家のコト

潜入! プロフェッショナルの部屋

活弁士・山崎バニラの暮らしと仕事が共存するおうち

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vanilla_01あらゆる分野で活躍している人の仕事場を覗こう!という連載企画「潜入! プロフェッショナルの部屋」。第六回は活弁士、山崎バニラさんのお宅にお邪魔しました。「ヘリウムボイス」と呼ばれる個性的な声と、金髪のボブヘアがトレードマークの山崎バニラさん。大正琴を弾き語る独特なスタイルの活弁士として知られるほか、声優やナレーターなど話芸を活かしたフィールドで活躍しています。まずは声に注目されがちなバニラさんですが、実はITメディアでコラムを執筆したり、活弁の舞台で使う曲や映像を自作したりと、かなりマルチな才能の持ち主。いったいどのようなおうちにお住まいなんでしょうか?

■大きな窓が印象的なすっきりとシンプルなお部屋

地元・大田区で旦那さんと二人暮らしをしているバニラさん宅の見取り図。数字は撮影場所を指しています。

地元・大田区で旦那さんと二人暮らしをしているバニラさん宅の見取り図。数字は撮影場所を指しています。

壁一面の窓から明るい日差しが注ぐリビングダイニング兼仕事場。白と木目を基調にした居心地のいい空間です。(撮影場所1)

壁一面の窓から明るい日差しが注ぐリビングダイニング兼仕事場。白と木目を基調にした居心地のいい空間です。(撮影場所1)

マルチな才能を持ち、自宅でお仕事をされているということから、仕事や趣味のものがずらりと揃ったカオスなお部屋を想像していましたが、意外にも(?)キレイに整理された空間でした。

バニラさん「活弁の新作台本を書く度に、資料用の本をいっぱい買ってくるので油断するとすぐにものが増えてしまいます。部屋がごちゃごちゃするのがいやなので、意識的にものを増やさないようにしています」

映画や歴史に関連する本が並んでいます。(撮影場所2)

映画や歴史に関連する本が並んでいます。(撮影場所2)

その言葉通り、仕事関連の本が並ぶ本棚もすっきりと整頓されていて、本当に必要なものを厳選して手元に置いているという印象です。よく見ると、分厚くて難しそうな本ばかりですが、何に使うのでしょう?

バニラさん「活弁というのは無声映画の話の筋を説明するだけじゃなくて、作品の時代背景なども解説するので、台本を書くときにはいろいろな資料を読んで調べものをします。舞台上でしゃべる仕事というイメージがあるかもしれませんが、落語家や講談師と違って、あくまで主役は映画。本質的には研究者とかライターに近い仕事かもしれませんね」

活弁士は基本オタク気質なのかもしれないです、と話すバニラさん。自身の活弁ライブで上映するための動画を作ろうとしたときも、ハイスペックPCを自作するところから始めたそう。このように話芸というフィールドを越えて、さまざまな分野で活躍できるのはきっと、物事を一つひとつ突き詰められる弁士としての素質に由来しているのでしょう。

バニラさん「PCを自作するときはスペックだけでなく、インテリアの一部としてケースやモニターなどビジュアルにもこだわっています」(撮影場所3)

バニラさん「PCを自作するときはスペックだけでなく、インテリアの一部としてケースやモニターなどビジュアルにもこだわっています」(撮影場所3)

■1日のための準備・練習期間が2ヶ月以上!?

バニラさんの活弁といえば、大正琴やピアノを弾き語る独特のスタイルが特徴。この弾き語りスタイルは、活弁士の中でもバニラさんオリジナルのものなんです。

バニラさん「実はこのアイデアって、台本の台詞を減らそうとして思いついたものなんです(笑)でも今では結局、台詞も多めになっているので、楽譜を起こさないといけないぶん大変になっちゃいましたが、お客さんが生で舞台を見たときに『すごいものを見ることができた!』と喜んでくれるのが嬉しいですね」

この独特のネタはどのようにして作られているのでしょうか?

楽譜と台詞が一体になったバニラさんオリジナルの台本。

楽譜と台詞が一体になったバニラさんオリジナルの台本。

活弁ライブ時の相棒、大正琴と太鼓とミニ銅鑼(撮影場所4)

活弁ライブ時の相棒、大正琴と太鼓とミニ銅鑼(撮影場所4)

バニラさん「新作ネタの作り方としては、まず楽譜に台詞を合わせた台本を自分で書きます。曲は自作するものもあれば、クラシック曲をアレンジして使うものも。次に、映画を流しながら練習し、全体のバランスを見て気になるところを修正していきます。長編ものになると、ピアノを1時間弾き続けることもあるので、準備と練習には時間をかけるようにしています。2ヶ月以上前から始めても、きっちり合わせられるようになるのは、だいたい舞台直前くらいですね」

大正琴の練習風景を見せてもらいました。生で聞く活弁はとてもエキサイティングで心揺さぶられます!

大正琴の練習風景を見せてもらいました。生で聞く活弁はとてもエキサイティングで心揺さぶられます!

作家、演者、演出家の三役を一人でこなしながら、2〜3ヶ月かけて1日の公演日に備える……。活弁士という仕事はとても大変そうです。

バニラさん「確かに、孤独で大変な面がある仕事です。でも、見た人が『無声映画の面白さが分かった』と言ってくれるのがモチベーションに繋がっています。なので、できるだけ多くの人に楽しんでもらえるよう、地域や客層に合わせて演目を変えています。例えば直近の舞台だと、会場が長野なので信州出身の力士の演目を入れました」

■働きながら暮らすということ

仕事場と生活空間が同じこの部屋で、どうやって息抜きをしているんですか? と尋ねてみると…。

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バニラさん「台所仕事をしながら録り溜めた映画を観ているときは、ホッと息抜きできる瞬間ですね。夜になると、テレビ画面が窓に反射してスクリーンみたいになるんですよ」

バニラさんは、どんな映画を観ているのでしょうか?

バニラさん「ジャンルは特に決めていませんが、最初の10分がおもしろくなかったら名作といわれる映画でも観ない、おもしろかったら評判が悪くても観てみるようにしています。そういう視点で映画を見ていると、冒頭で観客の心を掴むことの重要さに気付いて、活弁の台本を書くときにも冒頭に力をいれるようになりました。考えごとをしたり、台詞を覚えながら料理することも多いので、息抜きと言いつつ、仕事のことはずっとどこかで考えていますね

バニラさんのように、気持ちよく仕事と暮らしを両立するためのコツはあるのでしょうか?

バニラさん「台本作りで悩んだりすると、外の風景を眺めたりして気分転換しています。ほら、ここから空が見えるんです。自然光が入ってくると、やっぱり気分が落ち込みにくいですね。こうして違う風景を見たり、誰かと話したり、料理をしたり、時にはゴロンと横になってみたり。ちょっとした気分転換を上手に取り入れるのが暮らしと仕事を両立させるコツかもしれませんね」

バニラさんが指差した方向には青空が。「仕事の合間に空を見上げると明るい気持ちになれます」(撮影場所5)

バニラさんが指差した方向には青空が。「仕事の合間に空を見上げると明るい気持ちになれます」(撮影場所5)

生活と仕事がしなやかに寄り添うバニラさんのお部屋。働く女性なら誰もが憧れずにはいられない素敵な空間でした。

  • 山崎バニラ
    活弁士(活動写真弁士)。2001年、無声映画シアターレストラン「東京キネマ倶楽部」座付き弁士としてデビュー。“ヘリウムボイス”と呼ばれる独特の声と、大正琴とピアノを弾き語る独自の芸風を確立。アニメ『ドラえもん』のジャイ子役など声優としても多くの作品で活躍している。著書に『活弁士、山崎バニラ』(エイ出版)。
    http://vanillaquest.com/
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山崎バニラさんイベント情報

山崎バニラの活弁代絵巻〜愛しのナヨナヨ男子〜
2015年6月21日(日)
開場13:30/開演14:00
会場:レザンホール 中ホール(長野県塩尻市)
http://www.raisin.or.jp/new/20150621.html

※記事中の情報は取材当時のものです。

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