街のコト

公園遊具に込められた「安全」とビジネス事情

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誰もが子どもの頃、近所の公園や学校の校庭にあるブランコやすべり台などで遊んだことでしょう。これら遊具には、小さな子どもが楽しく遊べるよう、きめ細やかな安全対策が施されています。でも、実は全国各地に遊具がある中で、まったく同じものはほとんどないそうです。

「公園遊具は、はしごや着座部(座るところ)といった、小さなパーツの組み合わせでできています。いわば、カスタムメイド品のようなもの。だから、公園を作る自治体や学校など、遊具を購入するお客さんの好みの数だけバリエーションがあるといっても、過言ではないんです」

そう語るのは、公園遊具に関するさまざまなガイドラインを作っている、一般社団法人 日本公園遊具施設業協会の山本教夫さん。

公園の遊具がカスタムメイド品のようにできているとは知りませんでした。確かに、似ているものはあっても、まったく同じものというのは見たことがないかも……?

山本さんによると、全国の都市公園に設置されている遊具は約45万台、遊具メーカーは協会に加盟しているだけでも140社近く。もちろん1社あたりの生産数に違いはありますが、これだけ多くのメーカーが遊具を手がけ、さらに個々の遊具がお客さんの好みに合わせて作られているということは、膨大なバリエーションがあるのでしょう。

そして、価格もピンからキリまであります。

山本さん「メーカーによってバラツキはありますが、たとえば滑り台が50万円、アトラクションがいくつかくっついた複合遊具になると数百万円大型の完全オーダーメイド品になると数億という遊具もあります。主なお客さんは、地方自治体ですね」

■「安全性」こそ公園遊具の命!

遊具を設計する際、何よりも重要視されるのは、安全基準が守られているかどうかといいます。

山本さん「平成12年に公園遊具による深刻な事故があり、安全への意識をこれまで以上に高めようという動きになりました。そこで平成14年に、当協会が技術規準を定めたのです」

メーカーが指針に沿って、安全な遊具を作れるように定められたこの技術基準。部品の長さや取りつけの角度といった細部まで、安全に配慮した基準が決められています。見た目が違う遊具でも、ブランコの高さや滑り台の角度といった大事なところは、しっかりと規格が統一されているのです。

さらに、各メーカーには協会が認定した安全管理のエキスパートがいて、定期的に遊具の点検を行っています。

  • 公園施設製品安全管理士…公園設備の設計・製造・施工や維持管理に対し、その成果が確実に安全であるかを判定できる者
  • 公園施設製品整備技師…公園施設製品安全管理士の指導管理・監督のもと、公園施設の点検・調整・修繕など、整備全般を行う者

エキスパートが管理を徹底しているからこそ、子どもたちが遊具で安全に遊べるんですね。

■遊具にも個性やトレンドがある

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とはいえ、遊具もれっきとした「商品」。メーカーは安全性とデザイン性を両立させながら、他社との差別化を図っているようです。

山本さん「自動車と似たようなもので、メーカーごとにデザインの特徴がありますね。共通しているのは『カッコいい』『かわいい』と思えるような、子どもが夢を持てるデザインであること。また、流行り廃りもあって、たとえば欧米で公園遊具の展示会があったりすると、似たようなデザインが流行ることが多いです。今は自由自在に成形できる、プラスチックの部品を使った遊具がトレンドですね」

最近は子どもの肥満対策として、クライミング遊具など、より体を動かすことに比重を置いたものも増えてきているそうです。また、単機能のシンプルな遊具が減り、たとえばのぼり棒とすべり台を組み合わせたような、複雑でより遊びがいのある遊具も増えているとのこと。

山本さん「『リスクとハザード』といって、子どもの知性や冒険心をかき立てる『小さな危険(リスク)』があるくらいが、一番ワクワクするものなんです。たとえば、ラダー(はしご)からラダーへ飛び移るとか。子どもの成長を促しつつ、安全を確保できる遊具が理想ですね」

遊具には安全への配慮がしっかりと込められており、一方でビジネスとして、子どもたちの人気獲得や成長促進のためにメーカー同士が独自のデザインや目新しい機能を競い磨き合っている……。大人になってからこうした事情を知ると、遊具を見る目が少し変わりますね!

■取材協力
社団法人 日本公園施設業協会
http://www.jpfa.or.jp/

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