海外の家や暮らしをリポートする「World Life Style」。第12回目はアイスランドの首都レイキャビクの閑静な住宅街から。今回ご紹介するのはプロダクトデザイナーのラグンヘイズル(34)とグラフィックデザイナーのラッギ(35)ご夫婦。日本の「カワイイ」ものが大好きだと言う親日家のふたりは、愛犬のパグと一緒に一軒家のロフト(=屋根裏部屋)に暮らして2年になる。日照時間の短いアイスランドの冬の暮らしを訪ねた。
木のぬくもり溢れる山小屋風のお部屋

ラグンヘイズルさんの暮らす家は、もともと1943年に建てられた2階建てだったが、オーナーが1973年にロフトを増築して賃貸物件として貸し出した。アイスランドでは、一軒家でもワンフロア毎に違う家族が入居しているケースが多く、この家も現在3家族が住んでいる。
ラグンヘイズルさんの居住スペースはロフトの2LDK。リビング&ダイニングのスペースは約3分の1を占め、大きな窓から差し込む自然光が気持ち良い。リサイクルショップでみつけたダイニングセットや祖母から譲り受けたチェア、IKEAのソファやソファテーブルなど、木目調の部屋にしっくりとなじむナチュラルカラーの家具がバランスよく配置されている。カラフルな色味がかわいらしいクッションは、デンマーク人のプロダクトデザイナーである友人がIKEAとコラボレーションしたもの。
暗く長い冬に柔らかく暖かな光を添えてくれるキャンドルは、アイスランドの暮らしにはマスト。ダウンタウンのショップでは、アイスランド人デザイナーによるものから海外ブランドのものまで様々なタイプのキャンドルやキャンドルホルダーが販売されている。ラグンヘイズルさんの家を訪れた時も、ソファテーブルの上にキャンドルがさりげなく灯されていた。
住人のテイストで彩られる窓辺

多くの家で見られる大きな窓は、日照時間が短い冬のアイスランドにおいて、少しでも太陽の光を取り込むための術。また、カーテンをつけていない家やレースカーテンのみの家が多く、外から家の中が丸見えの場合も多々あるが、住民は気にとめない。窓辺にお気に入りの小物を飾って、道行く人々の目を楽しませてくれる。
活発な火山地帯に位置するアイスランド。地熱で温められた温水が通う白色のラジエーターが各部屋に備え付けられていて、クリーンなエネルギーで家の中を十分に温めてくれる。真冬でも、家の中では半袖、という人も珍しくない。
大切に集めた小物を選んですっきりと飾る

ラグンヘイズルさんは親日家でもあり、棚に並ぶアイテムには、アイスランドのあちこちで集めた鉱石やウクレレ、ポップなフィギュアなどのほか、南部鉄器の急須や茶器、招き猫、ダルマ、コケシなども混じっている。これらは、夫のラッギと一緒に訪れた日本から持ち帰ったものだ。また、ラグンヘイズルさんが12歳の時につけていた日記やファーストシューズなど、思い出深いアイテムも大事に飾られている。デザイン関連の本やラッギが集めているファンタジーノベルなどの書籍は平積みにしたり、種類ごとに横にずらりと並べたり、並べ方を一工夫することで見せ方にアクセントをつけている。
親日家が多いアイスランドでは、友人の家を訪れた時に、日本のアニメのフィギュアや宮崎駿作品のポスター、DVDなどを思いがけず目にする機会が多い。ダウンタウンにも、アニメファン御用達のショップがあり、幅広い年齢層のアイスランド人が店内で買い物を楽しんでいる。また、国内最大規模の大学、国立アイスランド大学では2003年から日本語学科コースが設置されており、数ある外国語学科の中でも1、2を争うほど人気だ。
家のあちらこちらにラグンヘイズルさんが集めた写真やイラスト、ラッギさんが手がけたポスターが飾られているが、飾る場所によって与える印象も全く異なってくるため、なかなか飾る場所を決められずにいる作品もたくさん残っているそう。それらを大事そうに取り出して見せてくれた。
タイルがかわいい!キッチンとバスルーム
キッチンは部屋に入ってすぐ右手にある。大人2人がゆったり立って作業できるほどのスペースで、深緑色に塗られた備え付けの棚と黄色い小花が描かれたタイルがかわいらしい。2人は動物性の食品を一切摂らないビーガン。 日々、豆類やナッツ類、果物、野菜をバランス良く摂取する必要があるため、たくさんの果物がキッチン脇の横長テーブルに並んでいた。アイスランドにおいて、ベジタリアンやビーガンといったコンセプトはまだまだ馴染みが薄いものの、最近ではベジタリアンレストランやビーガンオプションを選べるレストランも増えてきたため、以前ほど外食に困らなくなったそうだ。
70年代風のタイルに彩られたバスルーム。このフロアは屋根裏部屋のため多くの壁が傾斜しているが、バスルームはその様子がはっきりと見てとれる場所だ。タイルが張り詰められた傾斜した壁と木目調の窓辺で、なんだかログハウスにいるかのような気分に。ラグンヘイズルさんも、ちょっとした非日常感を味わえるバスルームがお気に入り。
日照時間が徐々に短くなり、冬の訪れを間近に感じるアイスランド。多くの人の気持ちが沈みがちになる時期ではあるが、ラグンヘイズルさんに今年の冬はどのように過ごす?と聞いてみると、「家で編み物をしたり、最近購入したギターを弾いたりして、ラッギと愛犬のパンダと穏やかに過ごすのが楽しみ」と笑顔を返してくれた。
■プロフィール■
ラグンヘイズル シグルザルドッティルさん(34歳)
プロダクトデザイナー。国立アイスランド芸術大学(LHI)を卒業後、アメリカの芸大で修士課程を修了。親日家の彼女は、日本のお菓子パッケージやキャラクターが大好き。デザインにも、「カワイイ」に通じる日本の女の子の心を掴むエッセンス散りばめられている。結び目からインスピレーションを得たクッション、ノットノット(NotKnot)は国内外でブレイク中!http://www.umemi.com
ラグナル フレイルさん(35歳)
グラフィックデザイナー。LHIでグラフィックデザインを学んだ後、教育学を学ぶ。シンプルでミニマリスティックでありながらもエッジが効いたデザインは、レイキャビクのどこかで必ず目にする機会がある。現在、ウェブやロゴ、ポスターのデザインをする傍ら、LHIでグラフィックデザインを教えている。http://www.ragnarfreyr.com
パンダ(9歳)
動物が大好きなラグンヘイズルとラッギのもとでのんびりと暮らすパグ(♀)。人と触れ合うのが大好き。
~住まいについて~
面積:70平米 賃貸物件:月額140,000ISK

■アイスランドの不動産事情■
家を借りるよりも購入する人のほうが多いが、賃貸物件は金銭的に余裕がなく家を購入できない学生や若い人たちに需要がある。
賃貸市場は規模が小さく競争率が高いため、立地条件が良く手頃な賃貸物件を探すことは困難である。高額の賃貸料を支払うために、友人同士でシェアするケースも多い。加えて、近年の観光ブームで昨年は100万人近くの観光客がアイスランドを訪れたが、観光客は1ヶ月の賃貸料をさらに短い滞在期間で支払うことから、ハイシーズンの夏になると住人を追い出して賃貸物件を宿泊施設へ流用するというオーナーが増え社会問題化している。賃貸料の例として、ダウンタウンの人気エリアで約90平米のアパートを借りる場合、月200,000ISK近くかかることが多い。探す手段としては、専門のウェブサイトや、知人の口コミなど。
購入する場合、レイキャビクのダウンタウン周辺エリアがもっとも人気。購入価格の例として、ダウンタウンエリアの約60平米のアパートを購入する場合、現在の相場で約3000万ISKだが、人気が下がる地下階は若干割安となる。