
みなさんは秋と聞いて何を連想しますか? 食欲の秋、芸術の秋、恋愛の秋……。本格的な秋の到来を前に、何を楽しもうか計画を立てている人は多いはず。そこでat home VOXでは、実際のところを知るべく、全国の男女500人にアンケートを実施しました。
Q.あなたにとっての「○○の秋」とは?
男性/年代別
女性/年代別
もっとも多かったのは「食欲」の秋!定番ですよね。でも男女・年代別に見てみると興味深いことに気づきます。20代男性が他と比べて、「読書」と答える割合が高かったのです。その数38.7%と、およそ3人に1人の割合。今どきの20代男性は読書欲が強いようです。
それでは、20代男性は今、どんな本を読んでいるのでしょうか? 書店のランキングデータを調べてみました。まずは社会系の本を見てみましょう。
【社会系作品9月の売上ベスト5(紀伊國屋書店「紀伊国屋パブライン」調べ/新宿本店・客層別ベストセラー・男性19〜29才・社会)】
順位 | 作品 | 著者/出版社 |
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1位 | 『新スーパーマーケット革命』 | 桜井多恵子/ダイヤモンド・フリードマン社 |
2位 | 『人生の悩みはお風呂で消える』 | 小山竜央/KADOKAWA |
3位 | 『あなたも人気講師になれる本』 | 大谷由里子/学研パブリッシング |
4位 | 『嫌われる勇気』 | 岸見一郎、古賀史健/ダイヤモンド社 |
5位 | 『教養としての経済学』 | 一橋大学/有斐閣 |
※9月17日時点のデータになります。
タイトルだけでもユニークな作品が並んでいます。自己啓発本を中心に、「自分をいかに高めるか」「自分の能力をどう有効に生かすか」という内容の作品に注目しているようです。
続いて、小説のランキングです。
【小説作品9月の売上ベスト5(紀伊國屋書店「紀伊国屋パブライン」調べ/新宿本店・客層別ベストセラー・男性19〜29才・小説)】
順位 | 作品 | 著者/出版社 |
---|---|---|
1位 | 『銀翼のイカロス』 | 池井戸潤/ダイヤモンド社 |
2位 | 『異世界居酒屋「のぶ」』 | 蝉川夏哉/宝島社 |
3位 | 『チャンミ-グヮ-』 | 今野敏/集英社 |
4位 | 『オ-バ-ロ-ド 7』 | 丸山くがね/KADOKAWA |
4位 | 『るろうに剣心 伝説の最期編』 | 和月伸宏 Sow/集英社 |
4位 | 『ハケンアニメ!』 | 辻村深月/マガジンハウス |
4位 | 『俺が魔族軍で出世して、魔王の娘の心を射止める話』 | 遠野空/TOブックス |
※9月17日時点のデータになります。
1位はあの「半沢直樹」シリーズの最新作、「銀翼のイカロス」。その他はファンタジーやライトノベルなど、少し軽めのものが人気のようです。表紙がイラストのものが多いのも、20代の特徴でしょうか。
■自分と趣向の合う人を探して、興味の幅を広げる
いざ本を読もうと思い立っても、世にある膨大な本の中から一冊を選び出すのは大変ですよね。そこで、東京・千駄木で書店「往来堂書店」を営む本選びの達人・笈入建志さんに、アドバイスをいただきました。
笈入さん「身の回りに本に詳しくて気の合う友達がいればいいですが、いない人は、ブログなどで書評をしている人の中から、自分と趣向の合う人を探してみてはどうでしょう。読んだことのない作家やジャンルに挑戦するときの『もうひと押し』『きっかけ』を見つけることが大事だと思いますよ」
せっかくなので笈入さんにも、ご自身の目線で、この秋お薦めの本を世代別と性別で紹介していただきました。
●20代男性向け
『今日の放課後、短歌部へ!』(千葉聡/角川学芸出版)
笈入さん「20代の人ならまだありありと思い出せるであろう、青春時代の記憶を甦らせてくれる作品。歌人にして高校の国語教師であるちばさと先生の奮闘を描く短歌つきのエッセイです。生徒からの『かっこいい大人でいてほしい』というメッセージが泣かせます」
●20代女性向け
『旅は俗悪がいい』(宮脇檀/中公文庫)
笈入さん「若いうちにしかできない旅って、こういうものだ! 建築家として1年の3分の1を旅して過ごした著者が、安ホテルの魅力から旅先でのトラブルの楽しみ方(!)までを指南するエネルギッシュなエッセイです。今すぐ旅に出かけたくなりますよ」
●30代男性向け
『小さな家、可愛い家』(ミミ・ザイガー・黒崎敏訳/二見書房)
笈入さん「世界の狭小住宅を紹介する作品。工作好きの少年に戻って、あるいは秘密基地に興奮した時代を思い出して、こんな家に住めたらと想像を働かせてみると、とても楽しい作品です。読んでつかの間忙しい日常を忘れるもよし、子どもがいる人は、彼らの気持ちを知るために読んでみるのもいいかもしれません」
●30代女性向け
『貴様いつまで女子でいるつもりだ問題』(ジェーン・スー/幻冬舎)
笈入さん「女性はいくつになっても、生涯一女子。自分の中の『女子』性を隠すのが辛い人、または『その年齢で女子とは図々しい』と文句のある男性に向けた、『女子とはなにか?』を考えさせてくれる本です」
●40代男性向け
『望みは何と訊かれたら』(小池真理子/新潮文庫)
笈入さん「過激な学生運動の時代に、殺意と愛情がせめぎ合う極限状態での人間の結びつきを描き切った、恋愛小説の傑作です」
●40代女性向け
『平凡』(角田光代/新潮社)
笈入さん「ふだん忙しく、自分に別の可能性があったかもしれないことなど忘れてしまっている人も、この本を読むと『きっとあのときあの道を選んでいたら』とつい想像してしまう…。そんな作品です」
●50代男性向け
『独居老人スタイル』(都築響一/筑摩書房)
笈入さん「老人がひとりで暮らすことは情けなくわびしいだけー。そんな定説に真っ向から反対する作品。ひとりは自由だ! ひとりは楽しい! ひとりが最高だ! と訴えかけてくるノンフィクションです」
●50代女性向け
『おみやげのデザイン』(ビー・エヌ・エヌ新社)
笈入さん「全国各地のキレイで可愛いお土産品のパッケージを集めた本。おみやげ目当てに旅に出るもよし、お取り寄せするもよし。暮らしを潤すきっかけにどうぞ」
秋は、心の滋養になる素敵な本との出会いの季節。自分を変える「きっかけ」になる作品を見つけてみてください。
■取材協力
笈入建志さん
東京・千駄木で書店「往来堂書店」を営む。独立系の小規模店ながら、独自の目線で仕入れる本のラインナップに根強いファンが多い。書店からの情報発信にも力を入れる。
http://www.ohraido.com/