
人気の出張カレーユニット「東京カリ〜番長」メンバーが、旬のおいしさをカレーに詰め込んでお届けする連載「東京カリ〜番長直伝! 春夏秋冬カレー」の第19回。
今回は東京カリ〜番長のリーダー、伊東盛さんが「椎茸と豚肉のカレー」を紹介! 主役は大きめに切った椎茸とタマネギで、その旨味や甘みに加えて、辛み、酸味などさまざまな味がバランスよく溶け合ったスパイスカレーです。
素材それぞれの味をフルに活かしながらも、ひとつにまとまったおいしさはスパイスカレーならでは。多彩なテイストが織り成すバランスの妙味を、ぜひ味わってみてください。
【材料(4人分)】
・豚肉(肩ロース薄切り):400g
・椎茸:8〜10枚(130〜150g)
・タマネギ:大1個
・トマト:1個
・パクチー:適量
・ニンニク(みじん切り):1片分
・ショウガ(みじん切り):1片分
・青唐辛子:2本
・塩:小さじ1
・酢:大さじ1
・砂糖:小さじ1/2
・水:350cc
・調理油:大さじ3
【ホールスパイス】
・クミンシード:小さじ1
・マスタードシード:小さじ1/2
【パウダースパイス】
・コリアンダー:大さじ1
・ターメリック:小さじ1/2
・カイエンペッパー:小さじ1/2
■作り方
①タマネギ、トマト、椎茸、青唐辛子を切る
②豚肉に塩・コショウを振る
③ホールスパイス、ニンニク、ショウガを炒める
④タマネギを蒸し焼きにする
⑤青唐辛子と椎茸の軸を加えて炒める
⑥トマトを加えて炒める
⑦別のフライパンで豚肉を焼く
⑧パウダースパイス、塩、砂糖、椎茸のカサを加えて炒める
⑨水、酢を加えて沸騰させ、⑦の豚肉を加えて煮込む
①タマネギ、トマト、椎茸、青唐辛子を切る
タマネギはくし型切り(8等分)に、トマトは粗みじん切りにします。椎茸は石づきを切り落とし、軸をみじん切りに、カサを半分に切ります。青唐辛子は小口切りにします。
伊東さん「タマネギはいつもの粗みじん切りではなく、具材として食感や甘みを味わうために、くし型切りにします。さらに、炒めるときに差し水をして蒸し焼きにすることで、その旨味をカレーソースにも活かします。今回のカレーでは、ひとつのタマネギを二重に味わえますよ」
②豚肉に塩・コショウを振る
豚肉に塩・コショウ適量(分量外)を振っておきます。
③ホールスパイス、ニンニク、ショウガを炒める
フライパンに調理油を中火で熱し、ホールスパイスを加えて炒めます。香りが立ってきたらニンニク・ショウガを加え、青臭さがなくなるまで炒めます。
伊東さん「フライパンに油を入れてから火をつけましょう。中火で熱して油がふつふつとしてきたら、ホールスパイスを投入。加熱するとスパイスがプチプチとはじけてきます。特にマスタードシードは跳ねてフライパンから飛び出しますので、やけどをしないよう必ずフタを使って防ぎましょう」
★ココがポイント!★
④タマネギを蒸し焼きにする
タマネギを加えたら強火にして塩少々(分量外)を振り、フタをして蒸し焼きに。途中、何度かフタを開けて差し水(分量外)をします。その工程を動画で具体的に紹介していますので、ぜひチェックしてください。初めは白かったタマネギにだんだん焼き色がついていく様子がわかりますよ。
【やり方を動画でチェック!】
※下の動画サムネイルをクリックすると、YouTubeに移動します。
〈タマネギを蒸し焼きにする〉
1.タマネギを加えて強火にし、ひと混ぜする
2.塩少々(ふたつまみ程度)を振って混ぜ合わせる
3.フタをして1分〜1分半ほど蒸し焼きにする
4.フタを開けてひと混ぜし、焼き目がついていなければ再びフタをして1分〜1分半ほど蒸し焼きに
5.フタを開けてひと混ぜし、焼き目がついていたら差し水をして、フライパンの底からこそげるように全体をよく混ぜ合わせる。もう一度フタをして1分〜2分ほど蒸し焼きに
6.フタを開けてひと混ぜし、もう一度差し水をして、底からこそげるように混ぜ合わせる
伊東さん「塩を振るのは、タマネギの水分を早く抜いて旨味を引き出すため。焦げたかな!? というくらいまでタマネギに焼き目をつけ、差し水をして混ぜ合わせると、焦げ(のように見える旨味のかたまり)が全体に行き渡ります。ただし、本当に黒く焦げついてしまうのはNG。焦げ臭いにおいがしてきたら危険信号です。一部が焦げた程度なら、取り除けば大丈夫! あまり気にしないで強火でガンガン焼きましょう」
⑤青唐辛子と椎茸の軸を加えて炒める
タマネギがしんなりして表面に焼き色がついたら、青唐辛子と椎茸の軸を加えて炒めます。
伊東さん「ここで、青唐辛子のシャープな辛さと、椎茸の軸から出る旨味を、カレーのベースに行き渡らせます。タマネギの旨味に椎茸の旨味が加わって、奥行きのある味わいを生み出してくれます」
⑥トマトを加えて炒める
伊東さん「ある程度、水分がなくなるまで炒めましょう。木べらでフライパンの底をこすってみて、水分が流れてくるうちは炒めが足りません。水分が戻らずに、上の写真のような“道”ができるようになればOK。カレー作りのポイントになるこの道を、僕たちは“カレーロード”と呼んでいます」
⑦別のフライパンで豚肉を焼く
別のフライパンを用意して、油をひかずに中火〜強火で豚肉を焼きます。
伊東さん「炒めるというより、あまりいじらないで焼き付けるようにします。肉から脂が出るので、余分な油を使わずに焼くことができますよ」
⑧パウダースパイス、塩、砂糖、椎茸のカサを加えて炒める
⑥のフライパンを弱火にして、パウダースパイス、塩、砂糖を加え、よく混ぜ合わせたら、椎茸のカサを加えてざっくりと混ぜ合わせます。
伊東さん「ここで加える砂糖が、カレーにコクをもたらします」
⑨水、酢を加えて沸騰させ、⑦の豚肉を加えて煮込む
水と酢を加え、強火で一度しっかり沸騰させたら、⑦の豚肉を加えます。弱火で5分煮込んだら皿に盛り、パクチーをのせて完成です。
伊東さん「酢を加えることで味が締まり、深みのあるカレーに仕上がります。豚肉を加える際は、焼いたときに出た余分な脂をカレーに加えないよう、菜箸を使いましょう。ご飯は、日本米とタイ米(ジャスミンライス)を1:1でブレンドし、ターメリック小さじ1/2(分量外)、調理油小さじ1/2(分量外)を入れて炊くターメリックライスがオススメです! トッピングはパクチー以外には、細く切った針ショウガでもよく合います」

主役を張るのは、大きめの椎茸とタマネギ。それらの旨味と甘みを味わうことが、このカレーの目的といっても決して過言ではありません。ルウカレーではカレーの風味が前面に出ますが、クミンをはじめとするスパイスたちは、主役をバックアップしつつ全体をまとめてくれます。豚肉は脇役に徹しつつも、食べ応えと満足感をもたらします。
青唐辛子とカイエンペッパーのピリッとシャープな辛さは、鮮烈な印象を舌に残して通り過ぎていきますが、次の瞬間、その奥に仕込まれた多彩な味わいに出合うことになります。
トマトと酢の酸味がつくりだす深い味わいの中で、炒めた椎茸の軸の旨味、カレーソースの中に行き渡ったタマネギの旨味、砂糖がもたらす豊かなコク、そしてマスタードシードが放ついぶし銀の辛みと風味が、ハーモニーを奏でます。さまざまな味覚が絶妙なバランスで紡ぎ上げられた、まさに百花繚乱たる味わいのカレーです!
【椎茸と豚肉のカレーの極意】「フタをして放置し、フタを開けて水を差す!」
「タマネギをカレーソースとして使うときは粗みじん切りにします。今回のように具として味わうときは、くし型切りなどにしますが、塩を振って蒸し焼きにすれば、効率的に脱水して引き出した旨味によって、具とカレーソースの両方の効果を引き出すことができるのです。そのためにはフタをして放置し、強火でガンガン蒸し焼きにする。フタを開けて差し水をし、焦げ(に見える旨味のもと)を全体に絡めることがポイント。ぜひ、攻めの姿勢で鍋に向かってください!」
■レシピ考案・監修
東京カリ〜番長
1999年に結成された出張料理集団。全国各地のイベントでカレーのライブクッキングを行うほか、雑誌・書籍でのレシピ紹介、飲食店のメニュー開発を手掛ける。
https://www.facebook.com/tokyocurrybancho