ヤッちゃんは、本当はヤスコっていいます。ふくしまプロジェクトに来たことがある人でも、ヤッちゃんに会ったことのある人は少ないかもしれません。 ヤッちゃんは普段はわたしたちの施設にいません。預かりボランティアをしてくれているお宅で、4頭の犬と一緒に生活しています。 ヤッちゃんは私たちが最初に保護した犬です。今から2年前、ふくしまプロジェクトが生まれた年の秋に、近所の方が相談をしに訪れました。動物をたくさん飼っていた人がいたのだけれど亡くなってしまい、取り残されてしまった犬が今もあたりをフラフラと歩いていて、ときどき餌をやっているけれども、可哀想なので保護してもらえないだろうか、という相談です。 できるならすぐに保護したいと思いました。しかし当時の私たちには、まだ保護シェルターはありません。保護しようにもその場所がありませんでした。もうすぐ寒くなります。放っておくとこの冬は越せないかもしれません。どうやらそんなに若くない犬のようです。そこで保健所の協力のもと、保健所に保護をしてもらい、それを私たちが引き受け、さらにその方が預かりボランティアをしてくれることになりました。 それ以来、ヤッちゃんは近所のお宅に住んでいます。時々私たちのところにやってきます。泊まっていくこともあります。ヤッちゃんは老犬です。歩くスピードはゆっくりです。最近、ずいぶん年をとったなと思います。ときおりふらついていますし、ご飯の食べ方もだいぶゆっくりになってきました。夜に事務室のとなりの部屋で休ませていると、あまりにも静かなので、ヤッちゃんがいることを忘れてしまいます。ときおり寝息が聞こえてきて、ヤッちゃんのことを思い出して様子を見に行ったりします。 譲渡会に行くとヤッちゃんは人気者です。いつもだれかが引き取ろうかと考えてくれます。でもなかなか新しい家族は見つかりません。見つかればいいなと思いますが、難しいかもしれません。 これまでどんなふうに育ってきたのか、そして何歳なのかもわからないヤッちゃん。私たちがこの地でいちばん最初に巡りあったこの犬は、実は私たちのことを見守ってくれているのかもしれません。 筆者:藤谷玉郎(ふじやたまお)一般社団法人ふくしまプロジェクト理事東北大学大学院卒業。福島県庁・秋田県庁を経て2014年4月より現職。東日本大震災後に被災地派遣で福島県庁に出向し動物保護行政に携わる。その当時の日々をブログ「福島日記」に記録。web:http://fukushimaproject.org/ブログ「福島日記」:http://fujkushimanikki.blogspot.jp/ 写真:ケニア・ドイ芸能人のグラビアなどを数多く手がけ、人物撮影を得意とするスチールカメラマンが、2011年猫カメラマンになることを宣言。ブログで猫写真を発表し続ける。ファースト写真集『ぽちゃ猫ワンダー』(河出書房新社)が2014年12月に発売され話題に。好評発売中。ケニア・ドイのネコブログ:http://ameblo.jp/nekokenya/Facebookページ:https://www.facebook.com/pochanekowonder
