街のコト

屋根裏に住む/パリ(フランス)

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(ライター:山口 由紀)

先日未明に、ドン、ドン、ドン、と、頭上からの物音で目が覚めた。わが家は5階建てアパートの屋根裏階にあるのだが、え? えーっ、トタン屋根の上を誰か歩いている!屋根にはアンテナがあり、時に職人さんが廊下の窓からよじ登ることがあるが、夜中にそれはあり得ないだろう。

パリの建物は密集しており、屋根伝いに隣の建物に行こうと思えば行けてしまうらしい。夫が独身時代、現在の夫婦の寝室で昼間に一人寝そべっていると、開けていた窓から何者かがぬうっと顔を出したことがあったという。ギョッとして問いただすと、「家を間違えた」と言い逃れをして屋根伝いに去っていったことがあったそうな。

後で知ったのだが、今回の夜中の足音も、1階の若者向けバーが閉店後、お客の青年がふざけ半分で最上階まで来て、廊下の窓からよじ登ったためらしい(職人さんもここから上る)。

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屋根裏部屋から見た景色。
パリでは、建物が密集しているため、屋根伝いに人が行き来することも…

屋根裏部屋といえば、その昔は使用人の部屋として使われていた。暗い廊下の隅に共有便所があり、かつては室内に水道もひかれていないところがよくあった。しかし、時とともに考え方が変わり、屋根裏全体を買いとって仕切りを取り払い、光が燦々と入る見晴らしのいいアパルトマンとして買い値の何倍もの値段で分譲する、なんていう話も聞いたことがある。

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屋根裏部屋の様子昔は。使用人の部屋として使われていた

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しかし屋根裏は、建物にエレベーターがあっても途中から階段で上らないとならないことが多い。水など買って持って上がるのはなかなか大変だ。近所のエレベーターなしの7階建て建物の屋根裏に一人暮らしのご老人が住んでいたが、この方は毎日自分で買い物に出かけ、足腰が鍛えられたためか、100歳過ぎまでお元気だった。

 

山口 由紀(やまぐち・ゆき)
フリーライター。編集プロダクション企画制作四谷事務所勤務を経て、1991年、フランス人と結婚し、渡仏。以来、パリの学生街カルチェラタンにある、築350年のアパートに住んでいる。

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