家のコト

World Life Style~わたしの国の住まい事情~

アムステルダムの中でも最も古い歴史を持つ一角に建てられた中世の佇まいを残す『メゾネットハウス』

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海外の家や暮らしをレポートする「World Life Style」。第3回目はオランダアムステルダムに住むアーティスト・美術教師のブレッヒェさんのアパートを紹介。妖艶な赤いライトで照らされた「飾り窓」が密集する、旧教会周辺の歓楽街。アムステルダムの中でも最も古い歴史を持つ一角に、17世紀の建物を改装したブレッヒェさんのアパートがある。

クラシカルな雰囲気に合わせて壁をリフォーム

world_03_01ブレッヒェさんの住まいはアーティスト専用のアパート。1階は寝室、2階がリビングとキッチンのメゾネットタイプで、中世の時代には王立の製紙所だったという由緒ある史跡建造物だそうだ。約1年前、引っ越していった友人に替わって入居した。
「手を加えなくても全く気にならない状態でしたが、壁だけは自分の好みで水色に塗り替えました。冷たい雰囲気にならないようにと、色の調合にはかなり気を使いました」。クラシカルな雰囲気に、さりげないフレッシュさを与えるカラーチョイスが絶妙だ。

フェルメールの絵画のような美しい光が差し込む窓

world_03_02ここは、メインの生活空間。窓の横に置かれたテーブルでコーヒーを飲みながら、窓から街の雑踏を眺めるのが毎朝の日課だとか。「このエリアは、飾り窓地域が近いこともあって、夜になると賑わいを増していくの。窓ガラスは防音ではないので、ちょっとうるさい時もあるわ」と顔をしかめる。
逆に、昼間は比較的静かだ。フェルメールの絵画のような美しい光が差し込む窓辺には、お気に入りのモロッコのランプがペンジュラムのように吊られている。

むやみにモノは購入しない。必要なものだけを揃えたキッチン

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ブレッヒェさんの趣味は読書と料理で、特に食事には気をつけているんだそう。キッチンは小さいながら、必要な用具は全て揃っており機能的。定期的に友人を夕食に招いたり、パーティーをするとか。そのせいか、一人暮らしにしては食器類もしっかり揃っている。

world_03_04食器棚におさめられた可愛らしい花柄のティカップセットはご両親からのプレゼント。「家が狭いので、むやみにモノを購入しないように気をつけています」。

world_03_05アートアカデミーで彫刻を学んだ彼女は、美術教師としての専門教育も受けている。「今教えているのは、職業学校の生徒たち。しっかりと授業の準備をして、厳しさを持って臨まなければ生徒たちになめられてしまう。同時に芸術の面白さをしっかりと伝えていくためには、やわらかなアプローチも必要。さじ加減がとても難しいけれど、やりがいがあります」と、仕事への熱意を語る。以前は就学前の小さな子供達にも絵を教えていたというが、「自分の制作のための時間がとれなくなってしまうので、仕事量を整理しました」。と、仕事もインテリアも“無理をせず必要なものだけあればいい”のが彼女のスタイル。

螺旋階段から続く狭いスペースも無駄なく有効利用

world_03_062階へとつづく螺旋階段がある吹き抜けには、金色の花をモチーフにした古典的な壁紙。「これはもともと貼ってあったもの。なんとなく古めかしいイメージの螺旋階段にぴったりの雰囲気で、気に入っているわ」。
部屋の入口は、コートやバッグなどがかけられる収納スペースに。狭いながらに有効利用されている様子だ。

天井の高さと窓の大きさのおかげで、すっきりとした印象の寝室

world_03_071階にある寝室は、ベッドの長辺がぎりぎり収まる細長いつくりだが、大きな窓から差し込む光と天井の高さのおかげか圧迫感はない。ベッドリネンにすっきりとした色を使うなど、空間を広くみせる工夫もみられる。
市街の喧噪をよそに、ゆったりとした時間が流れる彼女の家。一昔前の映画の舞台のように詩的な部屋で、彼女はゆっくりと次の制作のアイディアを練っているようだった。「まだよくわからないけれど、公共のスペースのための作品を作ってみたいわ」と展望を語ってくれた。
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■プロフィール■
ブレッヒェ・スホーンヘイム (31歳)
アーティスト、中学校の美術の先生
オランダユトレヒトで生まれ、アルメスフォルトという街で育った。アムステルダムで美術教員となる勉強をした後、アートアカデミーで彫刻を学ぶ。アムステルダム旧市街の中でも最も古いエリアに建つメゾネットアパートに住んで約1年。
~住まいについて~
面積:35平米。家賃:570ユーロ。

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■アムステルダムの不動産事情■人口が密集するアムステルダム市内では、一戸建て住宅をほとんど見かけない。中庭をぐるりと囲んだ集合住宅が中心で、比較的せまくて家賃が高い。相場は、35〜50平方メートルほどの一人暮らしの物件で、550〜850ユーロ。人気のエリアは、旧市街の南西部のヨルダン地区周辺や、中央駅の東部に広がる港湾地区だ。ブレッヒェさんが住む旧教会周辺は、昔ながらの商店街や中華街、アムステルダム中央駅にも近くて便利。
中世の頃は、間口の広さに対して課税されていたため、納税料を抑えるために間口を狭くし、奥に長い家が多い。建物内の階段も狭い螺旋タイプがほとんどで、大きな家具を運び入れるのが困難。そのため、今でも大きな荷物は、屋根の上から張り出しているフックに滑車とロープを取り付けて、窓から搬入出している。

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