全国各地のウマい肉料理をお腹いっぱい食べ尽くしていく連載「満腹御礼 ご当地肉グルメの旅」。今回は三重県名張市にやってきました。
名張市は三重県の西部、奈良県と接する県境に位置します。隣の伊賀市をふくめ伊賀地方と呼ばれ、「伊賀忍者」が誕生した地域として知られています。美しい山林の中に点在する滝や渓谷は観光スポットになっており、今回訪れた「赤目四十八滝」は、最も人気のあるエリアです。
今回紹介するメニューは、赤目四十八滝周辺、そして名張市中心部のお店で提供されている「牛汁」なるご当地グルメです。どういった料理なのでしょうか? 赤目四十八滝観光に向かう道の玄関口に立つ、「ドライブイン赤目」を訪れました。
人気メニューの牛汁について説明してくれたのは、店主の梶谷龍人さんです。
梶谷さん「牛汁は名張市周辺で、もともと飲食店のまかないとして出されていたものです。ご当地グルメブームもあり、8年ほど前から地元で定着させようと、『名張牛汁』の名前で市内の飲食店で提供し始めました」
名張牛汁を名乗る条件は以下の5つ。
1:肉は伊賀牛を使用すべし
2:基本は和風醤油出汁で、伊賀牛とネギを使用せよ
3:野菜などの具材はなるべく地元産を使用すべし
4:商品名は『名張 牛汁』とすべし
5:店先にはのれんを掲示せよ
お店ごとのアレンジも認められており、同じ牛汁でも店舗ごとに個性が出ているということです。それなら、食べ歩きをしてみても楽しめますね!
お肉には伊賀牛を使うということですが、三重県で牛と言えば「松坂牛」を連想する人も多いでしょう。
梶谷さん「伊賀牛の知名度が松坂牛に比べて低いのは、ほとんど地元で消費されるからです。寒暖差の大きい伊賀地方で育たられた伊賀牛の肉質はきめ細やかで、赤身の味も有名ブランド牛に引けを取りません。食肉の世界では『肉の横綱』と呼ぶ人もいるほど、おいしい牛肉なんです」
横綱とは、期待が高まりますね! それでは、実際に味わってみましょう。こちらがドライブイン赤目の「牛汁御膳」です。
コンロの上に乗せられたメインの牛汁に加え、おにぎりや小鉢がセットになっています。牛汁の中には、伊賀牛のほかにも、ちくわやえのき、もやしなどが入っています。奥に入っている幅広い白いものは、葛を使ったうどん。
梶谷さん「肉はあらかじめ軽く煮付けてあります。その煮付けた出汁を一緒に鍋に入れることで、より深い旨味になります。この出汁がうどんにしみこむと、とってもおいしいですよ!」
コンロで暖められた牛汁。煮付けられた伊賀牛は、バラ肉を使用しているとのことで、脂の味わいもしっかりと堪能できます。牛肉の旨味と、昆布をベースにした和風出汁の旨味が、上品なハーモニーを奏でます。さっぱりとしていて、かつコクのある出汁は、どこかホッとする味です。これが、まかないとして古くから地元の飲食店で愛されてきた所以でしょうか。
幅広のうどんも、葛を使っていることでツルモチッとした食感が特徴的です。麺を汁と一緒に煮込んでいるため、麺の中に牛汁の旨味がしっかりと入っています。うどんに練りこんである柚子の爽やかな香りもアクセントになっていますね。
セットのおにぎりを半分ほどお椀に入れ、その上から牛汁をかけて雑炊風に食べるのもひと味違った味わいがあります。
梶谷さん「赤目四十八滝には“五瀑”と呼ばれる見ごたえのある滝が5つあるのですが、一番奥にある琵琶滝まで行って帰ってくると約3時間ほどかかります。アップダウンもかなりあるので、ぜひ出発前には肉がたっぷり入って、元気になる牛汁を食べていってください」
これから、秋が深まると渓谷では美しい紅葉を見ることができます。見ごろとなる10月28日~11月26日の間は、夕暮れ時から20時まで渓谷がライトアップされ、いっそう神秘的な景色に。また、赤目四十八滝では親子で楽しめる忍者体験もあるので家族旅行にもオススメです。
もちろん、トレッキングでも忍者体験でも、牛汁での腹ごしらえはお忘れなく!
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施設情報
●ドライブイン赤目
住所:三重県名張市赤目四十八滝
電話:0595-63-3010
営業時間:9:00~16:00、不定休
https://akame.jimdo.com
※記事中の情報・価格は取材当時のものです。