなありさまでいいのか。
いや、いいんです。年季の入った小さな焼き鳥の店で、わずかな隙間に席を見つけて座っていると、経年変化をしたものだけが持つ哀愁と温かみがジンワリ伝わってきます。変わらないからこそいいってこともあるんですから。

2軒ある焼き鳥店は超お手頃料金。仕事帰りのオジサンたちでいつも大賑わい
村上 健 Ken Murakami
編集者の仕事の傍ら、各地の風景を描く。著書に『昭和に出合える鉄道スケッチ散歩』『怪しい駅 懐かしい駅』がある。

月刊不動産流通2017年7月号掲載