家のコト

潜入! プロフェッショナルの部屋

全方位を「文具武装」! 文具王・高畑正幸の仕事場に潜入!

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専門家、職人、技術者など、ある分野においてプロフェッショナルと認められている人たち。そんなエキスパートの仕事の現場は、どんなお部屋になっているのでしょうか?

at home VOXの新連載「潜入!プロフェッショナルの部屋」では、気になる仕事人たちのお部屋に潜入していきます!第一回は「文具王」こと高畑正幸さんのご自宅兼仕事場に伺いました。

■文具においては全知全能 高畑正幸のヒストリー

高畑正幸さんが「文具王」と呼ばれる所以。それは、輝かしい武功にあります。

1999年、大学生時代に出場したテレビ東京「TVチャンピオン」の「全国文房具通選手権」で、子ども時代から培った文具知識を武器に優勝。その後、2001、2005年と同大会3連覇の快挙を成し遂げます。

さらに、1999年の第2回大会が縁で入社したサンスター文具社では、10年間の商品企画業務の中で「グッドデザイン賞」を8回受賞。現在は同社を退社していますが、業界としては異例の「プロ契約」を結び、文具王として活躍の場を広げています。

本人曰く、「文房具や図工好きの小学生が、そのまま大人になった感じ。人生の転機にたまたま恵まれただけ」と謙遜するものの、自宅に一歩入るだけでも「王たる所以」を感じさせました。

文字通り、文具のプロとなった現在を、「趣味と実益が両立した、ありがたい仕事」と語る。

文字通り、文具のプロとなった現在を、「趣味と実益が両立した、ありがたい仕事」と語る。

早速お部屋にお邪魔してみましょう!場所は江東区。東西線東陽町駅から徒歩8分の分譲賃貸マンションになります。

高畑さん「それまでは千葉県の稲毛に住んでいましたが、物持ちが多いので、より会社に近く広め物件を探していました。築40年で、私と同い年。東陽町は移動が楽ですし、稲毛の以前に住んでいたところに比べると商店もすぐ近くで気に入っています。2011年、東日本大震災の4日前に引っ越してきましたけど、まだ荷物が段ボールの中だったので助かりましたね」

文具王お手製の3DK間取り図。オレンジ部分が文具置き場なので、まさに文具に囲まれた生活です。

文具王お手製の3DK間取り図。オレンジ部分が文具置き場なので、まさに文具に囲まれた生活です。数字はこの後に出てくる室内写真の場所を示しています。

まず、玄関を開いて目に止まるのは、歴史を感じさせるレトロな文具の数々。100年ほど前のホッチキスから、今やキングジム社の定番商品となった初代「テプラ」など、文具の進化の系譜を感じさせる玄関になっています。

(1)玄関。ズラリと並ぶ、年季の入った文具たちがお出迎え。

(1)玄関。ズラリと並ぶ、年季の入った文具たちがお出迎え。

高畑さん「私の仕事は文房具の提案が多いですが、『文具王』としてのブランディングも仕事だと思っています。自宅はショールームであり、倉庫でもある。そのため、自宅で打ち合わせをしたときに『ちょっとすごいぞ』と思わせることも大事。玄関は、そういった思いの象徴になっていますね」

その打ち合わせの場所にされているのが居間。入って早速、度肝を抜かれます!

(2)壁一面を覆い尽くす、文具入りのケースの山! この部屋に移ってからケースの数が倍になったとか。

(2)壁一面を覆い尽くす、文具入りのケースの山! この部屋に移ってからケースの数が倍になったとか。

高畑さん「打ち合わせをしていると『こういう文具はないの?』っていう話に必ずなります。自分でレビューしたすべての文具の情報は電子化して持ち歩いていますが、文具の場合はすぐに実物が出せるのが大事。このケースが後ろにあれば、どんな要望でも大体答えられます

理論武装ならぬ、「文具武装」!

そしてそのケースを見ていると特徴的な点が。「ボールペン 水性」「テープカッター」といった具合に、すべてのケース、そしてケース以外の収納にも、シールで中身の名前が付けられているんです。

高畑さん「元々、片付けが苦手なほうで…。片付けが苦手な人って、どこに何を仕舞ったか、これはどこに仕舞うものかがわからなくなってしまうことが原因なんです。だから、このシールは『住所』みたいなもの。私は文具も日用品も、使うものと使わないものを優先順位を付けて並べてあります。でも、片付ける一番のコツは、親しくないお客様を招くことでしょうね(笑)。今回のように取材が来るってわかれば、どうしたって片付けるようになります」

これだけの数の文具を、キッチリ整理している高畑さんが、まさか片付け下手とは思えませんが…。自分の苦手なことも文具を使って解決していく姿勢は流石ですね!

■生活を便利にする発想は、新しい文具のアイデアと同じ

次の部屋に移ってみましょう。

(3)イスの周りに必要なものがすべて揃った「書斎風」の場所。この場所の正体は…

(3)イスの周りに必要なものがすべて揃った「書斎風」の場所。この場所の正体は…

高畑さん「メインのPCはMacBookProを使ってます。なぜかスキャナーが6台もありますが…。仕事柄、全国の文具売り場で実演をすることが多いので、出張の道具はすべてトランクに入れていつでも出せる場所にあります(席左)。席から見て右手側の壁にあるのは、各デジタル機器や電池の充電器。左手側にはキャリーバッグを収納しています」

これぞ、プロフェッショナルの書斎!という感じですが、実はここ…ダイニングキッチンなんです。デスク左端の白いパーテーションの向こうには、キッチンの流し場があります。

しかも、このデスクを構築している黒い台は、なんと元々「2段ベッド」だったもの。

高畑さん「とにかく物が多いので、2段ベッドの上を書類置き場にすると便利なんです。これは前の家からも持ってきた、狭い賃貸でデスクを広く使うポイントですね」

(4)学生時代から続けてきた、文具のレビューが高畑さんの本業のひとつ。

(4)学生時代から続けてきた、文具のレビューが高畑さんの本業のひとつ。

自腹で文具を購入し、写真に撮ったりデッサンしたりして、使用感を文章にまとめていく。これが学生時代から続けている高畑さんのライフワーク。現在は和室を撮影用の自宅スタジオに変身させ、穴が空くまで新作文具を撮影します。でも、ひとつ悩みがあるとか…。

高畑さん「文房具の撮影って、ペン先とかをすごいマクロで撮影しなければならないんです。でも和室だと、三脚を置いて撮影しても、体重移動で畳がへこんで、どうしてもブレてしまう。もしこの部屋から引っ越すとしたら、撮影用の部屋の床材にはこだわりたいですね(笑)

文具の話だけでなく、家の収納のこだわりを話すときも、目を輝かせながら話す高畑さん

文具の話だけでなく、家の収納のこだわりを話すときも、目を輝かせながら話す高畑さん。

高畑さんは、友人のきだてたくさん、他故壁氏さんと3人で「ブングジャム」というユニットを組んで活動しており、その3人の共著で『筆箱採集帳』という本を発行しています。有名企業の社長、アイドル、漫画家、医者といったさまざまな職業の人から、中学生、小学生まで、多くの筆箱をのぞいてみるという本。文具選びや管理に、仕事それぞれの特長が見えてきます。

高畑さん「『なんでこれを使うのか、どういう意図で入れているのか』って、筆箱を見ているとその人の性格が伝わってくるんですよね。これは部屋も一緒。なんの仕事でも、一流の人の部屋はぜひ見てみたいですよね。何かの仕事で突き抜けている人の部屋は、必ず何かがおかしいはずです」

もちろん、それは高畑さんも同じこと。仕事に特化しているだけでなく、楽しみながら部屋を改造していることがわかります。

高畑さん「私はありがたいことに、趣味と実用が両立しているから。ずっと文具のことを考えていても辛くない。だからプライベートを分ける必要もないわけです。それが幸せかどうかはわかりませんけど(笑)」

誰かの「不便」を解決するため、日々新しい文具が次々生まれるように、文具王の生活に対する「解決提案」も、終わりはなさそうです。

高畑さん「僕は職業柄か不便なところを覚えておくのが得意なんです。だから、『こんな文具があったらいいな』と同じ感覚で、『こうなっていればもっと生活が便利なのに』っていうアイデアも浮かんできます。文具王なんで、「とにかく文房具に詳しい人」って思われることが多いですが、家の中を便利にする方法もたくさん考えたり、試したりしてます。もし機会があれば、いつかは『理想の家』をプロデュースしてみたいですね!」

文具王の理想の宮殿。いつか形になることを楽しみにしています!

  • 高畑正幸
    1974年生まれ、香川県丸亀市出身。「TVチャンピオン 全国文房具通選手権」三連覇。文具メーカーのサンスター文具社で商品企画、マーケティングなどに携わり、2012年から同社とプロ契約を結ぶ。文房具のトークユニット「ブング・ジャム」を結成し、全国精力的に文具イベントを開催。著書に『そこまでやるか!文具王 高畑正幸の最強アイテム完全批評』(日経BP社)、『究極の文房具ハック』(河出書房新社)など。
    http://bungu-o.com/

※記事中の情報は取材当時のものです。

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