街のコト

甲子園の近所には、なぜ「甲×園」という地名がやたらあるのか

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(Jタウンネットより)

ついに開幕した甲子園。

Jタウンネットでも総力挙げて甲子園を大特集――と行きたいところだが、そこは新聞や専門サイトに譲り、ここではスポットとしての「甲子園」にまつわる話題を紹介したい。

甲子園球場(たくちゃん2012さん撮影、Flickrより)

甲子園球場

甲風園、甲東園、甲陽園…全部球場なの?

さて、実際に甲子園の所在地・西宮市へ行ったことがある人は、一帯にやたら「甲×園」という地名が多いことに気付いたことだろう。

挙げてみると、

(1)甲子園
(2)甲風園
(3)甲東園
(4)甲陽園

と、甲子園も含めてなんと4か所もある。

甲子園=球場のイメージしかないと、「えっ、他にも球場があるの?」と思ってしまいそうだが、これは早とちり。これら「甲×園」はすべて高級住宅街の名称で、球場があるのは甲子園だけだ。

さらに「甲×園」以外でも、香櫨園、苦楽園、昭和園と、「××園」が西宮市には7か所存在する(通称、西宮七園)。地名としての甲子園も含め、いずれも高級住宅街だ。

いったいなぜ、西宮には「××園」が乱立しているのだろうか。

昔は遊園地だったところも

もともと、現在の「甲×園」がある地域は河川敷だったり山林だったりと、未開発の土地だった。しかし大正時代に入り、大阪〜神戸間の鉄道路線が整備される中で、さまざまな企業が遊園地やレジャー施設、別荘地などを開発し始めた。

たとえば「甲陽園」は、温泉や映画撮影スタジオなどが一体化したUSJばりの大型遊園地として誕生した。

「甲東園」は、地元の富豪のための別荘地兼果樹園。

そして阪神電鉄も1924年、整備中だった住宅街内の娯楽施設として「甲子園大運動場」を建設した。これがおなじみの「甲子園球場」だ。

その後、これらの遊園地やレジャー施設の多くは甲子園球場を除き廃れていったが、高級住宅街としては存続・発展した。こうして、「××園」という名前だけが、西宮には残ったわけだ。

ちなみに「甲風園」は、高級住宅地=××園というイメージができた後に、言い方は悪いが「便乗」する形で付けられた。遊園地などはない。

甲子園と甲陽園の「甲」は意味が違う

その中でも「甲×園」が多いのは、地元の甲山にちなんだもの。甲陽園は「甲山の南側(陽のあたるところ)」、甲東園は「甲山の東側」、甲風園も「甲山+高級な雰囲気のある『風』」といった理由で命名されている。

実は仲間外れなのが、一番有名な甲子園。球場が建設された年の干支が「甲子(きのえね)」だったことにちなんでいる。

甲陽園駅〜苦楽園口駅を走る阪神甲陽線の電車(junicornさん撮影、Flickrより)

阪急甲陽線

「甲×園」という名前の背景には、近代以来の街の歴史がある。

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