街のコト

どうして日本人はカレーが好きなのか 普及の歴史と真のカレー県をプロに聞いた!

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先日のアンケート記事「週3回でもOKな「カレー好き県」はどこ?」では、6割近くの人が、週に1〜2回はカレーでもOK!ということと、茨城出身者は週3回でもイケる!そして辛口が好きということがわかりました。

なぜ我々日本人は、ここまでカレーが好きなのでしょうか? そして、カレー好きの県に共通する要素とは? カレーを中心に食のコンサルティングを行っている、カレー総合研究所所長/カレー大學の井上岳久さんにお話を聞きました。

■軍隊食を経て、カレーは一気に広まった!

井上さん「カレーがどのようにして日本に伝わったのかについては諸説ありますが、有力なのは『横浜起源説』です。戦前、横浜に駐留していた欧米の商人・役人・将官(などの外国人居留者)向けに、海外出身のシェフがカレーを出していました。それが、日本の軍隊食として採用されたんです

煮込みメインで手軽に作れ、栄養バランスも抜群のカレーは、軍隊で好まれたそう。そして、軍隊で覚えたカレーの味を男たちが家庭に持ち帰り、日常食として食べられるようになりました。

井上さん「今でこそいろんなカレーがありますが、当時は軍隊をきっかけに、カレーが一様に日本中に広がったわけです。こんな現象は、ほかの食べ物ではあまり見られません」

さらに、もう1つのブレークスルーが。戦後、軍隊食に採用されたのと同じ理由で、学校給食のメニューとして取り上げられるようになったのです。カレーはお皿ひとつで足りるから、後片付けの手間がグッと減ります。そんな取り扱いのしやすさから、給食員に好まれたといいます。

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井上さん「戦後から70年も経っていますから、現代人は子どもから大人まで、みんなカレーを食べて育ったということです。だから、カレーが国民食と呼ばれるまでになったんですね」

■カレー県のキーワードは「米どころ」「保守的」「女性の有職率」?

アンケート記事でも紹介した、総務省統計局による家計調査「家計調査(二人以上の世帯)品目別都道府県庁所在市及び政令指定都市ランキング/平成24年(2012年)~26年(2014年)平均」では、カレールウの年間支出額が高い市トップ10は以下のようになっています。

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このうち、鳥取は上位ランクの常連。そのほか、石川・新潟・青森・山形の東北・北陸4県も、順位の入れ替えこそあれ、ほぼ毎年のようにトップ10内にランクインしているのです。

これらの県に共通するものとして、

1.米どころであること
2.保守的な風土であること
3.女性の有職率が高いこと

が挙げられると井上さんは語ります。

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井上さん「東北・北陸の県は、だいたいの地域で米作りがさかんですよね。米をよく食べるから、たくさん食べられるようにとカレーが好まれるんです。あと、これも東北・北陸によく見られますが、保守的な土地柄である場合が多い。基本的に保守的な考えの人は、新しく入ってくる食べ物をすぐには受け入れません。しかし、カレーは戦前に半ば強制的に家庭に入ってきた料理です。そのため、新しい食べ物よりも昔からある馴染みの食べ物、カレーを好む傾向が強いのではないでしょうか」

女性の有職率とは、どのような関係が?

井上さん「働いていると、なかなか手の込んだ料理を作る時間がありませんよね? だから、手軽なカレーが忙しい女性に好まれるんです」

実際、鳥取と東北・北陸4県は、女性の有職率が高いという調査結果も出ています(総務省調べ)。

「今晩はカレーでいい?」と聞くと、なぜだかワクワクしてしまうものですよね。カレーは働くお母さんにとって、子どもを喜ばせる鉄板メニューなのかも。

ところで、なぜ鳥取は、他県を圧倒するほどカレー好きが多いのでしょうか?

井上さん「鳥取はご当地カレーがあるとか、わかりやすいアピールポイントがあるわけではありません。けれど、カレールウの年間支出額が示す通り、カレーの消費量に関して、県民が高いプライドを持っているんです。過去、年間支出額で他県に1位を奪われたときは、地域をあげて奪還キャンペーンをしていたほどです」

いくらカレーが好きでも、頻繁に食べていては飽きてしまいます。鳥取の人はそうならないように、家庭単位でさまざまな工夫をしているそう。はちみつやチョコレートを入れたりと、「隠し味」にこだわるのは当たり前。非常にレベルが高いのです。

井上さん「私も知ったときはびっくりしましたが、学校の給食でインドカレーが出るんです。理由を聞いてみると、『家のカレーと同じだと飽きてしまうから』。そんな県、他にはないですよ。鳥取の子どもたちはカレーの英才教育を受けているんです!

それは驚き! 鳥取県民がカレーにかける想いが、尋常ではないことがわかります。家庭や給食でこれだけこだわっているならば、お店のカレーもレベルが高そう。おいしいカレーを食べたいなら、鳥取を訪れるべきですね!

■取材協力
井上岳久
日本のカレー業界を牽引する第一人者。カレーの文化や歴史、栄養学、地域的特色ほか、カレーに関わることすべてに精通している。
http://www.currysoken.jp/

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