家のコト

World Life Style~わたしの国の住まい事情~

パリ11区、『テラスハウス』に住まうフランス婚カップル こだわりぬいた3階建ての空間に心地よく暮らす

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海外の家や暮らしをリポートする「World Life Style」。第8回目はフランスのパリに住むカップルのお宅を訪問。1930年代の大きな屋敷を4つに区切って、全面リフォームした長屋風一軒家=テラスハウス。ドアの取っ手や壁の色にもこだわりぬいた空間で、快適に暮らすお洒落なふたりをフォーカスした。

人気の建築事務所に依頼して作り上げた、テラスハウスの空間

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ヤン(40歳)とソニア(37歳)は付き合って5年目のカップル。4年前に、パックス(成年に達した2人の個人間で、安定した共同生活を営むために交わす契約。結婚と同じような権利を持つことができ、税金申告も共同でできるのが利点)を結び、現在の家を不動産屋より購入。パリのバスティーユ広場の東側のエリア、若いパリジャンに人気が高い11区に居を構えた。購入した時、建物は廃屋同然。床も窓も全部取り壊し、フランスとカンボジア、日本で活動する友人の建築事務所「Asma Architects」にリフォームを依頼。4年の歳月をかけて、今のモダンデザインの空間を作り上げた。1階のサロン(リビング)の横にはオープンキッチンが設けられ、大きなダイニングテーブルは、お気に入りのバスクのハンドメイドのブランド「Alki」で購入した。

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パリの住宅はアパルトマン(マンション)が大半で、一軒家はごくわずか。パリジャンにとってパリで一軒家を持つことは夢のようなことだ。アパルトマンでさえ、実際に購入している人たちは50パーセントにも満たず、賃貸で借りている人が多い。一軒家は、パリの11区や15区、20区などに稀に存在する。こうした物件とうまく巡り合うことができれば、ラッキーなことだ。ソニアたちは、幸いにも友人の不動産プロモーターからこの物件を紹介された。廃屋と言えども、パリの物件は非常に高く、ヤンとソニアは、それぞれの両親から購入資金を調達。さらに足りない部分は銀行で住宅ローンを組み、ふたりで折半して一軒家を購入した。地下から地上3階まである家は、広々として、まさに自分たちのお城のよう。中庭に面した明るく広々としたサロンは、ふたりのくつろぎの場であり、仕事の場でもある。パリで今人気の高いインテリアブランド「キャラバン」のソファやクッションを置き、壁にはソニアの父、画家のヤン・ヴォスJan Vossの作品を飾った。

元々ある美しい階段や床を生かしたエントランス

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フランス人は古いものや伝統的なものを大切に守る国民性がある。ソニアたちもご多分に漏れず、家の大半は取り壊しつつも、元々あったらせん階段や市松の床タイルは、その美しさを生かした空間作りを心がけた。また、優美なラジエーターは、わざわざ郊外のラジエーター・コレクションの専門店に行き、購入。エントランスのアクセントに。

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バスルームのドアの意匠にもこだわりを

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2階は自分たちのベッドルームとバスルームがある。バスルームのドアの留め具の意匠が素敵だったので、そうしたものは残して、ホワイトにペインティング。ドアノブもブルーの床タイルに合わせて、ブルーのモチーフが入ったものを買い求めた。モダンに仕上げても、どこか古き良きものを残すのがパリジェンヌ流だ。

ゲスト用の簡易洗面&シャワールームを設備

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3階はゲストルームやワークルームをセッティング中。建築家に頼んで作ってもらったコンパクトなシャワールームも、自分たちの好きなブルーでコーディネート。この色もさんざんこだわって決めたカラー。

廊下の壁のアクセントはテキスタイルで

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真っ白な壁には、ソニアの母が展覧会などで手掛けるテキスタイルからセレクト。
陰翳のある布をタピスリーのように飾った。こんなアイデアもヨーロッパ人ならではのセンス。全体の調和を考えながら、空間を埋めていく作業が楽しい。

大好きな食器コレクションに囲まれて

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ソニアはブロカント(古物市)や蚤の市で、50年代の食器やグラス、クロスをコレクションするのが趣味。多くのパリジャン、パリジェンヌがしているように、週末ヴァンヴなどの蚤の市に出かけ、自分好みのアンティークな家具や照明、食器などをせっせと収集し、自分のインテリアに取り入れている。ちょっとレトロな香りのするデザインが、モダンなキッチンにぴったり。古い食器を大切にするのは、フランス家庭の伝統だ。

毎日使うキッチンは入念に手を加える

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ちょっとレトロな香りのするデザインが、モダンなキッチンにぴったり。

キッチンも手をかけた空間。とくに食器などの収納スペースは、ウッドとホワイトボードですっきりと機能的。家族や友人たちとホームパーティーをすることも多いため、食器の数は多め。スープ皿やメイン皿、デザート皿などが大量にあるが、コンパクトに納められている。
トースターやポットなどもデザインを重視。フランス人特有の美意識を磨くことが、仕事にもつながっていくというアール・ド・ヴィーヴル(美しい暮らし)の感覚が生活に根付いていた

地下はシネマルームとジムルーム

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シネアスト(映画監督)のヤンは、仕事で作ったシネマのネオンを地下のフロアに飾って、友人たちを誘って彼が作った映画の試写会をしたり、オーディオを聴く部屋にしている。仕事と余暇を上手に過ごすスペースづくりがなされていた。

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■プロフィール■
ヤン・ル・ケレック(40歳)
ソニア・ヴォス(37歳)
ヤンはフランスのブルターニュ出身で、シネアスト(映画監督業)。
ソニアはパリ生まれで、仕事は写真のキュレーター。ドイツ人の著名画家な父と、日本人でテキスタイル業界で活躍している母をもつ。
ふたりは5年前に出会い、4年前に家を購入して同居。ふたりは仕事の便宜上、ベルリンにアパルトマンを借り、パリとベルリンを行ったり来たりしている。
~住まいについて~
面積:150平米 購入物件:1,200,000ユーロ

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■パリの不動産事情■
パリの住宅は、19世紀に建てられた石造りのアパルトマンや20世紀半ばのアパルトマンが主流。歴史のある建物は水漏れがあったり、外の壁が汚れたりとメンテナンスが多いのが難点だが、風情があるので人気は高い。最近では新建のアパルトマンも多く、エレベータなどの設備も充実し、快適に生活しやすい。若い人たちに人気があるのは、右岸のバスティーユ広場の北側や東側のエリア。小さなパッサージュや路地があり、街に風情がある。こうしたエリアの古い家を買い取り、時間をかけて自分たちのお気に入りの家にリフォームすることも多い。アパルトマンの相場は、30平米のひとり暮らしの物件で1,000ユーロ前後。物件の購入は、1平米6000~10.000ユーロが相場。カップルで購入する場合は、ふたりで折半して購入することが多い。資金は自分たちの貯金と親や銀行からの融資による。

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