(OVO オーヴォより)

動物、とくに猫好きな人ならもう知っているかもしれません。今、「保護猫カフェ」と呼ばれるお店が少しずつ増えています。たいていは以前からある猫カフェと同じようなスタイルになっています。お客さんは飲食代を支払ってお茶を飲みながら、店内にいる猫を眺めたり触ったり一緒に遊んだりできます。お店によっては1時間あたりいくら、といった入場料金制の場合もあります。お茶をする、というよりは猫と遊ぶことが目的で利用している方が多いでしょうか。そして保護猫カフェは、そこにいる猫が保護猫、つまり保健所や動物保護団体が保護した猫のカフェです。簡単に言ってしまえばそれだけなのですが、保護猫カフェの背景には、動物の保護に取り組んでいるみなさんの、いのちを助けたいという思いがあります。
我が国の行政による動物の処分数は年々減ってきていますが、それでも年間約12万8千頭。そしてそのうちおよそ8割にあたる10万頭が猫です。この数を減らしてあげたくても、どこの動物保護団体もたくさんの猫を保護していて、収容能力には限界があります。そんななか、少しでも猫を保護して少しでも多くあたらしい飼い主が見つかるような仕組みとして、さらに自分たちで運営資金をまかない、持続的に活動が行えるようにと考えられたのが保護猫カフェです。
これまでの猫カフェといえば、どちらかというと一部の猫愛好家が集っている印象が強く、多くの人にとっては入るのがためらわれる雰囲気のことが多かったようです。しかし保護猫カフェは単に猫愛好家が集まるのではなく、もっと社会に開かれたさまざまな役割が期待されます。猫を飼いたいけれどもさまざまな事情で飼えない人や小さなお子さんが猫と触れ合うことができる、動物の処分という社会的な難問について考えるきっかけになる、さらに保護猫カフェによっては地域にいる野良猫の避妊・去勢を進めて過度な繁殖を防ぐ「TNR活動=野良猫を捕獲(Trap)して不妊手術(Neuter)を行い元の場所に戻す(Return)活動」をしているので、そういったことを多くの人が知り支援する窓口にもなっています。
捨てられたり飼い主が飼えなくなってしまった、そんな辛い思いをした保護猫を大事に飼育する。そしてそこに遊びに行く私たちは温かい気持ちと安心を伝えてあげる。猫を見に行くというよりは、猫の気持ちにそっと寄り添う。保護猫カフェとお客さんにはそんな気持ちのいい役割があります。
去年2月の営業開始以来、すでに100頭以上の猫に新しい飼い主を見つけている岐阜市のネコリパブリック(http://www.neco-republic.jp)など、地域の動物保護の要になっている保護猫カフェもあります。
動物の処分の問題はほかの多くの社会問題と同様、一朝一夕には解決できない問題です。しかし難しい問題だからと遠ざかるのではなく、気軽なアプローチで、少しずつ関心を深めていくことができればいいと思いますし、保護猫カフェはその中でも有効で楽しいアプローチの一つかもしれません。
そういえば写真に写っているふくしまプロジェクトの飼い猫2頭も保護猫です。私たちの事務所は、保護猫カフェならぬ保護猫オフィス、といったところでしょうか。
藤谷玉郎(ふじやたまお)
一般社団法人ふくしまプロジェクト理事
東北大学大学院卒業。福島県庁・秋田県庁を経て2014年4月より現職。東日本大震災後に被災地派遣で福島県庁に出向し動物保護行政に携わる。その当時の日々をブログ「福島日記」に記録。
web:http://fukushimaproject.org/
ブログ「福島日記」:http://fujkushimanikki.blogspot.jp/