暮らしのコト

地域密着 愛されご当地パン

関西人の胃袋をキャッチした“3つの味わい”! 大阪府大阪市の「サンミー」

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地域で愛されているパンを探して、全国各地をゆく「地域密着 愛されご当地パン」。今回は、“関西のソウルパン”と呼ばれる「サンミー」を求めて、大阪府大阪市に本社を構える「神戸屋」を訪ねました。

神戸屋本社の工場

神戸屋本社の敷地内にある工場。阪急京都線「下新庄」駅から徒歩10分のところにあります。

神戸屋は1918年創業のパン屋です。大阪府大阪市と神奈川県海老名市に本部を構え、それぞれ関西と関東の食の嗜好性に合わせたパンを製造し、各エリアにあるスーパーマーケットやコンビニエンスストアで卸売りをしています。また、神戸屋の本社付近にある売店では、パンのアウトレット商品を購入することができます。

神戸屋本社付近にあるアウトレット店

売店では、割引価格で購入可能。

神戸屋本社では関西でしか販売していないパンがいくつかあるそうですが、その中でも地元ではもっとも馴染みの深いパンが、「サンミー」。名前からはどのようなパンなのか見当がつかないですが…早速、拝見してみましょう!

パッケージありのサンミー

これが、関西人の心を鷲掴みにしている「サンミー」。118円(税抜)。

パッケージをよく見てみると、サンミーの名前の由来に関する説明書きを発見! そこには、「パンの中にクリームをサンドし、上にチョコとケーキ生地の3つの味(三味)が楽しめるデニッシュ」と記載されていました。なるほど、サンミーとは、チョコレートケーキ生地クリームの3つの味を楽しめるパンなのですね。

袋から取り出したサンミー

外見は、線描きされたチョコレートが特徴的です。

袋を開けてみると、やはりひときわ目立つのはチョコレート。シマ模様なのか、それとも大阪なのでトラ模様なのでしょうか。

半分にしたサンミー

中には、幾重にも重なる生地が。

パンを割ってみると、生地が何層にも織り込まれ、その空洞にはクリームが塗り込まれていることがわかりました。このパン生地の上に、ケーキ生地が被せられているようです。

早速、一口頬張ってみると、想像を裏切らないスイートな味わいが広がりました! パンを覆うケーキ生地の香ばしい甘み、それに線状にふりかけられたチョコレートの甘み、そしてミルク風味のクリームが持つコクのある甘みが絶妙にマッチしています!

さらにパン生地は、デニッシュ特有のサクサク感を想像していましたが、意外にも柔らかく、もっちりした食感。しっとりとした生地に3つの甘みがなじみ、ケンカすることなく一体感を生んでいます! 疲れて甘いものが恋しい時に、食べたくなるような菓子パンでした。

このように3つのおいしさを味わえることを意味しているサンミーですが、「サンミーの前身には、もっと深い意味が込められていました」と神戸屋本社で広報を担当している加智さんは語ります。

神戸屋本社で広報を担当している加智さん

サンミーを中心に神戸屋のパンの魅力を発信している加智さん。

加智さん「1970年の発売当初のサンミーは今のものとは材料が異なり、チョコレートオレンジジャムフォンダン(砂糖)で成り立っていました。まず、第二次世界大戦中に贅沢品であった砂糖は、1963年に輸入の自由化が始まったことで、安価な値段で手に入るようになったことから、“自由に対する喜び”を表しています。また、弊社の2代目社長・桐山利三郎が彼らにパンの配達をしたとき、彼らが持参していたマーマレードをパンに塗っておいしそうに食べていたことで、欧米の豊かな食生活を想像させるオレンジジャムに“強さに対する憧れ”も抱いたそうです。そして、チョコレートは、戦後に欧米の進駐軍が、日本の子どもたちにチョコレートを配っていたことから、“豊かさと平和の象徴”を意味しています」

このように当時日本人が抱いていた憧れや喜び、また時代を象徴したものをパンとして形にしようと、3つの味をうまく融合させるために生まれたのが「パン生地」なんだとか。

加智さん「利三郎はアメリカ視察で、日本ではまだ馴染みの薄いクロワッサンやタルトなどのパンやお菓子作りに使われる、サクサクとした生地『ペイストリー』に感銘を受けました。そして、これなら3つの甘さを引き立てることができると思ったそうです。関西ではお好み焼きやたこ焼きに代表される“粉もの”の文化が根強く、もっちりした食べ物が好まれることが多いです。そのため、生地と油脂を何層にも重ねる際、ほど良いもちもち食感を生み出しました」

販売当初は町のパン屋に卸売りをしていましたが、徐々にスーパーマーケットなどの大型店が普及し始めたことでサンミーの流通が広がり、人気もじわじわと広がっていったと言います。

加智さん「地元では、『甘いものが食べたいときに無性に食べたくなるパン』として愛されています。ある漫画の中でサンミーが関西限定のパンとして取り上げられた際に、『これって関西にしか売ってないの?』と関西人の読者をざわつかせたことがあるそうです(笑)」

■サンミーの進化系商品とは!?

このように40年以上親しまれているサンミーですが、神戸屋では食の嗜好性の変化に合わせて、手を加えることも大切だと考えているそうです。例えば、一見キリが悪そうな2014年の43年目からは、サンミーの姉妹商品を販売しています。

加智さん“43(ヨンミ)”ということで、4つのおいしさを楽しめる『ヨンミー』を販売しました。基本の作りはサンミーと変わりませんが、京都府産の宇治抹茶、和歌山県産の温州みかん、滋賀県産の草津メロンなど一味加えたものです。地元の人々が手に取りやすいように、サンミーと関西の名産品という親しみ深いものをコラボさせました」

さらに2017年からは地元の名産品以外にも、フランス・ロレーヌ産の岩塩を使用した「塩キャラメルヨンミー」を発売。流行にともなって変化する食の多様化に対応しようと、バリエーション豊かな新商品の開発に力を入れています。

塩キャラメルヨンミー

キャラメル風味のケーキ生地に、ほろ苦いキャラメルとまろやかなミルクキャラメルの2種類のクリームが入っています。130円(税抜)。

来年2018年には神戸屋は創業100周年を迎えるそうですが、サンミーの今後の目標について聞いてみました!

加智さん「サンミーも弊社と同様、半世紀、1世紀と末長くお客さまにご愛顧いただければと思います。そのためには、時代の流れで変わる食の嗜好性に合わせて、時には3つの味をリニューアルさせる時がくるかもしれません」

大阪の老舗メーカーが誇る「サンミー」。時代に合わせて、“三味”がどのように進化していくのか、これからも目が離せませんね。

  • 店舗情報 ● 神戸屋 本社
    住所:大阪府大阪市東淀川区豊新2-16-14
    電話:0120-470-184
    営業時間:9:00〜17:00(土日祝を除く)

※記事中の情報・価格は取材当時のものです。

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