家のコト

World Life Style~わたしの国の住まい事情~

台北の隠れ家的な茶芸サロンを営むご夫婦。台湾茶の愛好家が集う 『趣きあふれる老アパート』

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海外の家や暮らしをレポートする「World Life Style」。第7回目は台湾・台北で茶芸サロンを営む楊傳岱夫妻のアパートをご紹介。市内中心部にありながらも公園に面したアパートはホッと心が安らぐ雰囲気に包まれている。台湾や中国のアンティーク家具をインテリアに用いた居心地の良い空間に、台湾茶の愛好家が日々集う。

懐かしさを感じる畳敷きの居間

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楊傳岱夫妻が暮らすのは「公寓」と呼ばれる築30年の老アパート。エレベーターはなく、ワンフロアには夫妻の部屋があるだけ。部屋の広さは約30坪。間取りはシンプルで、20坪ほどの居間のほか、茶葉を保管する倉庫、寝室、キッチン、バストイレ、サンルーム、そして屋上スペースがある。居間の約半分のスペースは畳敷き。日本統治時代の名残で、台湾では今でも畳敷きの部屋をしつらえている家庭が少なくない。しかし、湿度が高いので、畳の管理にはひと工夫が必要。楊さんによれば、畳は床に直接敷かず、木板を床の間に挟んでいるとのこと。

趣きのある古家具や古道具をインテリアに

world_07_022009年に引っ越してきた際、備え付けの家具はなにもない状態だったが、時間をかけてお気に入りのアンティーク家具を揃えていった。日本式のタンスもあれば、中国や韓国の数百年前の棚などもある。和と中華のテイストを組み合わせ、趣のある空間を生み出している。家具は骨董家具店で見つけたり、商店で不要になった家具を譲り受けることもあったとか。

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室内のレイアウトは畳とフローリングの双方の空間に一枚板のテーブルが置き、それ以外の家具はすべて壁際に置いている。こうすることで、部屋全体をすっきりとした印象に仕立てている。

貴重な茶器や茶葉が揃う、知る人ぞ知る茶芸サロン

world_07_04楊さんは茶芸サロンを営んでいるが、看板を掲げ、雑誌やウェブサイトなどで紹介しているわけでもない。純粋に台湾茶を愛する人たちが集い、口コミで評判が広まって、愛好家の輪が出来た。平日の夜や休日にはお茶好きの友人が集まり、畳に座りながら夜遅くまでお茶談義に華を咲かす。芸術家やクリエイターも多い、文化サロンとなっている。

world_07_05楊さんがお茶文化に興味を持ち始めたのは16歳の頃。当初はお茶よりも茶器に興味があった。台湾には「養壺(急須を育てる)」という習慣があり、艶が出るように急須を磨き上げるという。楊さんもこの「養壺」を趣味とし、急須をはじめ、茶器のコレクションは相当な数を誇る。台湾や中国のアンティークものが中心だが、中には日本の急須やお猪口も。台湾茶で用いる湯飲みは小さいため、日本のお猪口がちょうど手頃なサイズだそう。

world_07_06楊さんの茶芸サロンでは他ではなかなか味わえない珍しい茶葉を取り扱っている。ウーロン茶は緑茶に比べると発酵度が高いため、寝かせるほど味わいが深くなる。そのため、倉庫にはビンテージものの茶葉が入った甕がずらりと並ぶ。中には50年熟成させた稀少な茶葉もある。楊さんは茶葉も茶器も、そしてインテリアも時間をかけて生み出される味わいに強く惹かれているという。

緑と光があふれる公園に面した大きな窓

world_07_07夫妻のお気に入りは公園に面した大きな窓。足を伸ばしながら窓に目をやると、公園の緑が目に入る。極上のお茶を味わいながら最高のくつろぎを得られると、サロンを訪れる人たちにも好評だ。台湾は住宅の密度が高いため、ビルが近接して建てられる。また、夏場の日差しが強いため、窓は小さめに造られるのが一般的。
さらに、泥棒対策で窓に鉄格子をはめることも多く、これが美観を損ねている。楊さん宅は角部屋ということもあって三面に大きな窓を設けている。通気、採光、眺望ともに優れ、明るくて開放感に満ちた空間となっている。

南国の日差しが降り注ぐ屋上はフルーツの楽園

world_07_08楊さんの家は最上階で、屋上も所有している。台湾ではかつて、屋上に部屋を増設するケースが多く見られたが、現在はこうした増設は不法物件として禁止されている。
ブドウやパッションフルーツ、リンゴ、ナシ、パイナップル、リュウガン、レモンなど、さまざまな果樹を植え、季節ごとに収穫したフルーツを食べるのが楽しみの一つだという。

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計50坪ほどの屋上スペースに使わなくなった湯船を利用した池も。大都会の中にありながらも自然との共生を実現していると言えそうだ。

 

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■プロフィール■
楊傳岱(ニックネーム:小楊)50歳と夫人
夫人とともに自宅で茶芸サロンを営む。公的機関の購買部などで茶葉を販売していたこともあったが、十数年前からこだわりの茶芸サロンを開設。趣味は台湾茶のほか、音楽とドライブ。好きな音楽のジャンルは幅広く、最近はブルースがお気に入りとのこと。猫三匹と暮らす。
~住まいについて~
約99平米、屋上は約165平米、家賃2万5千台湾元

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■台湾の不動産事情■
人口密度が高い台北市内は集合住宅が大半を占める。一戸建て住宅はほとんど見られず、5階程度のアパートや高層マンションが中心。最近ではマンションの値段が急騰し、富裕層向けに「豪宅」と呼ばれる億ションが次々と建設されている。
賃貸物件の相場は、老アパートであれば1万5千~2万5千台湾元。基本的に2LDKや3LDKの間取りが多く、単身者はルームシェアするケースが多い。高級マンションは20~30坪の広さで4~6万台湾元。
台北の場合、住宅街やオフィス街という明確な区別はなく、どこも住宅と商店、オフィスが混在しているので、市内であれば生活は便利だ。最近はMRT(都市交通システム)の路線が伸びたため、中心部から少し離れたエリアに暮らす人々が増えている。
住宅を借りる際、不動産業者を通した場合は通常家賃1ヶ月分の仲介手数料を払う。また、日本の敷金に当たる保証金(「押金」と言う)として家賃1~3ヶ月分が必要。これは引き払う際に戻ってくるが、修繕費にあてられることもある。さらに、家主の権利が強いため、契約更新時に家賃の不当な値上げや、突然の退去を求められたりするケースもあるので注意が必要だ。

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