家のコト

World Life Style~わたしの国の住まい事情~

チェコ・プラハ郊外、心落ち着く田舎別荘「ハルーパ」で アンティークに囲まれたスローライフを慈しむ3世代家族。

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海外の家や暮らしをレポートする「World Life Style」。第26回目はチェコで世代を超えて田舎暮らしを満喫するコトラ家をご紹介。「ハルーパ」と呼ばれる別荘は暖かい木材とアンティーク家具に囲まれた空間。そこには、手づくりやスローライフを満喫する三世代家族の絶えることのない笑顔があった。

年代物のアンティークや思い出の品がインテリアに

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コトラ家が暮らすのは、チェコで「ハルーパ」と呼ぶ田舎別荘。1989年まで社会主義だったチェコでは、一般的な娯楽の代わりに、週末、家族で過ごす田舎別荘「ハルーパ」を持つことが生活の基本であった。春は庭仕事、夏は野外グリル、秋はきのこ狩り、季節を通して自然界から学び、吸収できる生活だ。現代でもなお多くの家庭が、都市部の生活では味わえない別荘ライフを受け継いでいる。

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1968年に別荘を購入したミロスラフ・コトラさんは、春から秋の大半をこの別荘で暮らし、息子のマーティンさんたちは、週末のみプラハから通うスタイル。3世代がそれぞれ暮らしやすいよう、家族で力を合わせて改築し、2世代目のマーティン・コトラ&亜希子夫妻、3世代目の奈桜ちゃんと一緒に共有できる空間を作り出した。

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古い物を大切に使うチェコ人の生活。コトラ家もアンティークと古い思い出のある品を置くことをインテリアの基本にしている
居間のほぼ半分のスペースを占めているのが年代物のストーブ。チェコでは「カムナ」といって昔から重宝されてきた家具の一つだ。ストーブの機能だけでなく、ガスや電気がなかった時代には調理器具としても活躍していたそうで、コトラ家では今でもピザを焼いたりしている。

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ストーブの上には子供が寝れるほどの広いスペースがあり、寒い日に暖をとるには最高の場所となる。

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美しい装飾のアンティーク家具は1842年もの。購入した時は道具入れとして白いペンキが上塗りされ、大変雑に扱われていたとか。丹念にペンキを落とすと美しい装飾が現れたため、修復。今は、飾りタンスとしての存在感を放っている。

チェコ人は古い家を購入し、家族で改築するのが当たり前

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もともとこの別荘は1860年に建てられた古い農家だった。間取りは典型的な地方農家の形式。地上階は納屋があり動物の飼育をし、2階部分が生活空間となっていた。購入後3年ほどの時間を費やし、家族で改築工事をしたという。現在の3階部分はすべて家族による手作りの改築だ。チェコでは手作りで家を作ることは決して珍しくない

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100年以上たった家でも土台はしっかりしていて取り壊すのは勿体ない。そんな家を買い取って、自分たちの力で修復・改築し、居心地の良い生活空間にしている人は多くいる。業者に頼んでしまえば簡単なのに時間をかけて手作りすることを苦と思わず、楽しむ。これはチェコ人独自の文化観ではないだろうか。

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改築された3階部分にはおじいさんの寝室と仕事場、マーティンさんたちの寝室がある。家全体の雰囲気を壊さないよう、暖かみのある木材を用いた快適な空間を心がけた。

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田舎暮らしでしか味わえない贅沢と心地よさ

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コトラ家のキッチンには最新の調理器具や電気製品はなく、古い調理用の薪ストーブと簡素な流し台のみ。もちろん薪ストーブの火加減の調整は至難の業だが、「便利な器具に頼らない生活様式からは新鮮な発見が多くあるんです」と日本人妻の亜希子さんは言う。嫁いで16年、すっかりチェコの暮らしに溶け込む亜希子さんからは、別荘を大切に守っていく強い意志を感じる。黄色のアンティーク食器棚が部屋全体のアクセントとなり、暖かみが感じられる空間はとても居心地が良い。

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ワイン好きなコトラ家にはワインセラーまである。毎年、夏になると隣国のオーストリアまで出向いて好みのワインをセレクトし、別荘の一階に貯蔵する。
また、敷地面積が1000㎡を超えるので、春~夏になると庭での行事も増える。菜園で野菜を育てたり、薪を割ったり、野外グリルを楽しんだりと、都会の小さなアパート暮らしではできない贅沢だ。

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別荘で一年の大半を過ごすおじいさんのミロスラフ・コトラさんは83歳。数年前に妻を亡くしたが、今もここに住むには理由がある。小さな村での生活は決して便利とは言えない。しかし季節と共に移り替わる美しい自然、広大な庭の手入れ、村の人々との暖かい交流、週末に訪れる息子夫婦との団欒。「都会でウィンドウショッピングをするよりも、数十倍の生き甲斐がここにある」と言う。

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世代を超えて家族が集まる家、それがチェコの田舎別荘「ハルーパ」。二つの生活を維持するのは大変な労力と時間が費やされる。半面、現代社会において希薄になっている世代を超えた家族の交流や絆がそこにはある。

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■プロフィール■
おじいさんのミロスラフ・コトラ(83歳)は元弁護士、別荘で隠居生活を楽しんでいる。趣味はアンティークコレクション。マーティン・コトラ(52歳)はカレル大学教授、妻の亜希子・コトラ(40歳)は、在チェコ外資系企業勤務。二人とも自然派でアウトドアが大好き。ハイキングやサイクリング、海へのセイリングと趣味の相性も抜群だ。娘の奈桜ちゃん(6歳)は小学一年生。将来の夢は教師になること。
〜住まいについて〜
中古住宅を購入後セルフリノベーション
敷地面積 約1000㎡
建物 125㎡
費用1,000,000CZK(約223,500円・1989-1991年代の物価)

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■チェコの不動産事情■チェコの首都プラハは町の中心部が世界遺産のため、100年以上の物件が基本。集合住宅がほとんどで、新興マンションや一戸建て住宅は市内郊外と市外に集中している。プラハ中心部のアパートの地価は1㎡あたり87748.42CZK(3,926,041円)、中心部周辺は1㎡あたり51721.83CZK(2,314,142円)が平均。また、市内郊外には社会主義時代の産物である団地「パネラーク」が集合。通常物件に比べ家賃や購入額が安いので、多くの人々が住む。
プラハ市内の賃貸物件の相場はワンルームで月14517.68CZK(64,955円)、中心部周辺は月10367.88CZK(46,388円)。2LDKで月25282.35CZK(113,118円)、中心部周辺は月16610.53CZK(74,319円)。
通常、住宅を借りる際は不動産業者に家賃1ヶ月分の仲介手数料を払う。また、日本の敷金に当たる保証金として家賃1~2ヶ月分が必要。これは引き払う際に戻ってくるが、修繕費にあてられることもある。賃貸契約は無期限だが、3ヶ月間のお試し期間がある。3ヶ月以内に家主にとっての不都合が生じた場合は、契約を破棄し、強制退去を求めることもできる。

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