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地域密着 愛されご当地パン

“半年限定”の魅惑のパン! 愛知県豊川市の「たけの子パン」

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地域で愛されているパンを探して、全国各地をゆく「地域密着 愛されご当地パン」。今回は、地元民に絶大な支持を受ける看板商品なのに、1年のうち半年間しか食べられないパンがあると聞いて、愛知県豊川市の「ヤマトパン」を訪ねました。

愛知県豊川市にあるヤマトパン

JR飯田線「豊川駅」から徒歩10分ほどのところにあるヤマトパン。日本三大稲荷神社の一社に挙げられ、観光地としても有名な豊川稲荷が近くにあります。

1951(昭和26)年創業のヤマトパンは、直営店「ファヴール」でのパンの製造や販売に加え、豊川市のクックマートや遠鉄ストア、また豊橋市の豊橋トーエーなどのスーパーマーケットで卸売りを行っています。焼き菓子のような「デセール」、昔ながらのメロンパン「レマン」など数ある人気商品がある中、一番人気なのが、今回お目当ての「たけの子パン」。それでは早速、拝見!

ヤマトパンのたけの子パン

これが「たけの子パン」。150円(税込)。香ばしいコルネ型のパンでした。

皮をむいた状態の“たけのこ”に似ているということから名付けられたという「たけの子パン」。たしかに、ころんとした円錐型で、デニッシュ生地が幾重にも重なったきつね色のビジュアルは、たけのこを彷彿させます。

たけの子パンのクリーム

パンからちらっと顔を出していたのは、みんな大好きなクリームでした。

パンの中心部には、ふわっとした純白色のクリームが入っています。こんがり香ばしいデニッシュとふわふわのクリーム。これはもう間違いない組み合わせです!

デニッシュからふわりとただようバターの良い香りに食欲をそそられ、パクッと一口頬張ってみました。やはり、パンのサクッとした食感クリームのふわっとした食感は、相性抜群です。

クリームは、甘さ控えめ。ケーキやパンケーキなどに使われる一般的なクリームと比べると、あっさりとしていて、飽きのこない味わいです。それでも、パンから香るバターの主張に負けることなく、ミルクのうまみはきちんと存在感を放っています。うれしいことに、このクリームはパンの奥までしっかり入っているので、心ゆくまで堪能することができました。

見た目はシンプルなのに、奥深い味わいを感じさせるクリーム。その正体が気になります!

■良いとこどりの「おいしいクリーム」

そこで、ヤマトパンで社長を務めている久世愛子さんと太司さんに秘密について聞いてみました。

ヤマトパンの久世さん親子

久世さん親子。息子の太司さんは、たけの子パンのクリーム作りに一役買ったそう。

太司さんホイップクリームとバタークリームを混ぜたものを使用しています。実は1965(昭和40)年の誕生当初は、ずっと生クリームを使用していました。しかし、生クリームは時間が経つと溶けやすく、空洞からたれやすいので、今から20年前に私が工場長になったときに改良することにしたんです。ホイップクリームはミルクの味わいを感じさせながらも、生クリームよりも飽きのこない甘さがあります。それにバタークリームを加えることで、粘度が高くなるんです。この2つを絶妙な高さで角が立つまで泡立てることで、軽くてふわふわなのに、こしのあるクリームが生まれます」

ヤマトパンのたけの子パンに使用されるクリーム

クリームの分量と泡立て方は、企業秘密。クリームの販売業者が「どうしたらこれができるの!」と驚くほどの出来栄えなんだそう。

そんな自慢のクリームが詰まったパンだからこそ、「お客さまには安心しておいしく食べていただきたい」と久世さん親子は口をそろえて言います。それが、“1年を通して販売できない理由”なんだとか。

愛子さん「暑い日は、せっかくお買い上げいただいても、ご自宅に持って帰るまでにクリームが溶けてしまうことに気づいたんです。そこで、10年ほど前から、気温が上昇する5月から10月前後まで販売を停止しています」

それ以前は通年で取り扱っていたため、たけの子パンを昔から知る人の中には、夏休みの帰省時に久しぶりにお店に来て、「たけの子パン、なくなっちゃったの?」と嘆く人もいたそう。また、「今年はもう出た?」とたけの子パンとの再会を待ちきれず、お店に確認しに来る地元客もいるんだとか。

そのため、“会いたいのに会えない”ということで、人々には「幻のたけの子パン」と呼ばれることもあるそう。また、「幻」と呼ばれる理由は他にもあります。

太司さん「昔は、豊川市の隣にある豊橋市や東三河市の個人商店や学校の購買部などでも販売を行っていました。しかし現在は、豊川市を中心に豊橋市にある一部店舗のみの取り扱いとなります。かつてはよく見かけていたのに今は探しても見つからないということで、『幻のパン』とおっしゃる方もいらっしゃいます」

販売される期間とエリアの制限が、地元の人々のたけの子パンへの想いをかき立てていたのですね。

2017年は、5月18日をもって販売を中止し、10月2日に再開しました。その旨をヤマトパンの公式ホームページやSNSでお知らせしたところ、たけの子パンの販売を今か今かと待ち望むファンから、「待ってました!」とコメントがあったそうです。最近では、県内のローカル番組でその存在を知り、名古屋から車で約1~2時間かけて来る人もいたんだとか。

太司さん「ただ、1日約650個ほど作られるたけの子パンのほとんどは、スーパーマーケットに卸売りされます。直営店のお取り扱いは1日約30個で、ランチタイムには売り切れることが多いため、当店にお越しいただく際は、事前に電話やSNSでご確認いただくことをおすすめしています」

■お客さまのための“はからいの心”

こうして楽しみに待っているお客さんのために少しでも何かできないかという思いから、2014(平成26)年には“新商品”が誕生しました。

愛子さん『チョコばんぶーShoots』です。たけの子パンと同じデニッシュ生地ですが、少し油分を多く織り込んでいるので、たけの子パンよりもちょっぴりしっとりめの仕上がり。生クリームの代わりに溶けにくいチョコレートを使用しているので、持ちが良いんです。たけの子パンを求めてせっかくお越しいただいたのに、ご購入いただけなかったお客さまに、ぜひ召し上がっていただきたいパンですね」

ヤマトパンのチョコばんぶーShoots

“ばんぶー Shoots”とは、英語で「たけのこ」の意。こちらは通年、購入可能。140円(税込)。

いてもたってもいられない思いで待ち続けるお客さんのために、留守番役のパンまで生まれていたのですね! ヤマトパンでは他にも、常日頃からお客さんを喜ばせたい思いで、“さらなるおいしさ”を求めて試作品作りに奮闘していると言います。

左:たけの子パンの試作品,右:従来のたけの子パン

左が試作品。従来のものよりも、香ばしい焼き色をしています。

太司さん「『どうしたら、もっとおいしくなるんだろう』と日々考え、思い立ったらすぐ形にしています。例えば、生地にバターを多めに加えてよりバターの香ばしさをアップさせたり、クリームを抹茶風味にしてみたりなどアレンジは様々ですね。試作品の写真もSNSで公開しているので、それを見たお客さまからは商品化を楽しみに待つ声をいただくこともありますよ」

ニューバージョンも待ち遠しい「たけの子パン」。これから半年間、思い残すことなく楽しみましょう!

  • 店舗情報 ●ヤマトパン株式会社
    住所:愛知県豊川市古宿町市道四三
    電話:0533-86-2147
    営業時間:10:00〜18:00(金・土・日・祝日休)
    HP:http://yamatopan.co.jp

※記事中の情報・価格は取材当時のものです。

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