暮らしのコト

満腹御礼 ご当地肉グルメの旅

ジンギスカン鍋で“焼く”ד煮る”スタミナ料理 秋田県鹿角市の「鹿角ホルモン」

この「記事」が気に入ったらみんなにシェアしよう!

みんなにシェアしよう!

全国各地のウマい肉料理をお腹いっぱい食べ尽くしていく連載「満腹御礼 ご当地肉グルメの旅」。今回訪れたのは、秋田県鹿角市。秋田・岩手・青森3県の県境に位置する街です。

この鹿角市、実は秋田の郷土料理である「きりたんぽ」が生まれた街。取材に向かった花輪地区にも、発祥の地であることを示す看板がそこかしこにありました。

毎年10月になると「きりたんぽ発祥まつり」というイベントも開催されます。

毎年10月になると「きりたんぽ発祥まつり」というイベントも開催されます。

とはいえ、今回の目的はきりたんぽにあらず。お目当ては花輪発のB級肉グルメ「鹿角ホルモン」です。そのルーツであるお店、「ホルモン幸楽」を訪れました。

お店は鹿角花輪駅から徒歩でおよそ3分。向かいにはホテルがあり、観光客も多く訪れます。

お店は鹿角花輪駅から徒歩でおよそ3分。向かいにはホテルがあり、観光客も多く訪れます。

親しみやすい雰囲気の店内。こちらは創業時からある部屋ですが、隣接する離れには座敷席メインの部屋も。

親しみやすい雰囲気の店内。こちらは創業時からある部屋ですが、隣接する離れには座敷席メインの部屋も。

安保さん「遠くまでよくお越しいただきました」

出迎えてくれたのは、スタッフの安保美雪さん。さっそくですが、「鹿角ホルモン」って、どんな料理なのでしょう? 焼肉のホルモンとは違うの?

■「焼く」「煮る」でホルモンを照り焼き風コーティング!

安保さん「焼くといえば焼くんですけど、『煮る』にも近いというか。準備をしておいたので、実際に見てください」

目の前に現れたのは…なんとジンギスカンに使う鍋! ズッシリと重厚感があります。まさかこれで焼くのでしょうか!?

直径30cm以上はあろうかというジンギスカン鍋。

直径30cm以上はあろうかというジンギスカン鍋。

安保さん「どうしてジンギスカン鍋なのかは亡くなった先代しかわからないということなんですが、うちがオープンした62年前からずっと使っているようです。鍋の上にホルモン・キャベツ・豆腐の3点セットを乗せて焼くんですよ

基本の3点セットがこちら。ホルモンが340円、キャベツが210円、豆腐が310円、すべて合わせて860円ですから、とても良心的な価格ですね。

しょうゆベースの秘伝のタレに漬け込んだホルモン。

しょうゆベースの秘伝のタレに漬け込んだホルモン。

地元・鹿角産のキャベツ。

地元・鹿角産のキャベツ。

どっしりとした絹ごし豆腐が、カットされて12個。

どっしりとした絹ごし豆腐が、カットされて12個。

最初のセッティングはすべてお店の方でやってくれるということで、おまかせしてみました。じっくりと焼き方を観察します。

鍋の中央にホルモン、縁に豆腐を並べて、その上からキャベツをどっさり。鍋に乗った状態で改めて見ると、ものすごいボリューム。

鍋の中央にホルモン、縁に豆腐を並べて、その上からキャベツをどっさり。鍋に乗った状態で改めて見ると、ものすごいボリューム。

安保さん「ホルモンの漬けダレとキャベツの水分が煮汁になってあふれてくるので、鍋の縁にたまった汁をスプーンですくって、またキャベツの上にかけます。こうやって煮詰めながら、具にしっかりと味を染みこませていくんです

すぐに煮汁があふれてきます。くれぐれも「決壊」には注意を。

すぐに煮汁があふれてきます。くれぐれも「決壊」には注意を。

なるほど、これが「煮る」ということなんですね! 5〜6分ほどグツグツと火にかけ、キャベツがしんなりして、豆腐がぐずぐずっとしてきたら頃合い。放っておくと焦げてしまうので、火は弱めます。

煮汁でコーティングされたホルモンがツヤツヤと輝き、食欲をかき立てます。

煮汁でコーティングされたホルモンがツヤツヤと輝き、食欲をかき立てます。

安保さん「これで2人前なんですけど、1人でもペロッと食べてしまう方が多いんですよ。ごはんもどうぞ」

まずは「大将」たるホルモンを、ということで、深いキャベツの森をかき分けて発掘。よく見てみると、いろんな部位があるのがわかります。

安保さん白モツ、ハツ、タン、ミノといった豚のホルモンを中心に、牛センマイなどもミックスしています。なんでも創業当時、肉の内臓は『捨てて当然のもの』だったそうなのですが、なんとかおいしく食べてもらおうと、韓国のプルコギをヒントにこういう味付けにしたそうです」

ホルモンを噛むやいなや、たっぷりと吸った甘辛い煮汁の味がジュワっと口に広がります。プリプリ、コリコリと部位ごとにいろんな食感が楽しめるのもミソ。ホルモンの奥の深さを「これでもか」と感じさせてくれます。

安保さんホルモンが煮汁に濃厚にコーティングされて、『照り焼き』に近い感じになっていると思います。たぶんこういう焼き方をするには、ジンギスカン鍋が一番効率がいいんでしょうね」

対して、大将の脇を固めるキャベツは、しっかり火が通って甘みが増幅! 豆腐にもいい感じで煮汁が染み込み、見事にホルモンをサポートします。

■「ホルモン丼」で第2ラウンド突入!

お楽しみはまだまだこれから。そう、ごはんという最高の相棒を手にしていたのです! ホルモンとキャベツ、豆腐の基本セットをごはんに乗せ、鍋に残った煮汁をかければ、「ホルモン丼」のできあがり。

日本一の米処・秋田ですから、ごはんだってウマいわけです。

日本一の米処・秋田ですから、ごはんだってウマいわけです。

お米、煮汁、キャベツ、それぞれの甘みが絡み合って舌をトリプルパンチ! それに、ごはんとホルモンを一緒に口に運ぶのって、なんだか贅沢です。た、たまらん…。

安保さん実は〆の裏メニューなんですが、『卵おじや』やうどんにすることもできます。メニューには載っていないので食べたい人は直接ご注文を(※日によってできない場合もあります)」

なんと! 頼む前にごはんがなくなってしまいました…。残念!

あっという間に完食してしまいました。満腹です。

あっという間に完食してしまいました。満腹です。

■「鹿角ホルモン」を秋田の新しい郷土料理に

さて、お腹いっぱいいただいたところで、この「幸楽」さんについて、いろいろとお話を聞かせてもらいました。創業62年。ホルモンの専門店としては、かなり歴史があるお店ですよね?

安保さん「『捨てるもの』を出していたわけですから、やっぱり最初は全然受け入れられなかったそうですよ。でも、そのうちにホルモンのにおいに誘われたのか、近所の人がたくさん通ってくれるようになったそうです。あと、以前この辺には出稼ぎに来ていた鉱山労働者が多くいて、その人たちが地元に帰ってうちのことを広めてくれたみたいですね。その口コミのおかげで、鹿角だけでなく、いろいろなところからお客さんが来てくれるようになりました」

先代が女性だったということで、それこそ「おふくろの味」のような感覚で、労働者たちに気に入られた鹿角ホルモン。なるほど、食べると確かにスタミナがつきますね。帰省客や観光客にも大人気のようです。

安保さん「1人で来られる方も多いですよ。うちは朝9時半から営業しているので、朝からホルモンをつまみにお酒を飲みに来る人もいます

そんな強者が! 確かにお酒も進みますよね。

安保さん「あと、大きく賑わうのは、毎年8月に行われる『花輪ばやし』のとき。『花輪ばやし』は街中をいくつもの屋台が練り歩くお祭りで、観光客も多く訪れるんですが、うちは観光客以上に祭りの参加者が詰めかけるんです」

なるほど。祭りの盛り上げ役たちが、疲れを癒しにやって来ると。それも大挙して…。

安保さん「まあ、おかげさまでなのか、今では『鹿角で幸楽を知らない人はいない』といわれるくらいになりました。うちは持ち帰りもやっているので、そっちを好んで利用してくれる人もいますね」

もちろんジンギスカン鍋があるにこしたことはないものの、秘伝のタレの味はフライパンでもそのまま。おいしく焼き上がるそうです。

持ち帰りのホルモンは2人前から10人前まで。

持ち帰りのホルモンは2人前から10人前まで。

「秋田の新しい郷土料理として、全国の人にももっと知ってもらいたい」と話す安保さん。確かに、豪快な味はさることながら、ホルモンを照り焼き風にして食べるというスタイルは新発見でした。満腹御礼、今回もごちそうさまです!

※記事中の情報・価格は取材当時のものです。

この「記事」が気に入ったら
みんなにシェアしよう!

MATOME