家のコト

潜入! プロフェッショナルの部屋

雑貨とご当地食品がヒラメキを与える 立体造形作家・森井ユカの仕事場

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あらゆる分野で活躍している人の仕事場を覗こう!という連載企画「潜入! プロフェッショナルの部屋」。

第5回目となる今回は、立体造形作家・森井ユカさんの仕事場を訪ねました。粘土を使ったキャラクターデザインなどで知られる森井さんのもう1つの顔が、雑貨コレクター。しかも、収集にとどまらず、自身が海外で出会ったお気に入りの雑貨をカタログ本にまとめて発表するなど、その熱の入れようはコレクターの域を超えています。彼女が雑貨に夢中になった理由とは?

個展用に作られたキャラクターたち。ポップでゆるいデザインが人気。

個展用に作られたキャラクターたち。ポップでゆるいデザインが人気。

海外雑貨をテーマにした著作の数々。

海外雑貨をテーマにした著作の数々。

森井さんの仕事場の見取り図。数字は撮影場所を示しています。

森井さんの仕事場の見取り図。数字は撮影場所を示しています。

■お気に入りは海外の日用雑貨。感性を「新陳代謝」させたい

森井さん収集癖があるんです。それに、実家にいた頃は子どもが私しかいなかったから、安心してものをため込んでおくことができた(笑)。ものがたまっていく一方だったんですよ」

そう過去を振り返る森井さん。デザインの仕事をするようになってからも、雑貨は彼女にヒラメキを与え続けます。彼女が夢中になったのは、海外の日用雑貨。この仕事場にも、数々のコレクションが集められています。

森井さん「美しいインテリアや高級な服、車みたいなものは、日本にいても当たり前のように目にできますよね。けれど、日用雑貨みたいなものは、国が違うとなかなかお目にかかれない。そういうものほど、その国で暮らす人の好みやトレンドが映り込んでいると思うんです

スケッチで描かれたパッケージが素敵という、イギリスのスーパー「Waitrose」の雑貨類。

スケッチで描かれたパッケージが素敵という、イギリスのスーパー「Waitrose」の雑貨類。

雑貨が詰め込まれたボックス。ここに入りきらないものは、より大きな収納ボックスへ。(撮影場所1)。

雑貨が詰め込まれたボックス。ここに入りきらないものは、より大きな収納ボックスへ。(撮影場所1)。

年に5〜6回は海外へ出かけるといい、仕事・プライベートを問わず、雑貨がある場所はのぞかずにはいられないそうです。

森井さんスーパーはもちろんですけど、ドラッグストアやミュージアムショップみたいなところもオススメです。見なければいけないところが膨大にあるから、のんびりする旅行は私にはありえません(笑)。デザインに触れ続けていないと、自分が停滞してしまうような気がして。つねに感性を新陳代謝させているような感じですね」

そんな森井さんがもう1つ収集に力を入れているのが、日本のご当地食品です。2013年には、全国各地で出会ったご当地食品を紹介する著作『おいしいご当地スーパーマーケット 47都道府県で出会ったひとめボレ食品さん』を出版。なぜ海外好きの森井さんが、日本の、それも食品に目を向けるように?

■移り変わりが激しい日本のデザイン。記録しておかなきゃ!

森井さん「日本のスーパーもすごく好きなんです! 食品も日用雑貨の延長みたいなもので、ずっと前からコレクションしていたし、『この県ならこれ』という情報も自分なりにまとめていました。本にすることができたのは、ご当地ブームとか時代の機運もあったんですが、何よりも『記録しておかなきゃ!』という気持ちが強くて。こんなにデザインのトレンドの移り変わりが速いのは日本くらい。食品パッケージにしても、全国を取材して歩き回るうちに、どんどんデザインが変わったりなくなったりするんです。だから、誰かが残していかないと」

ご当地食品の数々。自身の展示に出展したものです。

ご当地食品の数々。自身の展示に出展したものです。

森井さんが各地のスーパーを巡るうえで、ルールとしていることは3つ。

1.その県で生まれたスーパーへ行き
2.その県の会社が製造・販売しているものの中から
3.親しみを感じる、愛らしい佇まいのものを選ぶ

森井さん「これ以外にも、車がなくても公共交通機関を使って行けるお店のものに絞るようにしました。本に興味を持ってくれた読者が、苦労せずに行けるように」

本に紹介されているのは、1200点近い食品と雑貨。「これ」というのは決めがたいものの、「距離も文化も本州とは離れた、沖縄のご当地食品はとても心を惹かれた」といいます。

森井さん特に食品は必ずしもプロがデザインしているものばかりではなくて、それがかえってご当地らしさを出しているんですよね。静岡なら緑色をよく使っていたりとか、都道府県ごとにカラーもありますし。そういうものをいっぱい知って、自分の仕事にも生かしていきたいんです。」

自慢のコレクションは展示に出すこともあるほか、デザインを勉強するためのいい素材になるため、学生たちに見せることも多いそうです。

展示のために制作した、実際のご当地食品を模したクッションたち。

展示のために制作した、実際のご当地食品を模したクッションたち。

今ハマっているという「ご当地ワンカップ」。非常にバリエーション豊かだそう。写真は佐賀県のハイフヨウ(田中酒造)。

今ハマっているという「ご当地ワンカップ」。非常にバリエーション豊かだそう。写真は佐賀県のハイフヨウ(田中酒造)。

■作業場は温かみのあるオレンジを基調に

森井さん「私のコレクションは、会議室のボックスに詰め込んでいます。展示に出す用があったりすると、そこから持ち出すんです。本を作っていたときは数百ものご当地食品があったから、会議室の一角がパッケージの山になっていましたね(笑)

一方、通路を隔てた作業場では、森井さんを含めて計3名が常駐。1人はエディトリアルデザイン、もう1人はWebデザインを行っています。「今は立体造形が半分、書き仕事が半分というところなので、私は机を2つ用意しています」と森井さん。

「よくBGMの代わりに映画をかけています」という作業場。(撮影場所2)

「よくBGMの代わりに映画をかけています」という作業場。(撮影場所2)

机には、造詣に使われるカラフルな粘土が。

机には、造詣に使われるカラフルな粘土が。

家庭用のオーブン。森井さんの作品は低温で焼くことが多いため、家庭用でないとかえってできないそう。

家庭用のオーブン。森井さんの作品は低温で焼くことが多いため、家庭用でないとかえってできないそう。

事務所があるのは東京・麻布十番。10年ほど前にやって来たといいます。

森井さん「麻布は夜型の生活に向いていますね。あんまり自慢できることじゃないですけど、私は夜型人間なので…。24時間営業のスーパーが事務所の目と鼻の先にあって、1日3回くらい行っていたこともありました(笑)」

2Kの賃貸ですが、大家さんと相談して、壁は温かみのあるオレンジを基調に。「比較的好きに改装させてもらっています。タイルを全面的に貼り替えたり」といいます。

事務所のエントランス。著作がズラリと並べられています。(撮影場所3)

事務所のエントランス。著作がズラリと並べられています。(撮影場所3)

非常に整った印象の森井さんの仕事場。ものは絞っていますが、森井さんに日々ヒラメキを与える雑貨やご当地食品たちは、新陳代謝を続けています。

森井さん「置いておくと貯まる一方ですからね。どんなに大事に保管しておいても、やっぱり古びてきちゃうんです。食品は賞味期限もありますし。だから、旅に出ては現地のものを集めて、入れ替える。そうして、感性を刺激し続けているんです

あ、作業場にも。こちらも展示用に制作した納豆のパネル。

あ、作業場にも。こちらも展示用に制作した納豆のパネル。

  • 森井ユカ
    立体造形作家、雑貨コレクター。世界各国を旅するうちに、スーパーマーケットや郵便局で見るごく普通の日用雑貨や食品のパッケージデザインに魅了され、いつしかそれらが本に。著書多数。近著は『描き方BOOK! 読みやすい文字と伝わるイラスト』(KADOKAWA/メディアファクトリー)
    http://www.yuka-design.com/

    ※記事中の情報は取材当時のものです。

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