学校法人城西大学は、創立50周年を記念して、国際シンポジウム「TEXTURES of SOUND」(音のテクスチャ)を1月13日・14日に紀尾井町キャンパスで開催した。

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学校法人城西大学は、創立50周年を記念して、国際シンポジウム「TEXTURES of SOUND」(音のテクスチャ)を1月13日・14日に紀尾井町キャンパスで開催した。
城西大学(埼玉県坂戸市)で9日、2008年にノーベル物理学賞を受賞した小林誠先生の講演会「反物質−素粒子から宇宙まで−」が行われた。同大学創立50周年記念事業で、各界の権威に話をきく水田三喜男記念「グローバル・レクチャー」シリーズの第3回として開かれ、多くの市民や学生が詰めかけた。 講演では、素粒子物理学の流れをひも解きながら、ノーベル賞授賞対象となった小林・益川理論を解説。その理論が、宇宙が物質からできている理由、すなわち存在していてもおかしくない反物質が消えた(見つからない)理由を解き明かすうえで重要な役目を果たすことを説明した。 我々の身のまわりの物質を構成する原子は、陽子や中性子、電子などの粒子で構成されている。そしてそれらには、対となる反陽子、反中性子、陽電子といった反粒子(粒子と質量が同じで電荷が反対)が存在しうる。陽子や中性子を構成するクオークにも反クオークが存在しうる。だが、自然界には反粒子は存在せず、実験で作り出すことで確認できる。宇宙が誕生した直後には同数であったと考えられる粒子と反粒子は、高温高密度の世界で対消滅と対生成を繰り返しながら共存していたが、宇宙が膨張して冷えるにしたがって対消滅が増えてゆき、粒子が少しだけ多く残ったことから物質が構成され、我々の物質世界が存在している。では、なぜ反粒子が残って反物質の世界が出来ずに、粒子から成る物質世界になったのか。それを解き明かす手がかりとして「CP対称性」(自然法則が粒子と反粒子に対して本質的に同じ)に対する反証、すなわち「CP対称性の破れ」のメカニズムを構築しなければならない。それを理論的に説明するのに使われたのが、「クオークは6種類3世代以上あるはず」という予言が注目された小林・益川理論だった。これは粒子と反粒子には違いがあり得るということを証明するための理論で、後に6種類のクオークが実際に確認され、ノーベル賞につながった。現状では、実験室レベルの標準模型では成り立つメカニズムではあるものの、宇宙が物質優位である理由を完全に説明するまでには至っていないため、「未知のCPの破れのメカニズム」の発見などさらなる課題が残されていることも最後に語られた。 また、講演の後には城西大の小野元之理事との対談があり、小林先生は「理論を発表したのは20代だったが、自分は変革の時期にたまたま居合わせただけ。若いほうが変化に対して柔軟に対応できるという側面はあるかもしれない」「若い人はそれぞれ目の前のことを頑張ってほしい。多様性の中から結果が生まれる」「学術・学問はイノベーションの道具ではない」などと語った。 さらには学生たちとの質疑応答が行われ、難解な講演にもかかわらず、医学部・薬学部といった理数系の学生を中心に「反物質はエネルギーとして利用可能か」「4〜5個のクオークから成り立つ粒子はあるのか」「電荷がマイナスの原子核の周りをプラスの陽電子が飛んでいる世界はあり得るか」「粒子と反粒子が同数であり続けたら対消滅で何も残らなかったのか」など熱心な質問が相次いだ。 「物理学に苦手意識を持っている学生にアドバイスを」との問いかけには、小林先生は「物理は対象が目に見えるはっきりしたものではなく、背後にある法則を明らかにしようという学問。とっつきにくいと思うが、小学校・中学校の理科の段階から、実験ばかりでなく抽象的思考のトレーニングが必要かもしれない」と答えた。
今年、創立50周年を迎える学校法人城西大学(埼玉県坂戸市)の清光ホールで13日、エズラ・F・ボーゲル米ハーバード大名誉教授の講演会「東アジア:これからの50年」が行われた。同大50周年記念事業のひとつで、各界の権威に話をきく水田三喜男記念「グローバル・レクチャー」シリーズの第2回。『ジャパン・アズ・ナンバーワン』『現代中国の父―?小平』などの著作で知られるボーゲル氏の識見に学ぼうと約500人の学生や市民が集まった。講演に先立ち、ボーゲル教授の日本、中国を中心とする東アジア研究の多大な業績に対して、城西大学名誉博士号が授与された。 講演では、ボーゲル氏はまず日本、中国、アメリカのこれまでの50年を振り返り、歴史的なポイントを解説。日本については、「なぜ日本はダメになったのか、日本は今何番目かなどと聞いてくる人がいるが、高度経済成長はもう望めないにしても日本は『犯罪が少ない』『長生き』『義務教育の水準が高い』など良い面が多い。日本はオイルショックも2度目はスムーズに対処したし、バブルで苦しんだといっても日本はうまく乗り越えたと思う」とポジティブな見方を披露した。 これからの東アジアを展望するにあたっては、「経済成長の継続」「環境問題の悪化」「国際交流の拡大」をキーワードに挙げ、アジアの経済成長・近代化はまだまだ続くが、環境問題の悪化が懸念され、EUほど急速ではないにしてもアジア共同体も視野に入れた国際交流が拡大していくだろうと予測した。 各国の課題として、アメリカは「自国が圧倒的に強い国であるという見方を捨てる」必要があり、中国とも環境問題などで協力しなければならないと指摘。「日本はもちろん中国でさえ高速鉄道ができているのに、アメリカにはない。弁護士が多すぎるのかも」と会場の笑いを誘った。中国については、環境問題や官僚の腐敗などの国内問題に加えて外交政策の転換を期待、「アヘン戦争以来弱かった国が力を付けてきて『我々は強いぞ』という気持ちが生まれるのは自然なことだと思うが、全世界が中国の低姿勢を待っている」と表現した。 日本に対しては、最初にもう少し自然な英語を使ってほしいと要望して、会場をどっと沸かせた。英語がいい言語だとは思わないが、世界と交流するためには自然な英語を身に付ける必要があると説明。さらには、隣の国ともう少しガマンして付き合う必要があると指摘した。韓国とうまく付き合うには、慰安婦問題だけでなく、35年間の植民地時代や戦時中の労働者強制連行なども考え合わせて、「我々が悪かった」と言い続けてもいいのではないかと述べた。 講演後には質疑応答の時間が設けられ、会場の学生らからは少子高齢化にまつわる質問が多く出た。ボーゲル教授は「サービス産業の拡大、そして老人にもっと働いてもらってもいいのでは」と提案。若者に対しては「私の時代は一生従事する仕事のために大学で勉強したが、世の中や技術の変化が早い今は、より幅広く勉強して世の中が変わったら適切に対応していくことが必要」とすすめた。また、「外国と交流したり海外の組織に参加したりして新しい知識や情報を得ることが重要。そのためにはやはり英語が必要」と、あらためて英語の必要性を強調(ちなみに講演はすべて日本語)した。 『ジャパン・アズ・ナンバーワン』で日本から学ぶ点が多いことをアメリカ人に示したボーゲル氏に対して、「中国がこれだけ成長している今、日本が中国から学ぶ点があるとしたら?」という質問も出たが、それには「海外に熱心に学ぼうとする姿勢」や「新しいイノベーションをすぐに取り入れる速さ」と答えたボーゲル氏。海外からの留学生を多数、受け入れている城西大学にふさわしく、海外交流の重要性を強く印象づける講演会となった。