(Jタウンネットより)
コンビニチェーン最大手のセブン−イレブンは、埼玉県深谷市の郷土料理「煮ぼうとう」を県内限定で2014年9月11日に発売した。
地元に伝わる「煮ぼうとう」は、幅広のうどん麺を生のまま野菜汁で煮込んだもの。類似したメニューは関東・甲信地方各地にあり「ほうとう」(山梨)や「おっきりこみ」(群馬)が有名だが、具材に微妙な違いが見られる。
3連休の最終日、たまたま埼玉にいた筆者は、セブン−イレブンのチルド麺コーナーに「煮ぼうとう」が並んでいるのを見つけた。価格は税込みで430円。

煮ぼうとうの幅広麺(写真はすべて編集部撮影)
電子レンジでチンするだけなのに本場に迫る味
深谷は埼玉有数の農業地帯で、2008年度の農業産出額は県内1位。小麦や野菜の栽培に適しており、中でも深谷ネギはご当地を代表する名産品だ。市のイメージキャラクター「ふっかちゃん」のデザインにも取り入れられている。
セブン−イレブンの煮ぼうとうは今回がはじめてではなく、過去にも発売されている。「ふっかちゃん」のイラストがラベルに使われていたこともあったが、今回は入っていない。
野菜がすべて埼玉産かどうか分からないけれども、具材の種類は豊富だ。大根、白菜、ニンジン、こんにゃく、じゃがいも、ごぼう、玉ねぎ、さといも、ぶなしめじ、しいたけ、ネギ、小松菜が用いられている。

調理方法は実に簡単。電子レンジで加熱してフィルムとフタを取るだけ。

筆者がフィルムを取るとき、カップの下に汁が若干こぼれた。何か敷いているのであれば注意した方がよさそう。

最後に添付の七味をかける。赤唐辛子、ちんぴ、黒ごま、山椒、あおさ、麻の実などが使われている。

深谷の郷土料理店で出されるメニューは、麺がとろとろした状態になっていることが多いようだが、セブンの商品は麺の形がしっかり残っている。

二十数年ぶりに郷土の味に再会!?
実は筆者、埼玉で生まれ育った。もっとも両親は他都県出身で、煮ぼうとうを家庭で食べる機会はなかった。ところが――具と汁を口に含んだ瞬間、なんとも懐かしい味がした。
「これっ、学校の給食で食べた味だ!」
筆者の通った公立小中学校は自校調理主義だった。麺は幅広ではなかった気がするけれども、具材と汁は学友と一緒に味わった給食そっくり。
まさかコンビニ飯で脳内タイムトリップを体験するとは……涙腺が少し緩んだのは年のせいだろうか。
ラベルに記載された製造工場の住所を見ると、筆者が育った場所の隣の市だった。

昆布だしを加えた汁は甘味もあって、具材にほどよく染み込んでいる。とろとろ感が出ているのはゼラチンを使っているからか。つるつるした麺が若干掴みづらいこともあり、ついつい具材と汁が先に進んでしまった。シャキシャキしたネギが美味。

1食あたりのカロリーは472キロ。800キロ前後といわれる牛丼などと比べるとかなりヘルシーで、メタボ気味の筆者にとってはちょうどいい量だった。
ところで、煮ぼうとうは深谷市出身の実業家にして「日本資本主義の父」と称される渋沢栄一も好んで食べたそう。チルドだけにディテールが異なるのはやむを得ないけれども、さすがはセブンの商品。うまくまとまっている。
埼玉の味を全国に伝えるため、渋沢栄一とふっかちゃんのイラスト入りで全国発売したらいいのに――地元出身の筆者は欲張ったことを思ってしまった。