全国各地のウマい肉料理をお腹いっぱい食べ尽くしていく連載「満腹御礼 ご当地肉グルメの旅」。今回ご紹介する料理は「餃子」です。
餃子といえば、栃木県宇都宮市や静岡県浜松市などが有名ですが、実は今回訪れた千葉県野田市も餃子の聖地と呼ぶべき場所のひとつなのだとか。この野田市で生まれ、千葉・埼玉・茨城を中心に熱狂的なファンを集めているのは、昭和35年創業の有名グループ「ホワイト餃子」。今回はその本店にお伺いすることにしました。
このホワイト餃子野田本店は、全国に27店舗あるホワイト餃子グループの総本山。どの店舗も、この店での餃子修業を経て暖簾分けしていったそうです。支店では、餃子の製法や調理法、価格等もすべて同じに設定されています(技術連鎖店を除く)。特にこの野田本店は、午前中の生餃子が毎日のように完売、午後もオープン前からお客さんが殺到し、すぐに満席という超人気店です。野田市の家庭の冷凍庫には、必ずホワイト餃子が常備されているといっても過言ではないほどだとか……!
今回伺った時間は、生餃子の販売が終了し、夕方の営業へ向けてせっせと生餃子を包んでいるタイミングでした。早速、中をうかがってみましょう。
和室の中で、みなさん一心不乱に餃子を包んでいます。ホワイト餃子は、皮からタネまで全て手作り。1人あたりの餃子作りのノルマは「数千個」というから驚きです! それでも作った分が完売してしまうのですから、どれほどの人気かが窺えますね。
完全な人力でありながら、数とスピードに圧倒される餃子作り。思わず見とれてしまうほどです。餃子作りが一段落した頃、水谷社長にお話を伺うことができました。
水谷さん「ホワイト餃子は、創業者である私の父が始めたものです。中国での仕事で知り合った『白さん』という人に振る舞ってもらった餃子を食べて、『これは日本で受け入れられるのでは?』と感じたそうです」
しかし、最初からホワイト餃子は現在のように順風満帆だったわけではないそうです。
水谷さん「帰国後に名古屋で食堂を始めましたが、そこでは餃子も他の料理も全く売れませんでした。その後の料理研究で『日本人に合う餃子になっていなかった』と気がついた父は、素材選びや栄養バランスを見なおして、餃子を中国の本場の味から現在の形に変更しました。母の実家であった野田に移転し、餃子の専門店を開店。一年中おいしい食材が手に入り、肉や野菜がたっぷりはいって栄養満点ということで、次第に定着していきました。大洋ホエールズが優勝した1960年に、選手が『餃子を食べて活力をつけた』と語ってからはメディアも大きく餃子を取り上げてくれて、一大ブームになりましたね」
餃子専門店として大成功を収めたホワイト餃子。現在も、メニューは「焼餃子」と「お新香」だけとシンプルです。「焼餃子」は1人前で10個も入っていますがなんと450円と非常にリーズナブル。水谷さんも「素材の値段が変わっても、なるべく餃子の値段は変えないように企業努力しています」と語るほど値段にはこだわりを持っています。
早速、餃子を調理していただきましょう。餃子は店内、持ち帰りに関わらず、「冷凍の状態」で「冷たいフライパン」に並べるのが決まりだとか。その後「熱湯」を注いで8分ほど蒸らします。
そこから見せ場となるのが、熱した油をたっぷりと投入するところ! この焼き方は、持ち帰り餃子でも全く同じです。
水谷さん「お湯に油をたくさん入れるから、どうしてもはねてしまうんですけど、野田の人たちは、餃子を作るのは『男性の仕事』なんですよ。だから、野田の男性はみんな餃子を焼くのが上手です」
持ち帰り餃子は、焼餃子だけでなく、水餃子や蒸し餃子にしたり、鍋に入れて餃子鍋にしてもおいしく食べられるそうです。
※ご家庭での詳しい調理方法は下記公式ウェブサイトの「調理方法」をご確認ください。
http://white-gyouza.co.jp/cook/index.html
約15分ほどで完成しました!
まるでパンのようにふっくらと焼き上がったホワイト餃子。その名前から、「白い餃子では?」と思った人もいるかもしれません。たっぷりの油で香ばしく、きつね色に上がった餃子は、むしろ「ブラウン餃子」といったところでしょうか。
箸で1つ持ち上げてみると、箸を通して生地のフッカフカ感が伝わります。
水谷さん「醤油とお酢は、野田市を代表する醤油メーカー、キッコーマンさんのものを長年使っています。ラー油は、100%のごま油と一味を使って4時間かけて仕込んでいる店の自家製です。お好みでこれも自家製の七色をかけて食べてみてください」
カリッ、フワッ。生地を口に運ぶと、餃子とは思えない食感が楽しめます。空気をたっぷり含んでふくらんだ生地の中から出てくるのは、あっさりとあと引くタネ。
水谷さん「餃子に使っている肉は、指定の業者から一頭買して、一頭びきしている豚肉です。一般的なひき肉では、バラなどアブラっぽい部分がかなり多くなりクドいので、一頭びきがこの餃子には最適なんです。豚自体の大きさでも味が変わるので、豚のサイズも指定しています。その他にも白菜、キャベツ、ニラ、玉ねぎ、ネギなど。あとは企業秘密ですが、さまざまな工夫でこの味を作り出しています」
十分な肉汁を持つタネは、新鮮な醤油と合わさって口の中いっぱいに旨味が広がっていきます。
その豚の旨味、野菜の甘味をたっぷり吸い込んだ生地がまた絶妙! あれだけたっぷりの油を使って調理したのに、ひとつ、またひとつと手が止まらなくなります。パリパリっとした食感もクセになりそうです。「1人15~20個は普通に食べます」ということですが、毎日の様に通う人がいるのもうなずけますね。
これだけ長く、かつ多くの人々に愛されているホワイト餃子。今後、どのようにこの味を伝えていきたいと思っているのでしょうか?
水谷さん「もう40年近く、父の味を変えていないわけですが、全く同じ調味料が手に入らなくなったり、調理器具を変えたら同じ焼き上がりにならなくなったりということもあります。『100点満点の餃子』ができるのは、これだけ続けていても1年に数回あるかないか。やっぱりこれも、人が全て手作りしているからこそなんです。常に同じ味を目指して、日々研究し、新しいチャレンジを続けています」
野田市では、小さな子どもからお年寄りまで、誰もが常食しているホワイト餃子。この味を再現し続け、同じ場所・同じ値段を維持し続けることにも、なみなみならぬ努力があってこそなんですね。現在は店舗も増え、一部地域への通信販売も行っていますが「ご家庭で初めて作ると、本当の美味しさを出すのは難しい。まずはお店にきて本当の味を体験してもらって、ホワイト餃子の常連さんになっていただければ」と水谷さん。
野田市の誰もが家庭の味として認識しているホワイト餃子。今後も多くの人々に愛され続けるための努力を、ぜひ応援したくなりますね。それでは満腹御礼、今回もごちそうさまでした!
- 店舗情報
●ホワイト餃子野田本店
住所:千葉県野田市中野台278
電話:04-7124-2424
営業時間:生餃子販売9:00~完売まで
店内飲食17:00~19:30
http://white-gyouza.co.jp/
※記事中の情報・価格は取材当時のものです。