全国各地のウマい肉料理をお腹いっぱい食べ尽くしていく連載「満腹御礼 ご当地肉グルメの旅」。今回は兵庫県加古川市のB級グルメ「かつめし」にスポットを当てます!
「かつめし」とは手っ取り早く言うと、ご飯の上に牛肉のカツ(店によっては豚肉を使うことも)を乗せ、デミグラスソースをかけた洋風料理。そこに、ゆでたキャベツが添えられるのが定番です。
第二次世界大戦後に加古川市で生まれ、市内では非常にポピュラー。定食屋や喫茶店はもちろん、なんとお寿司屋さんのメニューに並ぶこともあるのだとか。
今回、取材に向かったのは、「本家かつめし亭」というお店。山陽電鉄浜の宮駅を降り、駅から歩いておよそ10分、閑静な住宅街を抜けていきます。
「本家かつめし亭」は、当店は平成24年にオープンした、かつめしの専門店です。マネージャーの大下律子さんが出迎えてくれました。
大下さん「私の父が喫茶店を38年間やっていまして、かつめしをメニューとして出していたんです。3年前に喫茶店を閉めることになり、主人が引継いでかつめしの専門店を始めることにしました」
もともと加古川市では、かつめしを町おこしに使おうという動きが盛んでした。それならばと、喫茶店時代のタレを使うとともに、肉やお米にもこだわった本当に美味しいかつめしを出そうと、再出発したといいます。
本家かつめし亭のタレは、別々に取ったとんこつと鳥ガラのダシをブレンドし、各種の野菜を加えて2日間煮込んでベースにした濃厚な和風デミグラスソース。ちなみに加古川では、デミグラスソースではなく、あくまで「かつめしのタレ」と呼ばれているそうです。
■B級グルメと侮るなかれ! 高品質の播州牛を使用
かつめしを調理する様子を見せてもらいました。お肉は地元・兵庫県で育てられた黒毛和牛、A4ランク以上の播州牛を使っています。見事な霜降りです!
大下さん「高温でサッと揚げるので、揚げ加減はステーキでいうとウェルダン気味になりますね。お客様のなかには『レアでお願いします』という方もいます。」
お皿にご飯を平たく盛り、その上に牛かつを乗せるのがかつめしのスタイル。ゆでたキャベツを付け合わせにし、最後にたっぷりタレをかけて完成です!
こんがりと揚げられた牛かつとデミグラスソースはフワッと甘い香りで、食欲をそそります。
揚げたてでジューシーな牛肉は臭みがなく、噛むと口の中でうま味が広がっていきます。肉質は非常にやわらかで、とろとろのタレをしっかり吸った衣と絶妙にマッチ! コクがあるタレは、芳醇な甘味と上品な酸味、そしてほんのり残るビターな後味がたまりません。
大下さん「タレはお店によって個性がありますね。甘めのところもあれば、苦みが主張するところもあって。うちのタレは、味と風味のバランスを意識しているので、大人はもちろん小さな子どもにも人気です」
牛かつはもちろんですが、ご飯とタレの組み合わせもこれまた美味。ご飯がどんどん進みます。
大下さん「お米は兵庫県産の『ひのひかり』という品種を使っています。サクサクのかつによく合うんです」
「特選ダブルかつめし」はかなりのボリュームでしたが、「これでもか」というほど口に広がる肉とタレのうま味にどんどん箸が止まらなくなって、ペロッと完食してしまいました。
■テイクアウトでも妥協せず。すべては美味しく食べてもらうために
かつめしは加古川市でとてもポピュラーな料理ということですが、兵庫県全域的に見ても、やはり人気があるのでしょうか?
大下さん「神戸の三宮に支店を出しているのですが、オープン当初はお客さんの反応が薄かったように思います。同じ兵庫県でも姫路市や神戸市では、まだまだこれからという感じ。ただ、最近はテレビ番組で取り上げられたり、『かっつん』と『デミーちゃん』というイメージキャラクターが作られたりして、追い風が吹いています」
それにしても、これだけの霜降り肉を使ってこの値段はとてもリーズナブルなように思います。失礼ながら、そのお値段の秘密とは?
大下さん「値段をリーズナブルに抑えられるのは、当店がかつめしの『専門店』だから。かつめしに精一杯力を注いで、サイドメニューはできる限りしぼっています。最初は安くするためにオージービーフを使おうかとも考えたのですが、質を下げたくなかったので、播州牛に落ち着きました。播州牛は質もコストも、うちにはぴったりなんです」
店内ではテイクアウトも可能。ここにも、「本家かつめし亭」ならではのこだわりが。
大下さん「お店でタレをかけたかつめしをお渡しすると、衣が柔らかくなりすぎてしまいます。なので、テイクアウトではタレとかつ、ご飯を別々にしてお渡ししています。それぞれを温めてもらって、最後にタレをかけていただく方が、絶対美味しいですから。タレだけの注文も、スタッフにオーダーしていただければ対応しています」
美味しくてリーズナブルで、そのうえ店でも家でも味わえる。気くばりを欠かさない姿勢に感服しました! 兵庫県といえば神戸や姫路が食処として知られていますが、加古川にも「かつめし」という大きな見どころがあります。いろいろなお店の味を食べ比べてみるのもまた一興。満腹御礼、今回もごちそうさまでした!
- 店舗情報
●本家かつめし亭
住所:兵庫県加古川市尾上町池田642
電話:079-421-4368
営業時間:11:00〜21:00(LO20:30)、不定休
http://www.katumesitei.com/
※記事中の情報・価格は取材当時のものです。