(Jタウンネットより)
「がね」をご存じだろうか。鹿児島県および宮崎県の西側、いわゆる旧薩摩領に伝わる郷土料理である。地元では正月料理の定番となっており、子どもから大人まで幅広い層に愛好される一品なのだとか。

かきあげではなく、がね
どういう料理か説明すると、千切りにしたサツマイモなどの野菜を衣に包んで揚げた天ぷらに近いもの。一言でいえば、「サツマイモを使った野菜のかきあげ」である。筆者も食べた経験があるが、本当に見た目も味もまんまかきあげという印象を持った。
しかし、地元民に話を聞くと「かきあげとは、全然違うものですよ!」と譲らない。東京人の筆者には分からないその違いについて、薩摩人に直撃してみた。
そばやうどんに入れるのが…
詳しい調理法を調べてみても、材料はサツマイモを入れること以外とくに決まりはないという。よく使われるのはカボチャ、ニンジン、タマネギ、ニラなど。サツマイモだけで作られることもあれば、山菜やゴボウなどの季節の食材、イリコや鶏肉などバラエティ豊かな具材が加わることもあるそうだ。

がねの具材の1例
……やっぱり、かきあげとの違いがイマイチ分からない。上の説明は、そのままかきあげの調理法としても通用しそうだ。
やっぱり、地元の人間に聞くほかない。宮崎県都城市にある霧島酒造の社員に、詳しい話を聞いてみた。
「ああ〜、他県出身者にはなかなか分からないものですよね。まあ、地元の人間でも説明するのは難しいんですが(笑)。どちらかといえば、かきあげより身近なイメージが強いですね」
彼によれば、かきあげは「店で食べるもの」で、がねは「家庭料理」といった認識なのだとか。また、かきあげに比べて甘味が強いのもがねの特徴で、家庭によっては衣に砂糖を加えるところもあるらしい。

宮崎の農産物直売所には、がねがズラっと
また、宮崎でがねの移動販売を行う店主にも尋ねてみたが、「地元民にとって全然違うものだということは確かだけど、うまく説明はできない」との答えが返ってきた。どうやら、料理の内容よりも「思い入れ」の部分が一番の違いであるようだ。
ちなみに、同店主によれば「がねそば」や「がねうどん」なんてものは存在しないらしい。そうなると、一番スッキリする分け方は「そばやうどんに入れる=かきあげ、そのまま食べる=がね」というものなのかも。