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地域密着 愛されご当地パン

ポテトチップスが具!? クセになる意外なコラボ 神奈川県横須賀市の「ポテチパン」

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地元で愛されているパンを探して、全国各地をゆく「地域密着 愛されご当地パン」。今回は神奈川県横須賀市の「ワカフジベーカリー」にやってきました!

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昭和な雰囲気が漂うグリーンのテントが目印。

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こじんまりとした店内。店舗裏の工場で焼き上がったばかりのパンやケーキが並びます。

今年で創業67年になるというワカフジベーカリー。横須賀市内のパン屋の中でも有数の規模の工場をもち、学校給食用のパンをメインに手頃な価格で気軽に楽しめるパンを製造・販売しています。

そんなワカフジベーカリーで一番人気のパンは「ポテチパン」。横須賀市内の一部のパン屋が扱うロングセラーのご当地パンで、地元の老若男女に愛される昔懐かしのパンなのです。そして実は、ポテチパン元祖の店のひとつがこのワカフジベーカリー。名前を聞くだけでは想像もつきませんが、ポテトチップスとパンをどのように合わせているのでしょうか? それでは、ご当地パンを拝見!

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これが「ポテチパン」。パンからはみ出るほどたっぷりとポテチが挟まっています!

小ぶりなコッペパンにぎっしりと挟みこまれた具材。ポテトチップスの存在感が大きいですが、ポテチ以外の具材は何でしょうか? 3代目の弓削力さんにお話を伺いました。

弓削さん「ポテチとともに挟んでいる具材はキャベツマヨネーズです。キャベツは地元産で、食感を重視して芯までざく切りに。こうすることで、パリッとしたポテチがしんなりしてもキャベツのシャキシャキ感が残るんです。他店では千切りにしているところもありますね」

ポテチパンは店によって作り方が異なります。例えば、のり塩のポテチを使うお店もあれば、うす塩のお店もあります。キャベツを千切りにするお店もあれば、ざく切りするお店もあるのです。使うパンもバンズやコッペパンなど店によってそれぞれです。ワカフジベーカリーではコッペパンと、うす塩味のポテチを使用しています。それではさっそく食べてみましょう!

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ふわふわのホットロールは手のひらサイズ。

ひと口ほおばった瞬間、パン生地のほんのりとした甘味が広がります。具材の塩気と互いに引き立て合って絶妙な塩梅です! できたてなので、ポテチはサクサク。まろやかな味わいのマヨネーズがポテチとキャベツを見事にひとつにまとめ上げていて、クセになりそうな味わいです。

弓削さん「パン生地には少し多めに砂糖を配合しているので、かすかに甘いんです。そして味の決め手になるのはマヨネーズ。子どもにもおいしく食べてもらいたいので、うちではオリジナルで作り、マイルドな味にしています。市販のものを使うと、どうしても酸っぱいので。時々、家で作ってみても同じ味にならないとお客さんに言われますが、それはこのマヨネーズが味の決め手になっているからなんです」

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製造工程の中で一番難しいというマヨネーズの調合。試行錯誤の上、辿りついたもの。

ポテチパンを製造している熟練のスタッフに聞くと「具材を混ぜるときは、ポテチが細かくなってぐちゃぐちゃにならないように気を付けて混ぜる」とのこと。大きい方が見た目もおいしく見え、ポテチの食感もより楽しめるのだそうです。

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具材作りの様子。キャベツ、ポテチ、マヨネーズを手早く混ぜ合わせます。

パンに挟むポテチとキャベツは約1:1の割合で、できるだけ両方がまんべんなく入るようにしているのだそう。こうすることで、ポテチのサクサク感キャベツのシャキシャキ感をバランスよく味わうことができるのです。

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できあがったばかりの具材を溢れるほどたっぷりとパンに詰め込んでいきます。

簡単に作れるように見えるポテチパンですが、実際は食材の切り方や混ぜ合わせる割合、味付けのマヨネーズまでこだわり抜いて完成した渾身のひと品だったのですね!

■ポテチパン誕生の裏側

ポテチをパンに挟むという他ではあまり見られない組み合わせで横須賀の地元の味となったポテチパン。一体、どのような経緯で生まれたのでしょうか?

弓削さん「僕が聞いている話では、60年くらい前に横須賀市にあった菓子問屋がポテトチップスを作ったのですが、何かの拍子にバリバリに割れてしまって大量に売り物にならなくなってしまったそうです。それを当時横須賀市内にあった3軒のパン屋に持ち込んで、パンに使えないかと相談したことがきっかけです。3軒のパン屋というのは『中井パン店』、『北浜製パン』、そしてうちだそうです」

ワカフジベーカリーではこの菓子問屋からポテチを仕入れて、約60年前からポテチパンを販売してきましたが、菓子問屋の釜が壊れてポテチが製造されなくなり、仕入れることができなくなったのだそう。そのため、10年ほど前に一度はポテチパンの販売を中止しました。しかしある時、パンの出張販売に行っていた市内の高校の学生たちが「ワカフジと言えばポテチパンだよね」とネットで書き込みをしているのを目にしたことをきっかけに復活したのだと言います。

今では10個以上まとめ買いをする会社員の方がいたり、遠方からわざわざ買いに訪れる人もいたりする、ポテチパン。テレビで取り上げられた後などは、オープン前から行列になっていることもあるようです。あるテレビ番組でポテチパンが紹介された日と、毎年久里浜で開催される京急の車両工場を1日解放するイベント「京急フェスタ」が重なった時には、1日に1000個も売れたのだとか。

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店内の棚の一番目立つ場所にズラリと並ぶポテチパン。

ポテチパンは高校の購買はもちろん、横須賀市内のおよそ半分の中学校へ給食として届けたり、久里浜の自衛隊駐屯地で販売したり、平均すると1日200~300個が売れています。

地元の人々に愛され続けるポテチパンの魅力とは、ずばり何でしょうか。

弓削さん「僕はポテチパンを子どもの頃から食べているので、パンにポテチが挟まっているのはごく普通のことなんです。メディアに取り上げられて初めて自分が少数派なのだと知りました。他の土地の人からすれば、ポテチとパンの組み合わせは珍しくてユニークなことのようですね。そう考えると、ポテチパンの魅力はやっぱり、横須賀だけでしか食べられないということなんでしょうね」

横須賀といえば、海軍カレーや、ネイビーバーガーが有名ですが、市民の日常にごく当たり前に存在するポテチパン。できたてを食べるなら、朝9時ごろと、お昼前ごろの時間帯が狙い目です。ぜひ、クセになる味わいを一度体験してみてください!

  • 店舗情報 ● ワカフジベーカリー
    住所:神奈川県横須賀市舟倉1-15-8
    電話:046-835-0548
    営業時間:9:00~17:30(土・第2、4日曜休)
    URL:http://wakafuji.locopo-jp.com

※記事中の情報・価格は取材当時のものです。

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