家のコト

World Life Style~わたしの国の住まい事情~

にぎやかなイスタンブール中心街から離れた緑と森の静かな環境に建つ一軒家。 ボスポラス海峡を眺める庭に暮らすファミリー

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海外の家や暮らしをリポートする「World Life Style」。第13回目はトルコ最大の都市イスタンブールから。ヨーロッパ大陸とアジア大陸の出会うボスポラス海峡を有すこの町では、海峡の見える家に住むのが市民の夢。人口の過密化や商業の活発化に伴って高層ビルが立ち並ぶイスタンブールでは、海沿いや山の手に残されたわずかな地区がその望みをかなえてくれる。今回ご紹介する家族は、ボスポラス海峡の北側、黒海の入口につながるサルエル地区に住むタタリ一家だ。

自然と一体になれる郊外の一軒家

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ボスポラス海峡に面した丘陵地帯に建っているこの家は、地上階と地下一階。地上階は人に貸し、地階にタタリ一家が住んでいる。玄関を入って左右に家族それぞれの部屋があり、廊下の奥にオープンキッチン、広いリビング・ダイニングと続く。リビングの前面はガラス張りになっていて、芝生の庭に直接出られるスタイルだ。斜面に建っているので、入口と庭では一階分の高低差があるのも特徴的。 広々としたリビング・ダイニングには、アンティークのローチェストが置かれ、ソファのあるリビング・スペースとテーブルのあるダイニング・スペースを仕切っている。

今年のリフォームで憩いのスペースがひとつ増えて

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リビングから庭に出ると、タイルが敷き詰められ、夏の戸外パーティーや家族のディナー用のテーブルが置かれている。庭にあるレンガ造りのバーベキュー設備は、夏のホームパーティーの主役だ。タイルの部分は、今年の夏リフォームしたばかりで、家の横手のスペースには、テーブルを置き、緑を見ながらお茶やおしゃべりを楽しむことが出来るようになり一家の憩いの場所がまたひとつ増えた。ぼんやりと緑を眺めているとリスが前を横切ることもしばしば。自然と一体化した一戸建ては、イスタンブールのような大都会では、希少価値。海が見えるこの一画は、知る人ぞ知る人気地区なのだworld_13_02_1

愛犬も家族の一員

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庭には、9才の愛犬チュルグン(トルコ語でクレイジーの意味)の小屋がある。小屋はあっても、彼は、長年次女のセリンに添い寝するのが習慣だとか。センターバスルームには、チュルグンのお休みクッションも。チュルグンは自分を人間だと思っているらしく、家の中を自由に闊歩し、今では立派なタタリ一家の一員となっている。

オープンキッチンで開放感のあるリビングダイニング

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家族や友人とおしゃべりしながら料理を作り、サーブすることのできるオープン・キッチンは、一家のお気に入り。コンパクトで機能的につくられ、トルコの特産品オリーブオイルをひねり出す蛇口のついたガラス製のオイル入れや、装飾も兼ねた素敵な食器棚など、見ていて楽しいお料理スペースとなっている。専業主婦である母親のネヴィンさんは料理上手で、毎日栄養のバランスを考えながら、季節の新鮮な食材をふんだんに使ったおいしい料理を家族に提供している。 夏なら前菜に、季節の完熟トマトを使いオリーブオイル煮。冬は収穫したトマトで作ったトマトペーストで煮物というようにトルコの家庭料理のほとんどがトマトをベースとしている。娘2人も料理好きの母親の血を引き継いで、週末には、交代制でいろいろな料理に挑戦している。

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日本では見られない蛇口の付いた、大きなオリーブオイルボトル。

木床にトルコ絨毯はお約束

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リビングやダイニングの木床に敷かれた絨毯は、どれもトルコ絨毯。緻密に織られた小花模様でウール100%製。トルコには、81の県があるが、ほとんどその全ての県で独特の手法やデザインを持った絨毯が織られている。近年、安価な機械織りや海外製品に押されてきてはいるものの、トルコの絨毯は、まだまだ国民の支持率が高く、廊下はまだしもリビングに敷かれるものは、トルコ製が圧倒的だ。トルコの住宅は、アパートやマンションであっても木床が使われており、セントラル・ヒーティングのなかった時代、木床の冷たさをなくし、またお部屋のアクセントともなる絨毯はお約束だった。現在でもその習慣は残っていて、絨毯の生産も使用もいまだ衰えていない。

専用バスルームのある寝室

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姉妹の寝室はそれぞれ独立していて、長女のエスラの部屋には、専用のバスルームも設置されている。白とピンクの2色を基調としたインテリアで、かわいいながらも落ち着きのある空間が演出されている。エスラは、「今夏、壁紙の張替をし、ベッドの位置を変えたので気分も一新したわ、もっと自分の部屋が好きになった」と話す。両親と姉妹それぞれと3部屋に分かれているため、一人一人の部屋のスペースは限られている。彼女は1着服を買うと1着手放すことがモットー。服を引き取ってくれる団体や個人の住所を常にチェックしているので、問題ないと言う。

廊下は家族の写真ギャラリー

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廊下に飾られた写真は全てタタリ一族のもの。セピア色になった写真は、長い廊下をギャラリーに変身させて、来訪者の目を楽しませてくれる。トルコでは、家族の写真を家のそこここに飾るのが一般的。特に結婚式の写真は、どの家庭にも必ずといっていいほど飾られている。それだけ家族の絆を大事にする国民性なのだが、実際は、自分たちが懐かしむというよりも、家族自慢の材料として使われることが多いようだ。初めてその家を訪れたお客様は、写真を見せられながら長々と家族自慢に付き合わされるのが恒例だ。みんなお互い様なので、タイミング良く相槌をうちながら気長に付き合っている。

アンティークのミシン台には、お酒のコレクション

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廊下に置かれたアンティークのミシン台は、おばあさんの使っていたミシンのもの。このミシン台に旅行好きのタタリ一家が、海外に行くたび買いそろえた珍しいお酒のコレクションが置かれている。

多機能バスルームであかすりも!

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バスルームは広く長い浴槽とトイレが一緒になった空間だ。バスルームひとつで、入浴、トイレ、洗濯、洗顔など全てを行う。トルコには、オスマン帝国時代からハマムという公衆浴場があり、あかすりの習慣があった。あかすりやマッサージ専門の要員が浴場にいて、希望者に施してくれるのだ。現在は、日本の銭湯と同様にかなり数が少なくはなってきているが、まだハマムは健在。あかすりミトンとオリーブで作られた石鹸のセットは、観光客にも人気の商品だ。シャワーだけで終わらせるのではなく、浴槽につかる習慣も古くからのものだが、最近は、忙しい現代の日常生活を反映し、浴槽につかる習慣を排除し、シャワーのみ取り付けられたバスルームも増加してきている。

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あかすりは、ハマムだけの習慣ではなく一般家庭でも行われており、あかすり用のミトンが販売されている。

地上から降りていくとそこは驚きの空間

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外からは地下一階のように見えるこの家の外玄関を開けると、右手に箱庭、真ん中に家に降りる階段がある。内玄関を開けるとそこは、海や森につながる驚きの空間、あたかも地上の楽園のようだった。 world_13_13

■プロフィール■
エスラ・タタリ(40歳)、現在、エネルギーに強い大企業ソヤック・ホールディング社長秘書。トルコ共和国イスタンブール市出身。幼少の頃、アメリカのニュージャージー州に移住した家族とともに3才までアメリカで過ごす。その後、トルコのイスタンブールで小学校・中学校・高校を卒業し、秘書スクールに通う。民間テレビ局で役員秘書をするかたわら、趣味でアマチュアバンドのボーカルを務め、トルコ語・英語のポップ・ミュージックを歌っていた。結婚式場を営む父親、母親、そして7才下の妹と4人暮らし。愛犬のチュルグン(9歳)も家族の一員。 写真は左からエスラ、母親、父親、妹のセリン。 ~住まいについて~
面積:約300平米(敷地面積)、150平米(居住面積)。築25年の持家。貸した場合の賃貸料:2000米ドル

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■イスタンブールの不動産事情■
人口約1410万人を抱える大都市イスタンブールでは、住宅形式は、高層マンションや集合住宅が多く一戸建ては、海沿いや山の手の限られた地区に存在する憧れの住居スタイルである。賃貸物件は、公共交通機関が使え、日当たりが良く買い物に便利など、好条件で割安の物件は、インターネットの賃貸ページで探し不動産屋に問い合わせても、すでに借り手がついていることが多々ある。 それに引き換え、売家物件は長期住宅ローンが一般的でなく、利率もかなり高かったので庶民の関心は薄かったが、ここ10年の間に、経済政策の一環として、各銀行が一斉に10年や20年満期の長期住宅ローンを打ち出し、住宅購入率がぐんと伸びた。 日本にある戸建ての借地権はトルコには存在せず土地権がある。マンションの場合、日本と同じ区分所有者としての権利が売買され、まだ工事の基礎の段階で発行される区分所有権と、工事が完全に終了し設計通り建ったことが証明されてから、発行される区分所有権がある。基礎の段階で発行されたものでも売買は可能だが、後々、設計と大幅に変わっている場合もあり、この権利は、正式なものとして通用せず住宅ローンも組めない。そのため、売却の際も価格が低くなってしまう。 家の購買者には、少々将来の不安はあっても、安く手に入れられる物件にするか、少々高くても安心して住める物件を選ぶかという選択肢がある。将来的には、土地の権利がない不動産売買は、ゼロになっていくのだろうが、その過渡期である現在、個々人はマンション(基礎段階の区分所有権付)マンション(完全な区分所有権付)、売家(土地権付)、売家(土地権なし)と選択することができる。

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