ちょうど1年前の2013年6月26日に、日本中が待望した「世界文化遺産登録」になった霊峰・富士。実は、その頂上に人が住んでいることをご存じですか? 「山小屋暮らしなんて、どんな山男?」と思ったら……。なんと女性なのです!
頂上からの絶景に魅入られて富士山暮らしをスタート
過去4年間、毎年夏の間に富士山頂上の山小屋「山口屋本店」で働いていた、プロカメラマンの植田めぐみさん。頂上からの絶景を撮影することに魅了され、富士山暮らしをはじめたとか。
植田「シーズン中はずっと頂上暮らしで、過去4年間で一度しか下山していません。山小屋では、朝は午前2時に起きて午後5時まで働きづめ。就寝も午後7時消灯で、プライベートの時間はほとんどなし。それでも、毎日素晴らしい景色を見られるのは最高ですよ! この魅力は住んでみるまでわかりませんでした」
富士山暮らしではお風呂は一週間に一回
そんな富士山の魅力に取り憑かれた植田さんでも、頂上暮らしは「大変」のひと言。特に女性にとって問題なのが、「水まわり」だそうです。
植田「生活用水はモーターで引き上げた火口でできる雪解け水か、雨水だけ。水は貴重なので、お風呂は一週間に一度だけで、1人30分。その間に頭や身体を洗って、洗濯までしないといけないので、日本一の絶景が楽しめるお風呂でも、『いい湯だな~』とはいきません(笑)」
植田さんいわく、富士山生活で最も欠かせない物は「身体拭き取りシートと、強い精神力!」だとか。
水以外の生活インフラはどうなっているのでしょうか?
植田「ガスは、ガスボンベをブルドーザーで荷揚げしてもらいます。電気は各山小屋が持っている大きな発電機から発電しています。インターネットも使うことができますよ」
インターネットが使えると聞くと、なんだがグッと住みやすく感じられます。また近年、世界文化遺産登録効果もあってか、山小屋生活をする人が増えているそうです。
植田「私の働く山口屋本店に15人。ほかの山小屋や神社を合わせると、今は頂上に100人近くが暮らしています。女の子や、外国人観光客向けに英語や中国語を話せるバイトさんが増えてきましたね。基本的には地元の人や経験者の紹介が多いですが、私のように求人を見て突然連絡した人もいます(笑)。実は一度断られたのですが、調理師免許を取得して翌年リベンジしました」
「頂上からの景色は一瞬一瞬が唯一無二のもの」
頂上暮らしの魅力、そして富士山の魅力とは?
植田「生活も仕事も、正直きついです。でも、頂上からの景色はあまりにも美しく、病み付きになって、もう普通の生活に戻れないくらい! 登山ではわからない、毎秒、毎分目まぐるしく変わる景色は、二度と同じものを見ることができない唯一無二のものです。いろんな顔を持っている富士山を、これからも撮影していきたいですね」
■取材協力
植田めぐみさん
ブログ:「富士山に住むカメラ女子」
※記事中の情報は取材当時のものです。