暮らしのコト

憧れの「ホテル暮らし」その実情と実践アドバイス

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Fotolia_48056772_S「ホテル暮らし」といえば、きれいな部屋ときめ細やかなサービスで優雅な毎日を過ごす、リッチでセレブなライフスタイル。そんなイメージをもつ人は多いのではないでしょうか。一般人にはなかなか手が届かない、憧れの生活といえます。

今回は、そんな「ホテル暮らし」を実践している方にat home VOXがお話を伺いました。お相手は、かつてホテル専門誌「月刊ザ・ホテル」の編集長を務め、ホテルジャーナリストとしても30年以上のキャリアを持つホテルマスター、村上実さん。「ホテル暮らし」の魅力や実情から、ホテルそのものの楽しみ方までたっぷりと語っていただきました。

今でも年間に約200日はホテル滞在をしているという村上さん。

今でも年間に約200日はホテル滞在をしているという村上さん。

■「ホテルで暮らす」メリットとデメリット

村上さん「ホテルはレストランやランドリーサービスといった、生活に必要なものすべてが1カ所に集まった便利な場所。さらに、豪華なホテルなら、日常を忘れられる特別な雰囲気の中で生活できる点もいいところです。経済的に見ても、住宅の固定資産税やメンテナンスなどを考慮すると、場合によっては持ち家や賃貸より得ということもあるんですよ」

そう語る村上さんに、「ホテル暮らし」のメリットとデメリットをピックアップしてもらいました。

メリット
・衣食住のサービスが揃っていて、無駄がない
・光熱費やアメニティ代込みで、更新料などの雑費も不要
・生活臭がなく、非日常的な特別感を味わえる
デメリット
・機械的でカスタマイズができないので窮屈
・部屋によっては窓が小さく、空気がこもりがちに
・生活感のなさが逆に淋しく感じることもある

村上さん「私自身は、あまりこれらの点を不便とは感じたことはないですね。強いて言えば『便利さに慣れてしまうこと』がデメリットかもしれませんが(笑)」

やはりいたれり尽くせりのサービスは、ホテルならではの魅力です。ただ、「長く泊まっていると外食が多くなり、栄養が偏る」「部屋の清掃をしてもらえるのはいいが、プライバシーがなさそう」という心配をしてしまいますが、そこはどうなのでしょうか?

村上さん「食事に関しては、最近のホテルは部屋に小さなキッチンがあったり、フロントで簡単な調理器具を貸りられるところも。手料理が恋しい時は、私も活用していますよ」

食事の面での心配はなさそうですね。では、プライバシーについては?

村上さん「部屋に入ってほしくない時は、ドアに『Do not disturb(入らないでください)』の札をかけておけばいいんです。また、近ごろは環境保全の取り組みの一環として、リネン類の毎日の交換を希望しない人のために『エコカード』を導入するホテルも増えています」

泊まる側のニーズにとことん寄り添ってくれるので、我慢をすることは少なそうですね。そして、ロングステイやリピーターならではのメリットとは、ズバリ何でしょうか?

村上さん「スタッフと顔見知りになれることですね。自分の趣味嗜好を覚えてもらえば、より好みに合ったサービスが受けられるようにもなりますよ。そういった意味でも、転々といろんなホテルに泊まるより、まずは一つのホテルにお金をかけて、繰り返し利用してみるのがオススメです」

ここまでくれば、ロングステイの上級者といえるでしょう。このように「生活の場」としてのホテルですが、時代の流れに沿って変貌を遂げつつあると村上さんは言います。

村上さん「日本は少子高齢化が進んでいるので、特に年配の方に向けて、家具や家電付きのアパートメント寄りのホテルが増えそうです。災害を想定した耐震構造や、医療施設を併設したホテルの需要も高まるでしょう。また、ライフスタイルの多様化によって、生活のコアタイムも人それぞれになってきているので、24時間対応のサービスもメジャーになっていくかもしれませんね」

■上手なホテルの選び方

ちょっとホテル暮らしに興味が出てきましたか? それでは、もしもホテル暮らしをする時は、何を基準にしてホテルを選べばいいのでしょうか? せっかくロングステイするなら、少しでもいいホテルを選びたいですよね。

村上さん「ホテルを評価する基準は、ハードウェア(施設)・ソフトウェア(サービス内容)・ヒューマンウェア(接客)の3つ。中でも泊まる側の気分を左右するヒューマンウェア、すなわちスタッフの質というのは特に重要ですね」

村上さん自身、フランス滞在中に体調を崩した時、現地のホテルシェフが見よう見まねでお粥を作ってくれて、その心遣いに感激した経験があるそう。

村上さん「あとは個人の事情によって、金額や部屋の設備、立地など、好みに合わせて選ぶことです。ゆっくりしたい時は静かな場所にあるホテル、寂しがりやの人は繁華街にあるホテル、など、自分の状況に合ったホテルを見極めるのがポイントですよ」

例えば、放っておいてほしい気分の時には、セルフサービスのビジネスホテルが正解だそうです。さまざまなタイプのホテルがありますが、それをうまく選択・利用できるかどうかは自分次第、ということなんですね。

 Sign on a Bed

■自己投資としてのホテルステイ

ホテルは「人間力を磨く場所」でもあると、村上さんは言います。

村上さん「日常から切り離されたホテルで過ごす時間には、精神的なリセット効果があります。人生の節目、自分を見つめ直したい時になどに利用すると、心に余裕が生まれていいリフレッシュ期間になりますね」

村上さんは、今の自分にとって少しグレードが高いかな、と感じるホテルに奮発して泊まってみることを推奨しています。それは何故でしょうか?

村上さん「ホテルには『10万円の壁』があり、それを超えるとクオリティがぐっと上がると言われています。たまには背伸びをして、ちょっと贅沢なホテル選びをしてみましょう。いわゆる『自分へのご褒美』として豪華なホテルに泊まると、仕事のモチベーションアップにもつながりますよ」

もちろん、自分の経済事情に合ったペースで利用することが鉄則。一年に一度、半年に一度くらいから始めて、三ヶ月に一度、月に一度とその期間を縮めていけば、いつかは「ホテル暮らし」も夢ではなくなるかもしれませんね。

■妥協しない姿勢がホテルをより楽しむコツ

若いうちは高級ホテルに対して二の足を踏んでしまう人も多いかもしれません。どうすれば高級ホテルに慣れることができるでしょうか?

村上さん「ホテルはさまざまな立場の人が集う場所です。ロビーで『自分よりも3割増しでカッコいい』と思うお客さんを探して観察してみるといいですよ。周りの大人の真似をして、ホテルの環境に自分を慣らしていくことです」

ホテルに慣れるには、知識より経験。ベテランの背中を見て学んでいきましょう。

村上さん「また、ホテルの部屋に少しでも気に入らないところがあったら、遠慮せずにルームチェンジをお願いしましょう。1泊だけでも人生の大切な1ページですから、妥協はしないこと。ホテル側も、お客さんによりよいステイをしてもらいたいと思っていますから、快く受けてくれるはずですよ」

ホテル経験豊富な村上さんだからこその言葉だけあって、説得力があります。

村上さん「私も若い頃はバックパックの旅行が好きでしたし、フォーマルな料理を食べるのも面倒だと思っていたので、ホテルの良さというのはわからなかった。でも滞在を重ねていくうちに、魅力を感じられるようになったんです。ショートステイもロングステイも、同じホテルの生活です。若い世代の方も失敗を恐れず挑戦して、『ホテルって楽しい!』ということに気づいてほしいですね」

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